射撃場

ストレンジャー・ザン・パラダイス 12

ザジに連れられてさらに奥へ進むと、真っ暗闇があった。ザジがどこかのスイッチを入れたのだろう、一斉に明るくなった。その電灯に照らし出されて浮かび上がったのは紛れもない射撃場だった。

ザジが戻ってきて、「銃を撃ったことは?」と聞いた。


「あるはずないだろ、僕は狩猟免許だって持ってないんだぞ」

「利き手は?」

「右だ」

「よかった。じゃあ右手で銃を握って、左手はそれを支えるようにしてみて。脇は締めて」

「こんな感じか?」

僕は一応言われた通りの姿勢を作る。

「そう、だいたいそんな感じね。貸してみて」

ザジは僕から銃を受け取ると、グリップの下からマガジンを抜いてそれらをテーブルに置き、どこからか銃弾の入った箱を持ってきてそれをマガジンに1発ずつ詰めていった。

「この銃に使われるのは9mmパラベラム弾。NATO規格の比較的手に入れやすい種類よ。弾を込めたらマガジンを入れてスライドを引く、これで1発目が装填される。やってみて。でも絶対に引き金に指をかけたままやらないで」

僕は言われた通りにやってみる。スライドを引く時に何か手応えのようなものがあった。本当はそんなものなかったのかもしれないが、たぶんこれがいつでも人を撃てるぞという合図の感触なんだろう。

それからしばらく僕はザジの扱い方や構え方の指導を受けながらターゲットを撃ち続けた。大した運動ではないが、なぜかスッキリとした気分になった。それは小さい頃にもう読まなくなった絵本をビリビリに破いた時の感覚に少し似ていた。あの時は両親にこっぴどく怒られたが、もちろん命の危険なんてなかった。でも今は違う。しかもこれは今の僕には必要なことらしい。

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