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【SDGs全国フォーラム2022滋賀・びわ湖】学生実行委員会Vol.15 セッション3「わたしたちの担う未来」

こんにちは。
立命館大学の窪園真那です。

この記事では、2022年11月12日(土)に開催されたSDGs全国フォーラムin滋賀・びわ湖のセッション3(学生実行委員会からの発表)の様子をお伝えします。

「SDGs全国フォーラム2022滋賀・びわ湖」とは

SDGs全国フォーラムとは、2018年6月に都道府県として唯一SDGs未来都市及び自治体SDGsモデルの両方に選定された神奈川県で、「神奈川県から『自治体の役割を明確にしたSDGsへの取組』を全国に発信すること」を目的に、2019年に横浜市で開催されました。コロナ禍でのオンライン開催となった長野県に次いで、3回目となる今回は、2022年11月12日(土)に滋賀県で開催します。 琵琶湖をはじめとする豊かな自然と調和する暮らしの中で、SDGsに通じる思想・歴史・文化が息づく「滋賀」において、経済・社会・環境のバランスが取れた持続可能な地域づくりを進めるため、SDGs全国フォーラムを開催し、次世代を担う若者をはじめとする多様な主体がそれぞれの取組を広く発信するとともに、県内外のパートナーシップ拡大を促進することにより、SDGsの達成に向けた社会変革につながる取組を創出する機会を目指しています。

セッション3は「わたしたちの担う未来〜つながるシガ、つながるワタシ〜」をテーマに、滋賀県内外の学生実行委員会による発表やメタバースを活用した新しい繋がりをつくるパネルディスカッションを行いました。


<登壇者一覧>

上田 洋平 氏 :滋賀県立大学・地域共生センター講師
田口 真太郎 氏:成安造形大学・未来社会デザイン共創機構 研究員
國武 悠人 氏:NPO法人バーチャルライツ理事長
佐藤 彩香 氏:立命館大学・食マネジメント学部3回生
山川 葉 氏:琉球大学・理学部2回生
隼瀬 紗愛  :滋賀県立虎姫高等学校 2年生

イントロダクション

初めに、モデレーターの上田先生より、このパネルディスカッションのテーマ「わたしたちの担う未来〜つながるシガ、つながるワタシ〜」について、説明がありました。

未来の担い手となる若者、実行委員会の学生との話し合いの中、決定した「つながり」というキーワードを用いたテーマ。上田先生は、「魚は海、ミミズは土、雲は空、星は宇宙にあるもの。では人間はどこにいるものですか。」とパネリストに対して、質問を投げかけました。「僕は、人間というのは空間に生きている、時間の中に生きている、人間の中に生きているものだと思います。」そして、「人とのつながりには『人と環境(空間)』『人と歴史(時間)』『人と人(人間”じんかん”)』がある」と話しました。

これらの人間のつながりを見ると、3つの破壊があると言います。「環境破壊」「未来破壊」「社会破壊」。1992年にブラジル・リオデジャネイロで行われた地球サミットで、セヴァン・スズキ(12)は「治し方のわからないものを壊すのはやめて。」、2019年には、グレタ・トゥーンベリ(16)が「若者たちはあなた方の裏切りに気づき始めている」、同じく2019年、カナダのエマ・リム(18)が「こんな恐ろしい未来のあるところにもう子供は産まない」と宣言をしました。彼らの年齢はいずれも若く、未来を担う若者たちです。上田先生は、これらの3つの破壊を「関係性の病理」であると指摘しました。人と環境(空間)、歴史(時間)、人(じんかん)のつながりが弱まっており、これらの「関係性の病理」はつながりの強化でしか治すことができないと主張します。*(  )は、当日の年齢

これらを踏まえて、今回は、さまざまな「つながり」を意識したセッションにすることを目的とし、テーマ「わたしたちの担う未来〜つながるシガ、つながるワタシ〜」が設定されました。そして、本日のゴールとしては、「人と環境・人と人・人と未来がツナガルための7箇条(セブンルール)」をパネリストの経験などからヒントを得て、設定することです。

