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【環びわ2021】1DAYフィールドワーク実施レポート −甲賀市編−

こんにちは。
インパクトラボの中西です。

8月11日(水)、環びわ湖大学・地域コンソーシアム学生支援事業「SHIGA SDGs Studios+(プラス)」の取り組みとして、1DAYフィールドワークを行いました。

「SHIGA SDGs Studios+(プラス)」は、環びわ湖大学・地域コンソーシアムに加盟している滋賀県内の14の大学に所属する大学生を対象に実施するプログラム。SHIGA SDGs Studios+(プラス)では、プログラムに参加している大学生が滋賀県内でフィールドワーク・取材活動を行い、SDGsの視点で記事・プランを作成します。フィールドワークや取材活動を通して体験した滋賀県のSDGsに関する取り組みを「びわ湖とツーリズム」をテーマに発信することで社会的にインパクトを生み出すことを目指します。

1DAYフィールドワークは、チーム活動が始まる前の事前学習として、滋賀県について知ってもらうきっかけとなること、フィールドワークやプラン作成までの流れを実際に体験することを目的に実施しました。

行き先は、大津市・甲賀市・東近江市・長浜市・彦根市の5つあり、コロナウイルス感染が拡大している状況を踏まえてスタッフのみ現地に訪れ、Zoomにて中継を行いました。

ここでは、甲賀市のオンラインフィールドワークの様子をお届けします。

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甲賀市レクチャー

はじめに甲賀市役所にて、甲賀市政策推進課・中嶋さんより「甲賀市の15年のあゆみ」をテーマに甲賀市全体の紹介をしていただきました。

甲賀市は滋賀県最南端にあり、平成16年に水口・土山・甲賀・甲南・信楽の5町が合併してできました。市内に3つのICがあり、製造品出荷額が県内14年連続1位と、製造業に特化したまちであるとも言えます。また、忍者・薬・東海道・信楽焼・城跡などが全国的に有名です。

2019年放送の朝ドラ「スカーレット」の舞台、2020年の全国植樹祭の開催地、パラリンピックではシンガポールのホストタウンとして選ばれているところです。

甲賀市の特産の1つにお茶があります。主に信楽地域と土山地域で生産されていますが、生産されたお茶は京都の宇治抹茶として売られることが多く、ブランド化の課題があるといえます。
品質としては非常に高いため、甲賀市の特産品としての認知度を向上させていく必要があると言われています。
(今回現地に行けなかった受講生には、信楽で生産された朝宮茶を自宅にて味わっていただきました。)

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続いて、今回のフィールドワーク先であった信楽町のツーリズムについて信楽町の各地域の特徴などを観光企画推進課の川上さんよりレクチャーしていただきました。

甲賀市の観光では、忍者、信楽焼、東海道の3つを中心に、鮎河の千本桜や信楽町・畑エリアのしだれ桜、甲賀地域の仏像など様々な資源があります。

信楽町について、それぞれのエリアについての説明がありました。

長野エリア…信楽高原鐵道・信楽駅周辺エリアで、飲食店や陶器が立ち並ぶのが特徴。
雲井エリア…紫香楽宮があった地域で関連する遺跡が点在、信楽焼で最も上質と言われる陶土(黄瀬土)の産出地。
田代・畑エリア…信楽の中心部から少し離れた自然豊かなエリア。MIHO MUSEUMがある。
朝宮エリア…朝宮茶の産地で、茶を使ったスイーツを提供するお店が点在。
神山エリア…信楽南部に位置するエリアで、かつては長野と並んで窯元があった地域。
多羅尾エリア…滋賀県最南端にある山の中の集落。甲賀忍者といわれる多羅尾氏が徳川家康をピンチから救い出したとして優遇されていた地域。

信楽では、官民連携で朝ドラ・スカーレットを通じて信楽を盛り上げる協議会が結成されており、スカーレットのロケ地を巡るロケツーリズムにも力を入れておられます。

また、コロナ禍での新しい観光の取り組みも行われています。これまで、大型バスで大規模に観光客を引き込むというやり方が主流でした。これからは、小規模なお客様を着地型観光として体験をベースにしたルート設定をするなどして、観光行政を進めていっているそうです。

インタビュー|陶芸家の視点から見たツーリズムとは

甲賀市役所から、約30分かけて甲賀市信楽町にある工房へ移動。
信楽町で活動されている篠原 希(しのはら のぞむ)さんに、信楽に移住して陶芸家になったきっかけや、陶芸家の視点からの信楽の魅力についてお話を伺いました。

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陶芸を知ったきっかけは? 
篠原 大阪で生まれ育った私は、陶芸どころか工芸についても全く知りませんでした。陶芸を知ったのは「陶芸の森が開館される」という情報をテレビで見た時です。茶碗が粘土を伸ばしてできたということも知らなかった私にとって陶芸という世界は衝撃的なものでした。そして、19歳で大阪から信楽に移住し、古谷信男氏のもとに弟子入りし8年間の修行をしました。

