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「ひと・地域を元気にするカーボンニュートラルプログラム」|長浜市木之本町フィールド研修

こんにちは。田邉成美です。

今回は、「令和4年度 環境省・教育機関と連携した地域再エネ導入促進及び地域中核人材育成研究『ひと・地域を元気にするカーボンニュートラルプログラム』」の木之本フィールド学習について報告します。

令和4年度 環境省・教育機関と連携した地域再エネ導入促進及び地域中核人材育成研修
脱炭素社会の実現のために最大限の導入が必要な「再生可能エネルギー」事業に関わる地域中核人材の不足は、多くの地域において課題となっています。また地域において、再エネ導入に関する知識を有する機関である教育機関と地域の連携事情も少なく、効果的な人材育成にまで至っていないのが実情です。こうした課題を解決するとともに、地域に根ざした取組を実施するために、再エネを導入する地域と高等教育機関の連携促進、専門性を持った新たな価値の創造に取り組む人材の育成、地域の脱炭素化のための視座を共有する教育機関及びユース世代間のネットワーク形成によって、持続可能な脱炭素社会の実現を支援していきます。

環境省HP, https://www.env.go.jp/press/press_00679.html

2023年2月11日(土)滋賀県長浜市木之本町にある株式会社バイオマスアグリケーションを訪問しました。代表取締役の久木さんのご自宅や活動を見学させていただきながら、CO₂ネットゼロや木質バイオマスエネルギーについて学びました。

参加者全員で集合写真

CO₂ネットゼロ社会とは

滋賀県総合企画部CO₂ネットゼロ推進課の山元夏帆さんに、滋賀県でのCO₂ネットゼロの取組についてお話を聞きました。

CO₂ネットゼロとは
 CO₂ネットゼロは、「人間の活動により排出されるCO₂の量」と「森林などが吸収するCO₂の量」をほぼ同じにすることで、地球温暖化の原因となっているCO₂の排出を実質ゼロにする取り組みのことです。

ゼロナビしが: https://zeronavi.shiga.jp/

 地球温暖化は、琵琶湖の全層循環が見られず生態系にも影響を与えていたり、農作物の品質が低下することで価格高騰につながったりしているなど、滋賀県や身近なところでも影響を与えています。

 滋賀県での取り組みの中でも特に力を入れているのが、CO₂ネットゼロ社会に向けたムーブメントの創出です。CO₂やエネルギーは目に見えないものなので、WEBサイトやフォーラムでの発信や、カーボンクレジットでCO₂を削減した分をお金にかえることで、可視化を行い、ムーブメントを推進しています。CO₂を排出しない社会づくりと地域・経済の活性化を一緒に行っていくということが印象的でした。 

滋賀県が目指す「CO2ネットゼロ社会づくり」を説明される山元さん

久木さんのご自宅見学

ゼロカーボン住宅を実現されている久木さんのご自宅を見学させていただきました。久木さんのご自宅ではエネルギーを「生み出すこと」と「無駄遣いしないこと」を意識された住宅づくりがされています。「省エネ」と「創エネ」の組み合わせることで、1年間に排出される二酸化炭素をゼロに近づけることを目標にしているそうです。実際に久木さんのご自宅の電気代は他の家庭よりも遥かに安く、環境や家計にも配慮されており、多くの人が理想とする家であることがわかりました。

 自宅を紹介する久木さん(右)

「省エネ」として、久木さんのご自宅では、自然にあるものを活用して快適な暮らしを生み出す家づくりをされていました。例えば、風を活用した屋根の設計することで、夏では家の中に新鮮な風が循環し、冷房をつける必要がなくなるほど風通しが良いですし、家の壁にはフォレストボードという断熱材を使用することで家の中の熱を外に逃さないつくりになっています。またパッシブソーラーという建築方法で太陽の光をコントロールすることで、もともと地球に存在するエネルギーを活用した住宅の構造になっていました。実際雪が少し残っているぐらいの気温でしたが、家の中はとても暖かく、暖房を使用していないので空気がすごくクリアで新鮮だったのが印象的でした。

