見出し画像

合同会社いもいも設立のお知らせ

花まるグループの思考力教室事業である「いもいも」事業部は、2023年4月、花まる学習会を運営する株式会社こうゆう(本社・埼玉県さいたま市、代表・高濱正伸)から独立し、4月より、「いもいも」は合同会社いもいも(本社・東京都西多摩郡檜原村 代表社員・井本陽久/土屋敦)による運営となります。

2016年、栄光学園中学校・高等学校の数学教師・井本陽久による思考力教室が、生徒数5名ではじまりました。翌2017年には生徒は19名となり、同年年末に行った公開授業をきっかけに、私、土屋敦を含むさまざまな大人たちが毎週授業前に集って教材や授業デザインについて井本とともに語り合い、また授業後は深夜までSNS上で授業での子どもたちの様子について語り合う日々が始まりました。その中で、現在のいもいもへとつながる教室の形が作られていったのです。

2018年4月に井本の中学・高校時代の同級生である土屋が株式会社こうゆうに入社、教室はいもいもと命名され、お茶の水と東戸塚の2教室、30名の生徒で正式にスタートしました。その後、才能ある若手講師たちがいもいもに関わることになり、講師たちの力を最大限に活かせる教室を作る、という方針のもと、表現コミュニケーション教室や数理パズル教室などの新しい教室が生まれ、200名を超える子どもたちに通ってもらうまでに大きくなりました。

また2020年10月には、自然の中で本質的なまなびを体得する「森の教室」が、始まりました。平日日中の開講であったため、自然と不登校の子どもたちが集まり、彼ら、彼女らを中心に、子どもたちが自然のなかで躍動する場となりました。苦しみや辛さを抱えてやってきた子どもたちが、自然の中で生き生きとする姿をみることは、私たちにとって大きな喜びでした。

森の教室の開始以降、いもいもは、学校での学びにつらい思いを抱えたり、生きにくさを感じたりしている子どもたちの「居場所」として取り上げられることが多くなりました。また、この時期以降、いもいもで学校を作れないか、という声が高まり、具体的な話もいくつかいただくこともありました。そのような流れのなか、2022年9月、東京都の檜原村の自然の中で過ごす子ども「森のスコーレ」、そして都内でそれぞれのご家庭の都合に合わせて教室を選択して通う「風のスコーレ」という2つのフリースクールを開校しました。

「森のスコーレ」には、村内に宿泊して通うコースがあったのですが、わずか2ヶ月で宿泊を中止することとなりました。とても苦しい決断であり生徒、ご家庭、関係するさまざまな人達を振り回し、傷つけることになりました。これは、そもそも私たちができないことをやろうとした結果です。私たちには宿泊型のフリースクールの運営を全うするだけの力もリソースもなく、また子どもたちの「居場所づくり」に関する専門性がないにもかかわらず、準備不足のまま拙速に事を運び、「まなびを深める」という本来のミッションを果たすことができなかったのです。できないことはしない。できることを、それを求めている人たちにして、ただ純粋にやる。そんな当たり前のことが疎かになっていました。

このような経験から、井本と私は、子どもたちのために本当にできることは何なのかを徹底的に考え、日々、対話を行うようになりました。その中でゆるぎなく明確になったのは、いもいもは「居場所」ではなく、「まなび場」である、ということでした。居場所の運営には強い信念と覚悟、専門性や経験が必要で、ときには「まなび」を捨ててでも居場所を守ることもあるでしょう。しかし、私たちは、「真に自分の人生を生きること」と「まなび」は不可分であると考えています。そして、私たちが誰かの役に立てるとしたら、それは「まなび」においてしかない。教室が拡大し、世の中のニーズになんとか応えようとしていくなかでいつのまにか見失っていた、いもいもの根幹にあるものが明確になり、今後はそれをひたすらゆるぎなくやっていくしかない、という強い思いが生まれたのです。

学校の成績を上げることや受験での成功を目的に、ただ正解を探す勉強をするのではなく、赤ん坊が、この世に生まれ落ちた瞬間から、好奇心いっぱいに、喜びに満ちあふれたまま、まなび、考え、体を動かし、試行錯誤をし続けるように、本当に安心できる空間の中で、自分をよりどころに存分に考え、まなびを深めていく場を作ることこそが、いもいものミッションであると考えます。

7年前に井本がいもいもの原型となる思考力講座を始めたときのコンセプトは、「自分で考えることがどんどん楽しくなる!」でした。そして今、さまざまな経験を経て、まさにいもいもの原点ともいえるこの言葉にこそ、いもいもができること、そしてやるべきことが集約されていたことに思い至ったのです。

前述のとおり、いもいもでは、講師がその力を存分に発揮できるように、という思いで、授業においては講師個人個人の裁量を大きく取ってきました。しかし、教室が拡大する過程で、いもいもの「根幹にあるもの」の輪郭がぼやけ、また方向性がブレていってしまうという面もありました。そこで今後は、より明確にすべく、いもいもにおける教材や授業デザインに井本と私がしっかり関わり、私たちが出来得る限りの最高のオリジナル思考力教材と授業を提供すべく、すべての教室のあり方を刷新していきます。

2023年4月1日、新しく教室を作っていくこのタイミングで、いもいもは花まるグループを巣立つことになりました。株式会社こうゆう代表の高濱正伸さんは、まさにいもいもの育ての親です。高濱さん、そして花まるグループのみなさまは、いもいもを常に勇気づけてくださいました。また、私たちの世間知らずの無邪気すぎる挑戦にもNOと言わず、失敗すれば盾となり、常に支援してくださいました。いもいも自体が、まさに生まれたばかりの赤ん坊のように、自分たちで考え、完全に自由に試行錯誤しながら、いもいもならではの教室と授業を作ることができたのは、そのように花まるグループの方々に守られてきたからにほかなりません。

いもいもは、まさに花まるグループというゆりかごで育まれました。そしていもいもが教室を刷新する、まさにそのタイミングで、独立の背中を押してくださり、あたたかく送り出してくださることには感謝しかありません。

さて、原点に戻って再スタートするいもいもは、主に「いもいも教室」「井本数理思考教室」「森の教室」の3つの教室を展開します。身体性や表現にこだわりながら数理・論理思考にも取り組み、「生きるための思考力」のベースが自然と育まれてゆく「いもいも教室」、そして成績や受験に惑わされず、ひたすら純粋に本質的な数理思考を追究する「井本数理思考教室」は、いずれも思考力教室として唯一無二のものであると考えています。「人間とはどういう生き物なのか」という根源的な問いを出発点とした「森の教室」は、自然が持つ「不自由さ」のなかで自由に試行錯誤し、協同と対話によって互いの絆を育んでいく教室で、主に平日昼間に展開してゆきます。

「自分で考えることがどんどん楽しくなる!」教室を、どうぞよろしくお願いいたします。

合同会社いもいも 共同代表 土屋 敦


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?