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イベントと日常 

 この2か月は、note以外でたくさんアウトプットをしていた。先週は、新潟市役所近くの医学町通にあるBarBookBoxさんで木舟舎のフェアをやらせてもらい、雑誌「なわない」やその他ZINEの販売と展示、トークイベントをやった。自分のまわりの、そのさらにまわりにいる人たちと交差する時間。ありがたくかみしめる。
 フェアに合わせてエッセイを一本書いた。タイトルは「豊かな方へ」。6月いっぱいで手放すことになった、山の集落にある一軒家の暮らしについて主に書いている。一度には書けなくて、何度か手直しをした。自分が文章を書きたい人間なのか、編集したい人間なのか、たまに聞かれることがあるけれど、どっちの自分もいるとしか今は言えない。でも、「私は私なりの豊かさを追っているのだな」とふと近所を歩いてるときに頭に浮かんだフレーズがあって、それをするすると文章にしている時間は悪くない。

 6月の安達茉莉子さんと生活綴方さんをお呼びしたイベント、東京での本屋めぐり(営業も兼ねた)、7月頭のふふふのZINE、先週のフェア。駆け抜けた2か月だった。雑誌なわないは早いのか遅いのか分からないスピードで、いろいろな人のもとに届いていく。ゆっくりとではあるが「売る」ためにも時間や労力をかけたつもり。そして、願いをこめてつくったものに対しての反応もいろいろな言葉で返ってきている。反省点もたくさん見えてきたので、冷静に次は改善していきたい。

 イベントをやると、そこで必ず新たな景色が見えて、大切な言葉やギフトをもらう。そこには、山の向こうの景色が一瞬見えるような、きらきらとした未来のようなものが現れるような感覚がある。それが、次のモチベーションやエネルギー源になるんだと思う。
イベント企画・運営をやることは私のしごとの一つだとは思っているけれど、それはあくまで「非日常」で「一時的に」良い状態が見えているものだと思っている。イベントをやるごとに、「じゃあ私の日常にはなにがあるの?」と問いかけてくる自分がいる。焦ってそれを日常に持ってこようとする。日常を大切にしたい(少しずつ良い方へ変えたい)のは、私の大事な部分でもあるけど、焦らないようにしようと思う。

 インプットのペースが上がっている。それは、人と話して得られることも含めて。東京の憧れの本屋たち、新潟県内の本屋さんたちと「なわない」をお届けする際にお話しして、たくさんの刺激をもらっている。ふふふのZINEの時期に友人が開催していた詩の展示や、ZINEイベントのスタッフをやってくれた方々との会話や、BarBookBoxで見た光景からも。「しぶとい十人の本屋」「エディターシップ」など読んでいる本からも。podcastや配信で見る映画やドラマからも。

 インプットはそのまま、次になにをつくろうか・私はどう生きていこうか、につながっている。ときどき不安になるけれど、前よりも精神状態が安定している感覚がある。そのせいなのか、インプットの情報によってメンタルが影響を受けることが少なくなった。例えば、見る映画やドラマも興味があれば「今までの私が好きそうじゃないもの」もどんどん見れるようになった。

 山の集落の家がちゃんと手放せたのも大きい。田んぼの管理のために1~2週間に一度ほど通っているけれど、今は山の生活に割ける時間や余裕は無かった。私にとって今集中したい「豊かさ」が別のところにあった、とひとつの答えを仮に出しているけれど、本当のところは分からない。友人や親や近所の方に手伝ってもらって、無事に大家さんにお返しできてほっとしている。大家さんからも最後に「また何かあれば声かけてね」とSMSで優しい言葉が届いた。
 田んぼは相変わらず、人間の都合と関係なく育っている。風も天気も、私の時間のサイクルには合わせない。まだなんとか食らいついているけど、(例えば2日連続で田んぼに行ったりして)いつまで続けられるかは分からない。それでもやっぱり、山に行って季節の変化を感じることは大好きだ。

 町暮らしの日常もすっかり板についた。朝はパンとコーヒーで済ませ、午前はリモートワークが多い。昼ごはんは気分によっては近くのお店に食べに行き、だいたい午後は打ち合わせか用事を入れる。週に1回、障害とアートのNPOのお手伝い仕事をし、月に1回、出社して定例ミーティングをする。疲れた曜日は近所の銭湯に行って、たいていスーパーに寄ってビールを買う。ご飯を食べながら映画やドラマを見て、寝る前に少しまたPC作業をする。仕事の量はたぶん高校の同級生の誰よりも少ないと思うけど、そんな自分の人生を気に入っている。堂々と生きたいと思う。

 明日から8月。冷えた桃が食べたい。

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