篠原さんにとっての信楽の魅力は?
篠原 信楽で生まれ育った人に聞くと、「信楽は有名らしい、いい土地らしい」という認識で止まっていることが多いです。私は、なぜ信楽が良いと言われるのかをよく考えています。

信楽には代々続く焼き物を作られている方がおられて、そこの先生のもとにスティーブ・ジョブスが訪れたことがあります。スティーブ・ジョブズが信楽にくることはどういうことなのか?信楽に来て見たいと思うものは、街に並んでいるたぬきを見ることなのか?お土産を買えたら満足するのか?と考えました。

「信楽に行ってみたい」という人の9割はそれで満足するかもしれませんが、私自身が残りの1割の方に満足できるものが提供できるようでありたいと思っています。「信楽焼が手に入ってよかった」ではなく、「信楽に来てよかった」と思ってもらいというのが私の1番の想いです。

いろいろな焼き物の種類がある中でなぜ信楽焼?
篠原 もともと飽き性で、人よりもなんでもすぐにできてしまう「器用貧乏」なところがありました。なにか1つ打ち込めるものがほしいというのは考えており、その時に出会ったのが信楽焼でした。

「薪窯と土」というシンプルな組み合わせでどんなものが焼けるか?と言う面白さは、アメリカであってもアフリカであっても共通することだと思います。

アメリカには「トレインキルン」と呼ばれる平地に築かれる薪窯があるのですが、その設計者と2019年に会い、実際にユタ州で一緒に窯を焚く機会を得て、さらにご本人から設計図までいただきました。せっかくのそのご縁を繋ぎたいと考え、今年トレインキルンを信楽の陶芸の森で作りました。

信楽にトレインキルンで作品が焼ける施設があると知れば、海外からも信楽に興味を持って来てくれる作家もいると考えています。
そうやってトレインキルンを通して、いろんな薪窯の話をしながら交流できることをとても楽しみにしています。

このように、信楽にはこぼれ落ちている可能性がたくさんあると感じていて、それを試し続けていてまだまだ終わりが見えません。そして、信楽にいるがぎりは信楽でしかできないことをしたいと思っています。

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作品を作られている工房内の様子
信楽で採れる土は、長石や珪石などの石がたくさん含まれており焼き方で様々な作品ができあがる


篠原さんが考える信楽でしかできないツーリズムは?
篠原 工房の横に子供たちと一緒に小屋を建てました。なぜこの小屋を作ったかというと、それまでは作っているところをみてもらうくらいしかできなかったので、お茶を飲める場所が必要だということで作りました。

月2−3回、栄養士である奥さんが料理を振る舞うカフェとして営業をしています。実際に作った器で食べてもらう体験をしてもらいたいという想いで始めました。

アメリカで、陶芸家の夫婦のおうちに招待してもらった時に高級で美味しい料理を食べさせもらうことよりも「受け入れてもらえた」と感じられることが大事だと気付かされました。何よりも、実際に作っている人がどのように作品を使ってほしいのかを見せてもらえることがとても貴重な経験だと感じたことがきっかけとなっています。

「それってお金になるの?」とよく聞かれることがあります。たしかに、儲かる取り組みではありません。しかし、わざわざ信楽に来てもらった人に信楽を好きになってほしい、分かりやすく信楽焼に直接関わっている者として何かできないか、常にそういうことを考えておきたいと思っています。

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工房横にあるカフェギャラリー「てまひまうつわ」

学生へのメッセージ
篠原
 大学で専門的な勉強をされていると思いますが、学生の時の経験はとても大事だと思います。こんな風にインタビューをするのも、社会人として立場があると警戒されて聞きたいことが聞けないということも多々あります。私が話したことを今日聞いてくれた学生さんがどのように受け取り、どんな風に伝えてもらえるのかがとても大事だと思っています。今日の私の話の中で何か1つでも心に引っかかってもらえると嬉しいです。

さいごに

最後までお読みいただきありがとうございました。

甲賀市にはまだまだ知られていない地域資源や観光地がたくさんあり、学生としてどのように発信していけるか、を考えるきっかけとなるフィールドワークとなりました。

篠原さんへのインタビューでは、よそ者からの視点として共感する部分もありながら、陶芸家としての目線や「信楽焼は面白い」と話していただいたことは新たな視点がたくさん得られる機会となりました。

是非、受講生にもフィールドワークを通した地域の問題発見や課題解決のアイデアを考える楽しさを感じてもらえたらと思います。

インパクトラボでは、SDGsレクチャーや各種講演・ワークショップ、SDGsツーリズム、新規事業立ち上げ支援などを実施しています。興味を持たれた方は、是非インパクトラボのWebサイトをご覧ください。



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