ストレンジャー・ザン・パラダイス 11
そこはもう誰がどう見ても武器庫だった。
懐中電灯を持ったザジたちについて歩くと、鈍器から刃物、銃火器、用途さえ分からない凶悪そうな形のものに至るまで何でも揃っていた。明らかに銃刀法違反だ。僕にこれを見せてどうしようっていうんだ?確かに僕は営業マンだが、これを全部売り捌けとでも言うつもりか?
キリストはどこにあったのか、照明のスイッチを点けた。奥の方にはまだまだ武器が並んでいるようだ。
キリストは言った、「どれがいい?」
「はぁ?」と思わず僕は返す。
「だって君は要石だ。しかも動かした後のね。あいつらにとってはもう君は用済みなんだ。邪魔者だとさえ言える。タイミングを見計らい、労力を投じて要石をわざわざ動かしたんだ、君に元の場所に収まる可能性がある限りはあいつらは君の命を狙い続けるぞ」とキリストは表情ひとつ変えないまま僕に言った。
「まぁ護身用だと思いたまえよ。小学生が下げてる防犯ブザーみたいなものだ。今のところ君は丸腰だ。ひとつくらいは護身具があってもいい。何しろ命を狙われてるんだから」とキリストは穏やかに続ける。
僕はあたりを見回す。たぶん僕は何がどうなっているのか全く理解できていないだろう。だがゼンリン野郎や昨日のことを考えれば、キリストがデタラメを並べているとも思えない。僕でも扱えそうな大きさと重さで、携帯できて服の下に隠せそうなもの……
5分か10分かそれくらいだろうか、僕は武器庫の中を歩き回り、1丁の小振りな拳銃を選んで、キリストのところへ戻ってそれを見せた。
「へぇ、ワルサーP99か。悪くない選択だ。座寺、射撃場へ案内してあげなさい」
「分かった」と言い、ザジは「こっちよ」と僕を案内した。
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