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地域を舞台にした仲間づくりを目指して 〜守山市の地域共生型社会実現に向けた取り組み〜|地域共生型社会推進事業交付金採択事業 実施レポートNo.2

こんにちは。インパクトラボの中西です。

インパクトラボでは、一般財団法人滋賀県民間社会福祉事業職員共済会の地域共生型社会推進事業助成金採択団体としてコミュニティ・オーガナイザーの育成に取り組んでいます。

事業に取り組む経緯や、テーマであるコミュニティ・オーガナイザーについては下記の記事からご覧いただけます。

今回は、地域共生型社会の推進に尽力されている滋賀県守山市健康福祉政策課の犬丸 智則さんに、取り組みの経緯や、コミュニティ・オーガナイザーの立場を実際にされていて感じていることついてお話を伺いました。

自然とつながる・混ざる 〜実践の中からの学び〜

犬丸さんの地域共生社会実現に向けた取り組みの始まりは、およそ10年前に遡ります。

「どうすれば、みんなが活躍できる社会を実現して、少子高齢化社会を切り抜けていくか?」と考え始めていた頃、東京に出向していた犬丸さんは千葉県で活動しているNPO法人スマイルクラブに参加しました。

そこでは、運動が苦手な方向けの運動教室を行っており、障がい者の方も参加していました。その時のことについて「障がい者と健常者と属性を分けてしまっていたけれど、自然と混ざっている状態に心地良さを感じた」と話す犬丸さん。

障がいのある子もない子も自然とコミュニケーションを取り合っていること、誰でも夢ややりたいことがあることに気付かされたことが現在の活動の原点となっています。

子どもの「やりたい」を実現できる場作り

そこから守山市に戻り、2011年に守山市で学習支援事業を立ち上げ、生活困窮世帯の子どもたちに勉強を教えることを目的に、立命館大学で教職を目指す学生と共に活動をしていました。

学習支援事業にて大学生が勉強を教えている

取り組む上で大事にしていたことは、勉強を教えるだけではなく、家庭環境が原因で社会とのつながりが持てない子どもたちの「やってみたい」を引き出して、自分で考えて動くことをサポートしていくこと。

勉強だけではなく、BBQやテニス大会、大学の学祭への出店など、子どもたちから出た「やりたい」を次々と自分たちで企画して実行してきました。

そうしていくうちに、勉強だけではなく、夢や目標を持つことに前向きになっていく子どもたちの変化が、目に見えて感じることができたといいます。

当時のことについて「子どもたちのやりたいことの引き出しは、普段の何気ない自由な会話にこそ隠れています。それをうまく引き出し、実現できるようサポートすることが裏方(コミュニティ・オーガナイザー)として味噌になってくると気付きました。」と振り返りました。

地域の人・モノ・カネ・コトをつなぐ 〜地域を舞台にした仲間づくり〜

守山市の人口、85,107人のうち59人についてひきこもり支援をしています。(2022年3月末時点)

しかし、その人たちが特別なわけではありません。自宅と会社の往復しかしないサラリーマン、退職してすることがない高齢者、育児に追われ家族以外と話すことのないママ…誰しも少なからず孤独感を感じています。

「社会や地域とつながりがなくなった孤独感が、生きる力を失わせていき、社会的損失になっているのではないか」と犬丸さんは疑問を持つようになりました。

「自分にも何かできないか」とモヤモヤしている人が多くいる一方で、地域では地域のつながりの希薄化や地域活動等の担い手不足などの課題を抱えています。

そこで、課題を感じている当事者が地域を舞台に自分がワクワクすること・楽しいことができて、仲間ができて、結果的に地域の助けになるようなことができないかと自分によし、あなたによし、世間によし、未来によしをテーマに「三方よし+(プラス)研究会」を2019年に開始しました。

三方よし+(プラス)研究会では、食べたり、飲んだりしながら所属や立場関係なく自由に話せる座談会「車座」を実施し、色んな人が自然に混ざり、つながる場作りを行っていきました。

車座での座談会

これまでの活動や、車座で聞いた当事者の声から、「人生のスタートラインに立つことを応援する場」「色んな人が自然に混ざり、対話する場」「何かを目的に、ふっと行ける・行きたくなる場」の3つの場が必要であることが見えてきました。

そこで、2020年に立ち上げたのが「再縁寺プロジェクト」。合同会社Mitteの代表との出会いをきっかけに、コロナで中断となっていた車座の活動を「新・車座」として再開し、3つの場づくりの具現化を進めていきました。

そして、2022年5月に「食」をきっかけとに、集まる・つながる・はたらく・チャレンジする場を、持続可能な形で運営することを目指して、元散髪屋さんをリノベーションした「Café Ink MORIYAMA」をオープンしました。

「 Café Ink MORIYAMA」では、「食」を通じて人と人が集まり・つながるカフェスペース、守山市内の物産を販売できるスペース、市民活動や起業・就労について気軽にコーディネーターが相談できるなど、多様なヒトやモノ、コトが集まり、多様な活動を生み出すことができるようになっています。

Café Ink MORIYAMAの内装

コミュニティ・オーガナイザーとして

最後に、犬丸さんがコミュニティ・オーガナイザーとして大切にしていることや、読者の方に向けてメッセージをいただきました。

「コミュニティ・オーガナイザーとして大切なことは、他愛もない会話ができる安心できる場作りをすること、そして、会話からその人が抱えている課題や、やってみたいことを引き出すことです。そして、その場に居合わせた人々でつながりが生まれ、想像もできなかったような大きな変化になっていくのです。

気をつけないといけないのは『コミュニティ・オーガナイザーはみんなを引っ張るリーダーではない』ということ。目立つことなく課題やニーズを聞き出し、ヒトを繋ぎながら実現に向けて調整していくことを意識しています。

これから、コミュニティ・オーガナイザーの立場となる人には『失敗するのが当たり前』とめげずに活動を続けていくことが必要になってきます。人との調整、モノやカネの調達など、しんどいこともたくさんあるかもしれません。そんな時に『笑顔で前へ』という心持ちで、仲間に助けてもらいながら少しずつでも前に進んでいくことを大事にしてほしいです。」

さいごに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
犬丸さんの自治体職員でありながら、所属や制度を超えて繋がり、コミュニティを創ってこられたお話には、地域共生型社会の実現やコミュニティ・オーガナイザーとして大事なポイントがたくさん詰まっていたのではないでしょうか。

次回は、Café Ink MORIYAMAのオーナーであり、合同会社Mitte 代表の佐子 友彦さんへのインタビューの様子をお届けします。そちらも是非ご覧ください。





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