ホールの舞台上の様子

パネリストの活動紹介

学生実行委員会について:田口真太郎さん

まずは、成安造形大学・未来社会デザイン共創機構 研究員で、滋賀県立大学非常勤講師の田口真太郎さんより、学生実行委員会の活動を伴走してきた立場からの活動の紹介がありました。

「滋賀県の特徴は何かと考えたとき、高校生や大学生の若い世代が滋賀県のSDGsの取り組みをこれまでの5年間、牽引していることが特徴ではないか。」と話します。SDGs全国フォーラムでは、若い世代が企画・運営自体に関わっています。他にも、学生の活動成果をパネル展示し、学生がセッションに登壇するなど、会場にいると、大学生・高校生の積極的な参加が明らかでした。

さらに、伝え方も工夫しています。今回のフォーラムでは、学生の取組をまとめる目的で、成安造形大学の卒業生がエントランスホールにウェルカムスペースを作りました。この作品は、学生が過去3年間に、滋賀県の企業やNPOなどのSDGsの取組を取材した場所を、グラフィックレコーディングの手法でまとめたものです。21個の抜粋した滋賀県の象徴的な取り組みが一目でわかるように工夫してあると言います。また、パネル展示では、VRに代表されるメタバースを活用して紹介していました。
「このように、活字で学生の活動をまとめるだけでなく、アートやバーチャルの世界を活用して、学生の活動を紹介しています。」と田口さんは強調しました。

ウェルカームスペースに設置した作品(制作:有澤愛祈・成安造形大学2021年度卒業生)

エクスカーションついて:佐藤彩香さん

続いて、立命館大学食マネジメント学部3回生の佐藤彩香さんより学生実行委員会の活動、エクスカーションの説明がありました。

エクスカーションは、従来の見学会や説明を受けるタイプの視察とは異なり、訪れた場所で案内人の解説に耳を傾けながら参加者も意見を交わし、地域の自然や歴史、文化など、さまざまな学術的内容で専門家の解説を聞くと共に、参加者も現地での体験や議論を行い社会資本に対する理解を深めていく「体験型の見学会」です。

今回のエクスカーションの目的は、「学生が滋賀を再発見し、全国に発信すること」です。
エクスカーションの活動は2つあります。①滋賀×SDGsマップの作成 ②エクスカーションマップの作成です。①滋賀×SDGsマップの作成は、取材した記事・フィールドワーク・エクスカーションなどの学生の活動をマップにしたものです。佐藤さんは、守山市でのエクスカーションプランを作成しました。「守山市は、守山宿・町家 うの家では、歴史の中に未来を感じることができるエリアだった。町家が活用され、活気が溢れていると感じた。人との温かいつながりを感じた。」と佐藤さんは話しました。

作成したエコツーリズムをまとめた地図

メタバースの可能性:國武悠人さん

次に、NPO法人バーチャルライツ理事長の國武悠人さんより「SDGsとメタバースの可能性」というテーマで話がありました。

初めにメタバースの定義について言及しました。「①空間性 ②自己同一性 ③大規模同時接続性 ④創造性 ⑤経済性 ⑥アクセス性 ⑦ 没入性」です。國武さんは、「これらの特徴は非営利分野との相性が非常に良い。あくまで、文化・福祉・非営利分野におけるメタバースの可能性を模索している。」と話しました。法人の活動としては、地方創生SDGs官民連携プラットフォームでメタバース分科会を行うなど、既存の社会課題にメタバースでアプローチしています。

「現在の若者は『SDGs』と呼称しなくとも、自然に実践できている。ただし、その取組が知られていないことは非常に勿体無い。」と國武さんは指摘します。「メタバースとSDGsの関係性は、そのようなSDGsの取り組みを独自の特徴を持ったメタバースを活用して、紹介・情報発信をすることだ」と話しました。

