駅伝応援写真に写り込んだ観客にモザイクは必要なのか?
2019年年末のことです。第95回(2019)箱根駅伝の写真をInstagramに投稿したところ、コメント欄にこんな書き込みがありました。
「私の顔が写っている。見ていて気分のいいものではない。削除してください。」
弊社の職員研修において顧問弁護士による「著作権法講座」が開催されるタイミングでしたので、対応について事前に質問を入れておきました。
★弁護士に質問した内容は?
「箱根駅伝でランナーの写真を撮りました。後ろに観客が写っています。この写真をSNSにアップしたら、肖像権の侵害になりますか?」
前述の削除依頼があった95回大会の写真は、↓↓このような雰囲気のもの。
★弁護士の見解はこうだ!
「箱根駅伝はテレビ局、新聞社が主催共催するイベントで、観客の顔がメディアに流れる前提になります。沿道で観戦するということは、自分が写り込むことを承知で現地観戦されていると解します。
このような場合、沿道観戦による写真、動画への映り込みやマスコミ掲載、SNS投稿は当然想定できる「黙示の承諾」として肖像権の侵害にはなりません。
どうしても顔を特定されたくない人は、メガネやマスクなどの小物を活用しての観戦をお勧めします。」
「黙示の承諾」とは?
法律用語のひとつです。「黙示の承認」は一方が行うことに否を訴えないことです。
「暗黙の了解」とよく似ていますが、暗黙の了解はお互いにあらかじめ了解している場合です。
著作権講座受講直後に大事な部分だけTwitterに呟いたんですが、なかなかの反響でした。
皆さん、気になっているんですね!
★インスタコメント欄への返信
冒頭に書いた「私の顔が写っている。見ていて気分のいいものではない。削除してください。」への返信は、次のように書きました。
ご意見ありがとうございました。私の写真でご不快に思われたことに対してお詫びします。
ご意見をいただいたこの写真は、選手にピントが合っていて、観客たちにはピントが合っておらず、ご本人かご本人を直接知る人しか個人を特定できない程度で、プライバシーを侵害しているという認識はございません。
実際何人もの観客が写っており、私にはあなた様がどの方かも解りません。直接お話しすることもかないませんので、この場で考えをお知らせすることをお許しください。
(上記黙示の承諾を記載)
この写真を弁護士に見せたところ、法的には問題ないとの見解でした。したがって、このまま掲載を続けることに支障はないと判断しています。
一生懸命に走る選手と一生懸命に声援を送る観客がお互いを引き立てていて、とても尊い場面だと感じています。その場面に立ち会わせていただいたこと感謝しています。
こう書き込んだ直後、コメントの主様は納得された旨の意思表示をしてくださいました。
当該の写真は、2019年3月に開催されたとある会合の折にプリント&額装して持参し、出席されていたご本人様に直接お届けしました。心からの感謝の言葉をいただいたことを申し添えておきます。
★私がモザイクを掛けない理由
「そこまで持論を展開しなくても、モザイク掛ければいいじゃん!」という意見もいただきました。
公道でレースが行われる駅伝、マラソンはランナーと観客がとても近い。ランナーは観客の声援や伝えられるレース展開で自分を鼓舞し、観客はランナーのひたむきな姿に心を打たれています。
箱根駅伝 96回大会 8区 「二人が目指す先」
河東寛大 給水:三重悠晟 (國學院)
ランナーを応援する顔、スマホに感動を記録したいと思う気持ちが詰まった顔が無くしては、ロードレースの魅力を伝えきれないと考えています。ランナーも自分を応援している顔を見たら嬉しいと思います。
こうした理由で、観客の顔に加工をいれることを見送っています。
またテレビ中継のない駅伝、マラソン、ロードレースにおいて観客が写り込んでいる写真は、公開しないことにしています。
★コメントがきっかけで取り組んでいること
私が流し撮りの写真を好んで投稿する理由もここにあります。
「滴る力水」96回箱根駅伝 8区 岩見秀哉(青山学院大)
流し撮りの写真は、ある程度観客の表情も解るけれど、個人が特定できそうで特定できなさそうですね。ロードレースではこういう写真を撮るのがベストだと感じていますが、とても難しいです。日々精進です!
★「with コロナ」時代のロードレース観戦
新型コロナウイルスの影響で、スポーツ全体が活動停止していましたが、非常事態宣言も解除され、徐々にレース観戦もできるようになると思います。
新しい生活様式へのシフトチェンジが始まりました。レース観戦はマスク必須が条件になりそうですね。
となると、観客の表情が解るレース写真は、当面の間撮れそうにないですね。一日も早いコロナ終息を願ってやみません。
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