階段

ストレンジャー・ザン・パラダイス 10

朝食をとった後、キリストとザジは寺の中を案内してくれた。ザジはキリストを「父さん」としか呼ばないので本名は分からないままだ。僕はあまり仏教のことを知らないが、それでも寺の中には静かな祈りが充満しているのが感じられた。最後にほとんど蔵のような大きさの納屋に案内された。キリストは「ここは他の僧侶だって何がしまってあるのか知らないんだ。でも君には特別に見せてあげよう、内緒だぞ?」と言った。何があるって言うんだ?巨大ロボでも格納してるのか?

中にはよく分からない古そうな道具などが所狭しと並んでいるだけだった。だがこれを他の僧侶たちから隠す必要などないだろう。つまり本題はこれからということだ。

「ちょっと手伝ってくれないか?さすがに座寺でもこれは上げられない」とキリストが手招きした。そこにはどうも地下に通じているらしい、マンホールのそれに似た大きくて重そうな鉄の蓋があった。どうもずらして開けるらしい。

「君はそっちを」とキリストが言うので、僕は全力で反対側を押す。蓋は信じられないほど重く、ズルズルと靴が滑った。

やっとのことで蓋を動かすと、予想通り下へと向かって伸びる階段が現れた。キリストは立ち上がり、納屋の奥から懐中電灯を持ってきた。

「じゃあ行こうか」とキリストは階段を下りていき、ザジがそれに続く。僕も肩で息をしながらノロノロと後に付いて階段を下りて行った。

巨大ロボの方がどれだけよかったことか。

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