「サンゴ増殖大作戦 with 小学生」:山川葉さん

次回のSDGs全国フォーラム開催地の沖縄県から、琉球大学・理学部2回生の山川葉さんより活動紹介がありました。

海洋生物にとって食糧・住居・卵を産む、逃げ込む場所としての重要な役割を担っているサンゴの白化が世界中で報告されており、約60%のサンゴ礁が2030年までに死滅することを予測されています。(NOAA, 2006) また、「サンゴ礁は約10億人の生活を支えている(WRI, Reefs at risk revisited, 2011) 、3750億ドル(約55兆円)の価値がある(WRI, 2011)」と言います。

これらを踏まえて、山川さんは高校の同級生かつ琉球大学の仲間と共に、実践活動に取り組んでいます。プロジェクト名は「サンゴ増殖大作戦 with 小学生」。小学生の授業の一環でサンゴを育てる取り組みを「サンゴの苗づくり」「サンゴを育てる」「サンゴを海に返す」のサイクルで2年繰り返すと言います。「活動前後にサンゴの成長過程や生態系に与える影響に関する講座の実施を通して、サンゴの白化に危機感を抱いてもらうこと、次世代を担う子供たち(小学生)にサンゴの重要性や現状を伝えることを実現したい」と山川さんは熱意を込めて話しました。

また、教育・体験・地域との交流の3つの柱で実行しています。小学校での教育活動だけでなく、サンゴを実際に育てる体験型学習、公民館やデイサービスに水槽を設置し、定期的に訪問することで交流を促すといった地域との交流を大切にしていると言います。

山川さんが指摘したプロジェクトの目的

「ピンクマスクデーin Nagahama 地域活性化企画」:隼瀬 紗愛さん

続いて、滋賀県立虎姫高等学校2年生の隼瀬紗愛さんから高校での活動の紹介がありました。隼瀬さんはピンクマスクデー実行委員会の委員長を務めています。

「ピンクマスクデー」は、2007年にカナダの学生2人から始まったいじめ反対運動「ピンクシャツデー」が基になっています。ある男子生徒がピンク色の衣服を身に着けたことによっていじめを受けてしまいます。いじめに対して、2人の男子生徒がピンクのシャツを身につけて登校することで、多様性を認め合うことやいじめに対する抗議の意思を示したようです。この二人の行動が学校中に広まり、運動と化し、学校がピンクに染まったと言います。そして虎姫高校では、コロナ禍であることも踏まえ、シャツではなくマスクの着用で運動への参加意志を示しています。

活動開始までの経緯は、コロナ禍の差別や後を絶たないいじめ問題を解決したい、新型コロナウイルスの影響で活気を失う地域を元気にしたいという思いから、地域の人々と交流する中でいじめや差別に対する意識変革を起こす運動を考えたようです。また、クラウドファンディングで資金を募り、オリジナルマスクを作成。そのマスクはイベント当日の参加券とするなどの工夫も凝らしています。隼瀬さんは、「学生と地域が親密なつながりを持ち、協力し合える社会になることを目標として、自分達の活動が多くの人の原動力となってほしい。」と話しました。

ピンクマスクデーの活動開始の背景

つながりでなおす・琵琶湖システム

ここで上田先生から一つ、つながりで社会を良くした事例の紹介がありました。2022年7月に登録された「世界農業遺産」です。伝統的な琵琶湖漁業・環境こだわり農業・魚のゆりかご水田・水源林保全などが「琵琶湖システム」として世界に認められ、登録されました。

特に「魚のゆりかご水田」は、つながりで社会を良くした代表的な事例です。かつての琵琶湖のシステムは、琵琶湖から内湖、田んぼまで緩やかにつながっていました。天敵が少なく、栄養豊富の内湖、産卵・繁殖として適した田んぼは「魚のゆりかご」としての役割を担っていました。しかし、近代化により整備が進み、人々は生産性向上や農業経営の改善に努めるようになりました。その弊害として、琵琶湖の生態系や環境が大きく変化してしまったと言います。そのため、「魚のゆりかご水田プロジェクト」に取り組み、農業生産性を維持しながらつながりを再生し、魚が産卵・成育できる水できる水田環境を取り戻した事例と言えます。

