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憧れの定期券

田舎の電車は本数が少ない。

電車が少ないから車社会になるのか、
車があるだろ?と本数が減らされるのか。

高校時代、電車通学のクラスメイトが羨ましいと思っていた。
定期券入れに憧れたのである。
子供か。
自宅から一番近い高校に入ったので(市内に高校は二つしかなかった)、自転車通学すら許されなかった。

もちろん、クラスメイトには、滔々と
電車通学の面倒さを語られた。
本数が少ないから尚更である。
ちょっと話が盛り上がっていても、電車を逃したら次は最短1時間後だ。
バイトもデートも買い物も、時刻表が纏わり付く。

田舎の高校を出た後、埼玉に住んだ。
もちろん、定期券入れを真っ先に買った。
結局、1年足らずで引越してしまい、それ以後定期券を買ったことはない。
クタクタボロボロになって、プラスチックが欠けたその品を、実は未だに免許証入れにしている。30年ものである。

車をほいほい乗り回すようになるまでは、乗り物酔いをしやすい身体だった。
酔い止め薬はいつも手放せず、
新幹線で堪能したばかりの駅弁を台無しにしたこともある。
定期券入れに憧れたが、現実は、
電車にあっさりノックアウトされたのだ。


この街には空港もあるが、東京に行くなら新幹線が一番手っ取り早い。

大人になってからの時間の方が、子供だった時代より遥かに長くなったのに、
未だに改札を抜けると少々嬉しくなる。

その先に推しが待っていてくれると、尚更嬉しいに、決まっている。

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