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仲間探し 一人芝居 戯曲

データ↑
あらすじ↓
趣味の話
本文↓

仲間探し

♪SNSっぽい音

「私の趣味はSNSで自殺を仄めかすことです。そして、その後ちゃんとアカウントを消すことです。毎回、新しいアカウントを作っては、こんな辛いことがあった、と伏線を張り、どうやって自殺するかを書き、そのアカウントを消します。どのSNSを使っているかって?それは秘密。まあ、新しいアカウントが作りやすいモノですね。ああ、フォロワーとか友達だとかは作りません。ひっそりと、こっそりと、人知れず消えていきます。それが私の趣味」

「この趣味は高校生の時に始めました。あ、別に私は死にたくなるような、そんな辛いことは経験したことはありません。平凡です。薄幸ですが、不幸ではありません。ただ、死への興味を安全に解消しているだけです」

「働きながら、その趣味に勤しんでいました。ふと、私のように自殺を仄めかす人は、アカウントは、いるのか、あるのか気になって調べてみました。たくさんありました。何年も死なずにいるアカウント、フォロワーや友達が、何十何百何千とあるアカウント。多種多様な死にそうな人達がそこにいました」

「興味がわきました。何人かに連絡を取りました。何人かから返事がありました。何人かとはやり取りが続きました。何人かと会いました。ちなみに、そのアカウントは趣味垢的な立ち位置なので、共通です。ほら、動物の写真を見るようとか、グッズの交換用とか、そんな感じ」

「喫茶店やカラオケで会うのですが、色々と話してくれます。別に私は慰めたりしません。大変だねー、とか、ひどいねー、とか、そうなんだー、とか。相槌と共感です。私がするのはそれだけ。たまたまだと思いますが、みんな少しスッキリした顔で店を出ていきます。私は、平凡な私は、自分が経験したことのない話が聞けて楽しかったりします」

「趣味が増えました」

「死にたくなりました」

「平凡にノウノウと生きているのが、なんかダサくて死にたくなりました」

「初めて衝動的に、死にたい、そう投稿しました。それ用のアカウントではなく、この趣味垢で」

♪SNSっぽい音

♪SNSっぽい音 たくさん

「つながっていた人達から、連絡がたくさんありました。内容は色々です。本当に、色々です」

「嬉しくなりました。本当に嬉しくなりました。もう少し生きたくなりたくなりました」

「今回は、仄めかしたあとに、アカウントは消さず、死にたい、その一文を消しました」

♪SNSっぽい音

END

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