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To Know 遠野。【予告】

明日は、岩手県遠野市に行きます。
岩手の県庁所在地、盛岡市から南東へだいたい60キロ先にある遠野。
柳田國男『遠野物語』が扱っただけあって、ポピュラーな街である。
かくいうわたしも本書を読んで「へー」と魅せられたクチである。

ただ、テキストを読んだっきりで、ついぞ遠野には行ったことがなかった。
柳田・京極両氏の文体から垣間見える、原野ふうの「遠野」に満足していた。

あるとき、テキストだけで事足れりとするのは文化人類学を学ぶ人間として惜しいナと気づいた。実際に行ってみると、予め聞いた噂から構成していたイメージと、だいぶ違うなんて事態は往々にしてある。
たとえば、パリは「華の都」なんかと違う。真っ赤にコア化して、赤木リツコに「この有り様とは——」と嘆かれるまでもなく(エヴァンゲリオンの話です)、スリは多いわ、ゴミは散らかっているわ、街路は暗いわ、トイレは幽閉してくるわ、華なんてありゃしない。旅してはじめて分かった。

遠野にも、うっすらとイメージを組み上げている気がする。
いやいやそこに頓着せず踏み越えていくのが文化人類学の本分のはずである。
だから、土地を歩けるもんなら歩いて、実地で遠野に触れる機会があったら……と考えるともなしに考えていた。あとは明確なきっかけだけが足りなかった。

先日訪れた中本美術館にて出合った画家・菅野麻衣子さんは遠野に移住した方だ。
仙台から移り住んでから制作された作品群を目にして、「遠野に行きたいワ」としみじみ感じた。さらに、菅野さんとお話ししているうちに、とある講演会を紹介していただいたことも、その想いをひときわ強めた。講演会は、題して「本当にはじめての遠野物語」。明日4月3日に催されるとのこと。菅野さんに「行けたら行ってみてください」と勧められ、わたしは水を得た魚のごとく喜び、ヨッシャと膝を打った。動機を得たらこっちのもので、わたしの動きは敏捷になる。

歩いて行くには遠野は遠い。170キロ先では心が折れる。ゆえに論外。
バス・新幹線は便利・快適だが、代金が弾みそうだし何より手続きが煩わしい。よろずにつけ予約の作業というものは、思いつきで生きる人間のわたしには好きになれない。阿房列車マイスター・内田百閒に私淑する者としては身軽でありたい。

そういうわけで、明日はとにかく在来線を乗り継いでいく
ざっと調べた限り、4回ぐらい乗り換える予定だ。また、4、5時間ぐらい列車に揺られるらしい。それで片道4千円弱の旅路である。日帰りのつもりだから高い交通費のような気がしないでもないけれど、わたしァ金銭面にはあまり頓着しない性分なのであります。「青春18きっぷ」的ハード・トレイン・トリップをいちどやってみたかったので好都合です。

講演会を聴くほかはサッパリ予定を立てていない。阿房道ここに極まれり。
4、5時間くらいは滞在できるはずだから、なにかしたいとはおもうんだけれど。
電車内でボンヤリ考えたい。明日は好天とのことだから気兼ねなく歩けますね。

かくも破天荒な旅行記ではありますが後日note上に提出できたら幸いです。

I.M.O.文庫から書物を1冊、ご紹介。 📚 東方綺譚/ユルスナール(多田智満子訳)