バイオマスエネルギーを活用した家の様子

また、「創エネ」として、ボイラー室も見せていただきました。ボイラーはコンピューター制御でより効率の良いシステムが組まれているので、管理もしやすく、人がやる仕事は薪を投入することだけです。冬だと2〜3日に一回薪ボイラーに投入するだけでいいそうです。また、遠隔操作を可能でスマホからも操作できるので、帰宅時間に家を温める準備をすることをも可能だそうです。訪問した日は太陽光だけで十分家の中が暖かかったのでボイラーは使用していませんでしたが、とても寒い日にはボイラー室のバイオマスボイラーで熱を作りそれを各部屋に送り込む仕組みがあります。木ノ本町は冬になると積雪も多い地域ですが、久木さんのご自宅のエアコンは暖房としては全く使用せず、「冷房として年に10時間程度使うほどだ」と久木さんは話します。部屋にあるエアコンのコンセントが抜かれていたのが印象的でした。

ボイラー室でたくさん質問をする様子

たかときの森

木之本町では手入れが行き届いていない森がありました。この森は地域住民11人に所有権がありましたが、木の手入れは大変で、草木は生え放題の手のつけられない状態になっていました。そんなときに台風が来て森が崩れ、森を守り続けるためには整備を続ける必要がありました。そこで、地域の子供達と一緒になって大変な手入れを楽しくできないかと立ち上がったのが久木さんです。個人ではお手入れが大変で中々できていなかった地域住民の方も、地域の子供達のためと一緒に森づくりを行っています。今では、季節のイベントや卒業生が各々好きな木を記念に植える地域の交流の場所と変わってきています。この森づくりを始めたことで、地域の人が繋がれる場所になり、地域の子どもたちが帰ってきたいと思える場所に一歩前進したそうです。

みんなでつくる「たかときの森」

木質バイオマスエネルギーの熱利用

建築や木の端材を再利用して熱エネルギーに変える取り組みを見学しました。木の端材を捨てるのではなく安価で引き取り、チッパーという機械で端材を砕いて木質チップに変え、ボイラー設備を持つ福祉施設に運ばれ熱エネルギーとして利用されます。木質チップはスクリューコンベアに投入すれば自動でボイラーに移動する仕組みなので自由自在に使えるのが強みだそうです。このようにバイオマスアグリケーションでは資材を最大限利用することが実現されていました。

木質チップ

ながはまゼロカーボンビジョン

見学させていただいた後、久木さんより「ながはまゼロカーボンビジョン2050」についてお話していただきました。ながはまゼロカーボンビジョンは、二酸化炭素排出量を実質ゼロにするだけではなく、ゼロカーボンに取り組むことで地域としての結びつきを強くし、地域の明るい未来をつくることを目標としています。モノの地産地消だけではなく、エネルギーの地産地消のサイクルを確立することで「モノ」「ヒト」「お金」「エネルギー」の好循環が生まれ地域として豊かに活発になります。戦略的に確実にCO₂実質ゼロを目指し、取り組みの視点やファクター同士の連携が細やかに考えられていました。

模造紙を活用してワークショップを実施

 長浜市の脱炭素の取り組み
URL:https://www.city.nagahama.lg.jp/0000012175.html

脱炭素×○○ワークショップ

エネルギーについて考えるにあたって「脱炭素×○○」で取り組みを行うことで、脱炭素と同時に地域課題を解決していくことが期待されています。今回のワークショップでは、2チームにわかれて「脱炭素×○○」のアイデアワークショップを行いました。キャンプやFESなどで自然の循環を感じる、料理や酒など食の地産地消と結びつける、地域防災と結びつきがあるのではないか、など様々な意見がでてきました。脱炭素というと難しいイメージがありましたが、自分の興味あることや身近なことを結びつけていくことで、「ジブンゴト」になっていくのではないかと感じました。

久木さんと学生たちの議論が盛り上がりました

エネルギーの好循環を生み出す仕組みをつくり、脱炭素での地域活性化を見据えている長浜市の今後がとても楽しみです。今回の研修の様子は、参加者でnoteにまとめていきます。引き続きご覧いただけますと幸いです。

https://note.com/impactlab/all

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