Ditto - NewJeans 【ゆるゆる楽曲解説】
思うがままに、ゆるく楽曲解説をしていこうと思います。
ちなみにK-popに疎く、数週間前にNewJeansをちゃんと認知した程度です。
構成
※()内は小節数
1番と2番でAメロとBメロ、サビの長さがそれぞれ異なります。
イントロから1番のサビまで楽器を増えたり変化をつけたりしながら盛り上がっていきます。
そして、2番Aメロはサビの盛り上がりを引き継いで、1番より長めにAメロが設けられています。しかし、2番Bメロで一旦ビートが止まります。落ちサビのような効果がもたらされています。
そこからサビに入り、ビートが入りながら少しずつ彩りを取り戻していきます。そしてAメロを繰り返し、イントロと同じ形で幕を閉じます。
便宜上、AメロBメロサビという用語を使っています。この分け方もナンセンスかもしれません。
どちらにせよ、日本の一般的な楽曲構成とは少し異なるようです。
楽器構成もボーカル、シンセ、ベース、パーカッション、SE(効果音)のような形でシンプルです。
歌詞
dittoとは「同上」「賛成」「複製」「同じことを繰り返す」などという意味だそう。
とにかく「同じ気持ちだ」「好きだ」と言って欲しい。そんな思いが歌詞全体から読み取れます。
わたしもはじめは普通のラブソングのように聴いていましたが、そうではなく「アイドルに夢中になるファンの想い」を描いた曲のようです。
Aメロでは"ditto"を中心にして韻を踏んでいます。
韻も心地よいのですが、歌いはじめが"Stay"なのが爽やかさを醸し出しつつ、推進力を持たせていて素敵だと思います。
あとスキャットというかフェイクのような詩ではない部分も非常に素敵ですね。
冒頭の"Woo-ooh..."がすすり泣くような表現にも聞こえるし、寝言やため息のようにも聞こえる。Bメロに出てくる"yeah"も"Ra-ta-ta-ta"もポップさをもたらす役割で必要なものでしょう。
また、私は韓国語がほとんど分かりませんが英語によく馴染む言語だと感じます。"말해줘"を「言ってよ」と変えようもんならものすごく雰囲気が壊れますね。
実際に歌に向いている言語なのかは分かりませんが、日本人からすれば韓国語も英語と同じ外国語になるので、新鮮な感覚でK-popを聴くことができているのかもしれません。これは日本人の特権かもしれません。
コード
という進行を一曲通して繰り返しています。J-popでもよくみられるコードの並びです。
このコード進行を8小節のまとまりで見ると、7小節目に「Ⅰ」がきます。したがって8小節目に次に向かうようなコードを持ってくればいくらでも続ける(ループする)ことができるし、7小節目で安定感を持って終わることもできます。実際にこの曲は最後のループの7小節目で終わります。使い勝手がよい進行です。
注目すべきは「Ⅴ7-5」です。ドミナントの緊張感を高めながら「B→B♭→A」という流れを生み出すことができます。このコードは藤井風がかなりの頻度で使用しています。流行りの和音とも言えるかもしれません。
サウンド
NewJeansのサウンドは他のEDMと一線を画していると思います。
特にK-popにガールクラッシュ的なイメージを持っていましたが、NewJeansのプロデュースはそういった方向性ではないでしょう。
◆250と「ポンチャック」
Dittoを作曲した250さんは「ポンチャック」また「ポン」という韓国の文化を追求しているそうです。詳しくは書きませんが、ニコ動のMADのような側面を持った文化が韓国にもあるのか〜と個人的には思いました。
例えば「ポンチャックディスコ」は流行している歌謡曲を同じビートでメドレー形式で歌っていく文化で、親しみやすさはあるが、ともすればダサい音楽に聴こえます。
250さんは以下のようにインタビューで答えています。
