変わること、変わらないこと

「〇〇ちゃん、変わったね」

学生時代の友人と久しぶりに電話で話したとき、そんなことを言われた。温厚な2人が珍しく電話口で言い合い気味になった。

なんてことのない男同士のささいな会話だったのだが、大学が同じで地元も同じ、腐れ縁を感じ「親友」と思い続けてきたそんな彼の言葉にハッとした自分がいたのは確かであった。


「大人になる」ということはそれぞれの人生を歩いていくということ。自分の人生を決断し、その道へ進んでいく。

人それぞれの生き方があり、価値観があり、育ってきた背景がある。その枠組の中で人は自分の生きる道を選択し、生きていくものだと思う。


その中で人は知らず知らずのうちに変わっていく。周りの環境もあるだろうし、自分の中で経験して生きていく中で育まれることもある。綺麗な言葉を使うとそれを「成長」とでも呼ぶのだろうか。


人生を歩み進めているはずなのに抱く不思議な感情。「人は何かを得る代わりに何かを捨てなければならない」という言葉があるが、

「自分は何か大きなものを捨ててはいないのだろうか?」と、ふと、自分で決めた道を歩きながら想いに耽ける瞬間というのはあるのだ。


「ずっとこんな日が続いていけばいいな」

そんな日々や物事や人々との出会いを喜びと噛み締めながらも、ときにはそれらを失い、捨てて、新しい道へ歩みを進めていかなければならない時もある。これらを「痛み」と感じる自分もいれば、「そういうものだよね」と諦めていく自分もいる。


歳を重ねていくと不完璧な自分を少しずつ許せるようになっていく。成熟したといえば聞こえはいいが、厄介といえば厄介だ。

変わっていく自分と変わらない自分。人生で訪れる一つひとつの出来事に向き合い、振り回されながら、巻き戻すことができない時計の針は今日もまた一つ一つ進んでいく。


「久しぶり、元気にしてるかな?誕生日おめでとう!!」

冒頭の電話以来、しばらく連絡を取らなかった親友に、先日誕生日のLINEメッセージを送った。「久しぶり〜!ありがとう!!」

「変わったね」と言ってきた親友からの変わらないメッセージにまた一つ想いを馳せる自分がいる。

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