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理路整然 一人芝居 戯曲

データ↑
あらすじ↓
説得する話
本文↓

理路整然

舞台上
机。椅子。資料。人形。

澪は自分の正面にある椅子に人形を置く。

「見ていてね」

澪は開いている窓を閉める
澪はノビをする

「陽が落ちるの、早くなってきたね」

澪は机に向かう

「はい。それでは、プレゼンテーションを始めます。時間がなく、パワーポイントのような互いに共有する画面はありません。一応、箇条書きの文面をPDFで送りましたので、そちらも参考に見ていただけると幸いです」

澪は資料をめくる

「さて。1ページ目に書かれています通り、今回のプレゼンの主題は、由美が澪と関係を絶たない方が良い理由、です。まずは定義をハッキリとさせましょう。由美は、今、このプレゼンを聞いているあなたです。澪は、今、プレゼンをしている私のことです。関係とは、いわゆる、恋人関係です。由美と私がここ3年の間に結んでいた関係のことです」

澪は正面を向く

「この、プレゼンを通して、由美が先週の日曜日に告げた我々の関係の解消について、考え直して欲しく思います。ハッキリさせます、私は別れたくありません」

澪は資料をめくる

「しかし、ここで私の気持ちだけ推しても由美のためになりません。さらに、以前、由美が私の女々しいところが嫌になることがある、と話していたのを私は覚えています。なので」

澪は資料をめくる

「このプレゼンで理解が得られなければ、由美のことを諦めます」

澪は資料をめくる

「関係を解消すべきでない理由を3点申し上げます。一つ目は、結婚観が一致しているという点です。由美と私は同い年です。そして、由美は30歳くらいで結婚したいと思っています。私も30歳くらいで結婚したいと思っています。つまり、結婚したい時期が一致しているのです。また、子供についての考えも同じです。結婚後、生活を数年してみて、そこから考える。要するに、二人での生活を経て答えを出す、という姿勢が一致しています。以上から、由美と私は、結婚観と、その後の生活もマインドが一致しているのです。今後、このような相手は簡単に見つかるでしょうか?これが一つ目の別れるべきではない理由の一つ目です」

澪は資料をめくる

「二つ目は、体の相性です。はい。正直な、赤裸々な内容です。しかし、重要です。もしも、我々が性欲と無縁な性質の二人組であれば考える必要のない要素です。しかし、由美と3年の間、お付き合いしてきて、由美には性欲はあると感じます。また、私にも性欲はあります。そして、実際に行為に至り、射精できました。将来、子供を持つ可能性も加味すると、話題には出しづらい分野ですが、考慮しないわけにはいきません。由美が内容に満足してない可能性も考えました。しかし、そこは私が考えても仕方がないので、無視します。少なくとも、私は毎回、満足していますし、嫌なところもありません。以上が、分かれない方が良い理由の二つ目です」

澪は資料をめくる

「三つ目。最後の理由は、もったいないからです。拓哉、あなたが言うには明確な理由は存在しない、しかし別れたい。そうなんですよね?そうなんだよね?理由を聞くと、なんとなくとか、違う気がするとか。去年、大学を卒業して、由美は就職、私は大学院へ進学。環境が変わって由美は、私の考えが及ばない悩みとかが生まれたのかもしれません。しかし、この一年、私に相談しませんでした。つまり、その悩みは私と関係なく、私と別れても解決しません。別れても、関係が一つ終わってしまうだけ。もったいないのです」

澪は資料を閉じる

「それに、このまま別れたら私は死にます。命がもったいないです」

「明日は私の誕生日だよ」

澪は髪をぐしゃぐしゃにする

「明日は私の誕生日だよ。この動画を見たら、今日中に連絡をください。気が変わってなくても、良いから。こんな誕生日、最悪すぎる」

澪はぬいぐるみを手に取る
澪はぬいぐるみを割く
澪はぬいぐるみの中からスマホを取り出す
澪は由実に動画を送る
澪は片づけを始める

暗転
明転

澪は机に突っ伏している
机にはロープとスマホ
スマホのアラームが鳴る
澪はスマホを見る

「ハッピーバースデイ、私」

澪はロープを手に取り立つ

暗転

ロープの張る音

End

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