親しみやすさと自由な形をもった「ポンチャック」をベースとしながら、思うがままに「好きな音楽」を作っているということでしょう。
それを踏まえてDittoを聴くと、曲調の大きな変化もなく親しみやすい音楽でありながら、新たなサウンドを探していくような、そんな姿勢が感じられます。
◆冷たいような、温かいような音
この曲は2022年の冬、クリスマスの1週間前にリリースされています。そんなことは知らずとも「冬だな」と私は感じました。
はじめは「冒頭の音、サイン波のシンセでⅣM7をロングトーンすればこんな感じになるだろう」くらいに思っていましたが、よく聞くとシンセの音に加えクワイア(歌声)が重ねられています。おそらくヘインの"Woo-ooh..."というウィスパーと調和させるためでしょう。
そもそもNewJeansのメンバーは全員ウィスパー系の透き通った声を持っているので、1曲通してこのシンセ+クワイアが鳴っているし、どこか儚さを感じます。
また、サビの最初の音(C#)にも工夫が凝らされています。ベースの音はDなので、ちょうど半音でぶつかることになります。しかし、この不調和が冷たさや青春の青臭さ残酷さを表してるのでしょう。
ですが、包み込むようなサイン波の音のベース、サビの「a」系の母音の多さ、左右から聞こえる"Ra-ta-ta-ta"、細かく刻むウェットなクラップの音、時折小さく聞こえる掛け声(?)などが温かさをつくり、バランスを取っています。
◆EDMの常識を打ち破る「5つ打ち」
ここで250さんの「ポン」が出てきます。
近年流行している音楽はカウントどおりにバスドラが鳴るような曲が非常に多いと言われています。このとき1小節にバスドラが4回鳴るので「4つ打ち」と言われます。
しかし、この曲は「5つ打ち」と呼ばれるビートで作られています。
「5つ打ち」は「ジャージークラブ」といったヒップホップ系でよく見られるビートです。ですが、ヒップホップ的な要素はDittoでは少し薄められており、NewJeansの楽曲としてのキャラクターを崩していませんね。
他の文化から引用し、新たなダンスミュージックを作り上げるところが250さんのいう「ポン」ということになるでしょう。
ちなみにAメロは、5つ打ちのビートを逆にしたようなリズムのメロディーです。
◆ボーカルについて
メイキングを見ましたが、とても丁寧に歌っていますね。
一方的にプロデューサーにボーカルディレクションされるだけではなく、本人たちが「〇〇が心残りだったー」とか言っていますね。
日頃からどんなレッスンを受けているか気になりますね。
はじめは5人とも似た声に聴こえましたが、よくよく聞くと子音の発音や抑揚がそれぞれ違います。
少し、個人的に思ったことを5人にそれぞれ書いてみます。
ハニ・・・エッジボイスを多用。バランスの良いきれいな幼めな声。どんな音の高さも、喉のポジションを保ってなめらかに歌う。英語綺麗。
ダニエル・・・かなりハスキーボイスで、自然にエッジボイスが混ざるような感覚。子音が強め。英語綺麗。低い音のときにしっかり喉仏を下ろす(?)
ヘリン・・・エッジボイス控えめ。フレーズのあとに息を吐く。歌詞のすべての言葉を割と均等にはっきりめに発音する。
ヘイン・・・エッジボイスを多用。よく聴くと常に細かく小さくビブラートしている。最年少感。
ミンジ・・・高い倍音も鳴りつつハスキーで大人な声。「m」の発音の前にしっかり溜めて「…mmmmまっ」と発音する。
おわりに
これまで、正直K-popを毛嫌いしていました。
もちろんビジュアルや売り出し方も関係があるのでしょうが、ここまで多くの人を引き付ける音楽にはきっと秘密があるでしょう。そんなふうに思っていたときにNewJeansの曲を耳にし、すっと受け入れられました。「OMG」もいつか記事を書きたいと思います。
ご覧いただき、ありがとうございました。
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