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全体最適の思考と中立的なポジショニング

ぼくは、broom inc.というデザインスタジオの代表であり、主に商品の企画〜設計 / ブランドの構築〜育成 などをしているデザイナー・ディレクターです。

WEBに載せている事例を筆頭に、露出していない部分でも結構いろんなことを幅広くやっているのですが、なにも見境なくやっているわけではなく、首を突っ込むかどうかにはわりと明確な自分ルールがあります。

ひとつは、"触れることのできるカタチ(=モノ)”がどこかに表れること。もうひとつは、"部分的な解"のみを期待されていないこと。

一番の理由は、プロダクトやパッケージなどの質感を伴う領域のデザインと、企業とクリエイティブ/ブランドの相関やそこにターゲットを加えた物事の全体像を見渡すことが、単純に得意だから。

なので、ロゴだけをつくるとか、WEBだけを組むとか、モノを産み出さないサービスのブランディングとか...、そういった、"無形"で完結する、もしくはスポット的な対応は、基本的にお断りしています。ただしこの方針も、会社の状況や社会のニーズの変化に応じて、この内容も自分自身の在り方と共にやわらかく変化するべきと思っているのも確かです。

そして、その「全体を見渡すこと」が「幅広くやること」に繋がっているわけですが...

これは外から見ると「幅広く」というふうに見えるだろうけど、実際は「一貫する」という認識に近いのです。

例えば、ある商品のパッケージをつくるのが主旨の依頼があったとして、そこには必ず、それをつくる企業の色があり、プロジェクトやブランドの色があり、お客さんの色もある。ド直球に「かっこいいパッケージをつくりたい」という100%直感に振り切った要件である場合を除いて、実際はパッケージの体裁だけを気にしていたのでは、本質的な課題をクリアできないのが常だと思います。

突き詰めていくと..
商品はもっとこう在るべきじゃ?とか、コミュニケーションも連動させないと伝わらないんじゃ?とか、スピード重視なら2つつくってA/Bテスト回した方が良くない?とか、おこがましくも、"そもそも"を覆すような全体を巻き込んだ思考に至ることが多くあります。

つまるところ、"部分"として見えているクリエイティブの全ては、視野を拡げれば「…ー企業ープロジェクトーブランドー製品ーパッケージーユーザーー…」と地続きの線上に存在していて、ならば、それらを把握した上で考えてつくらないとチグハグにならない?というのが、ぼくの考え方のベースにあるわけです。

マーケティングやブランディングの文脈においては、「タッチポイント(顧客接点)」という言葉が示す通り、わりと浸透している考え方ですが、クリエイター自身がそれを理解しておくことに越したことはないし、接点間で影響し合うことで生まれる微妙なニュアンスまで逃さずアウトプットに落とし込むことが、コミュニケーションの品質や一貫性につながると思っています。

ちなみに、ここで言う「一貫」とは、全ての接点で同じ態度をつらぬくという意味に限らず、反対に、接点ごとに異なる一面をあえて見せる場合も指していて、その場合でも、やはり全体を把握していないと的を外してしまうでしょう。目も鼻も口も声も動作もすべて複合して、各々個性が在るのと同じです。

もちろんプロの矜恃として、要望に対して実直に応える時もあるけど、基本的にどのプロジェクトに際しても、部分最適ではなく全体最適を志している、ということに変わりはなく、結局、"部分"だけでなくなるケースの方が圧倒的に多いわけで。

「ここもこうした方がよくない?→いいね!やろう!」といった、高いモチベーションを前提とした連鎖が、結果的に、"幅広くやる・一貫する"ということに繋がっています。

ただその半面、ここまで長々と書いておきながらではあるけど、「ロジックなんてクソ食らえ」とも思っています。全体を俯瞰するとか、タッチポイントがどうとかを超越したエモいアウトプットが存在するのも事実で、ぼくは、そういう言葉では説明できない直感的なパワーも信じているし、それらの中立的なポジションで生きている人間です。

もともと、学生〜学生あがりの頃は、立体・平面・空間 …と、クリエイティブをジャンルで括った上で「越境するぞー!」と意気込んでいたのだけれど、(それが現在の能力に直結しているのは確かだけども)世の中のニーズと並べて考えた時、それは自己満足でしかなく、それこそ、各ジャンルのスペシャリストに依頼した方が良いのは明らかだなぁと。

そんなことに気がついたどこかのタイミングから、ぼくの場合は、ひとつの分野にフォーカスするでも、越境自体にパワーの比重を置くでもなく、各分野での経験値を均一に振ったパラメータを、全体を見渡すビジョンに変換した、という感覚があります。

なので、特定分野に極フリしたプロに対して、単一の土俵の上だけでは戦いません。その代わり、総合値に関しては負けたくないというプライドもあるので、お節介とわかりつつも"包括的な設計”をするし、実際にやってみて、特に、零細/中小規模の企業に、そういうニーズがあることも感じています。

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