グラフィックレコーダーでまとめたセッションの内容(制作:有澤愛祈・成安造形大学2021年度卒業生)

ツナガルための7箇条(セブンルール)を考える

最後に、5人のパネリストと上田先生、さらに滋賀県知事の三日月大造氏が考え、フリップボードに書いた一つ一つのルールを発表して、人と環境・人と人・人と未来がツナガルための7箇条(セブンルール)」を作成しました。

「一、自己表現の場を確保しよう」

メタバースから中継で登壇された國武さんの考えたルールです。身体的な制約から解放された自己を生きることができるメタバースの可能性は、つながり方の新たな形を提案しています。一方で、國武さんはメタバースの「身体性」を強調します。身体性を持って対話することができることもメタバースの特徴であるのです。

「一、自分を離れて自分を知ろう」

いまそこにあるSDGsを捜して県内各地を旅した佐藤さんが提案しました。対話を通した他者との繋がりの中で、多様性を認め、違いを受け入れることが必要だと話しました。そのためには自己理解が非常に重要で、普段の活動を通した他者との繋がりの中で、自分を理解することの重要性や難しさを感じたと言います。

「一、「禁止」から始めないようにしよう」

小学生やまちの人たちと共にサンゴを守り増殖させるための活動に取り組む山川さんが提案しました。守る(守らされる)側と守らせる側・守られる側というように、当事者を分断するような「ルール(禁止)の壁」をつくるのではなく、みんなでつくる、みんなをつなぐ、ルールを作りたいと話しました。

「一、いろいろなレンズで見てみよう」

ピンクマスクデーの運動を展開する虎姫高校の隼瀬さん。検索的な虫メガネ、自分から遠く離れたものを見つめる望遠鏡、真ん中に焦点をあわせた魚眼レンズ、顕微鏡、毎日書けているメガネ…。「同じ世界や同じ現象でも、レンズや倍率を変えると見えるつながりは変わる」と話しました。

「一、【  】 余白を大切にしよう。

今回の学生たちの理解者である田口さんが提案しました。【  】は成安造形大学のロゴマークにもなっています。「空」。現代の若者は超多忙です。新型コロナウイルスの影響で人とのつながりも減少しています。しかし田口さんは、「新しいものや考えを生み出す時、余白や遊びが必要。逆に言うと、皆さんが取り組みを始めたきっかけは元々シンプルな遊び心から始まっている場合が非常に多い。だからこそ、余白や遊びも大切にしてほしい。」と話しました。

「一、まんなかに愛を据えよう」

三日月知事。ご公務のためこの場には参加していません。知事は、「歴史」と「未来」、「わたし」と「あなた」、「自分」と「みんな」のまんなかに「愛」の一文字を据えたルールを作成しました。中心の「愛」は同時に「びわ湖」でもあるというメッセージを受けとりました。人をつなぎ、人の思いが注がれる「愛・びわ湖」です。

「一、(偶然を味方につけて)居合わせから仕合わせを育もう」

最後に上田先生が提案したルールです。人生の展開の8割は、予期せぬ偶然によって決まると言います。しかし全て運任せではなく、「良い偶然」を引き寄せる人には、共通した思考や行動の様式があるようです。「好奇心」「冒険心」「楽観性」「柔軟性」「継続性」の5つ。よく知られた「プランドハプンスタンス・計画された偶発性」。私たちはみな偶然にこの時代にそれぞれの国に、地域に、家族の間に生まれてここに居ます。しかし、ただ「居る」というだけではありません。互いの「居る」ということを少しずつ「チューニング」しながら「居合わせ」ています。「本日この場で出会ったことも計画された偶発性。みなさんとの『居合わせ』から、生まれた『7箇条』を指針として、それぞれの『居合わせ』が生まれることを願う。」と上田先生は話しました。

学生実行委員会の「つながる」ためのセブンルール

当日の様子はこちらからご覧ください。


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