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床屋

床屋が好きだ。
身だしなみも着こなしも無頓着だが、床屋にはこまめに行く。

推しはいつ見てもキレイな頭をしているが、芸能人ってどれくらいのペースでメンテナンスに行くのだろう。

転勤族だった頃、北関東のある町で、アパートの眼の前にあった美容室に入ってみた。
嫌な思いをしたわけではないが、なんとなく尻が落ち着かなくて、少し離れた床屋に切り替えた。

この街に来てからは、ずっと同じ床屋に通っている。
たいていご主人が切ってくれる。先客があると奥さんになる。
中学生と高校生だったお子さんは、もうずいぶん前に家を出られて、思い出話の中にしか登場しなくなった。
鏡の前には水槽。お子さんがお祭りですくってきたという金魚たちは、ずいぶん食べごたえの有りそうなサイズ感に育った。

切ってもらいながら世間話をする日もあれば、うとうとしていると静かに放っておいてもくれる。絶妙な距離感が助かる。
頭皮や肩のマッサージは、もう少し強くて長くてもいい。言わないけど。

街に出ると、建物か店主の老朽化で閉店した床屋がいくつも目に付く。
自分より年上であろう、ここのご夫婦も、お子さんが後を継いだりはしないかもしれない。
この店が閉じたら、1000円カットの店にでも行ってみようかと思う。家計には優しくなるが、その日はまだまだ先であって欲しい。
先に、自分の頭がカット要らずになるかもしれないしね。

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