ストレンジャー・ザン・パラダイス　５

僕はゼンリンの男との感動的な再会の後、細々とした日用雑貨を見て回った後に会計を済ませ、肉屋で豚バラ肉とメンチカツを買い、スーパーで自分が食べるための生鮮食品などを買い部屋に戻った。途中「あの子はどうしただろう？」と気になったが、電話ボックスはもうそこにはなかった。

ジョーンの皿にキャットフードを山盛りにしてやり買ったものを改めてみると、やはり粉末洗剤を２箱も買っていた。だから買い出しは嫌なんだ。

普段ほとんどテレビ番組は見ないが、ブルーレイやDVDで映画を見るために３２型のテレビは持っていた。何の気なしに付けてみるとちょうどワイドショーをやっていた。やたらと横柄な態度の大柄な女タレントが芸人を小突き回している。ワイドショーは基本的に退屈だ、特に日曜日のワイドショーなんて見る価値もない。チャンネルを変えていくと、ケーブルテレビでイギリス人エンジニアたちが世界各国の車をいじくり回す番組が始まった。そこで僕は目を疑った。

あのフォードＧＴ４０じゃないか！

色もナンバープレートも浜で見たあのフォードＧＴ４０そのものだった。彼らはシャーシからエンジンまで手を入れていないところはないんじゃないかというくらいいじくり回した後、最終的にＧＴ４０を燃やしてしまった。じゃあ僕が見たのはなんだ？車の幽霊か何かか？ちくしょう！昨日あの忌々しいゼンリンの男に会ってからというもの、僕の周りじゃ変なことばっかりだ！

僕はテレビを消し、冷蔵庫から氷と冷やしておいたグレンリヴェットを取り出し、乱雑にグラスに入れステアーもせずに瓶が空になるまで飲み続けた。

いつの間にか眠っていたらしい。時計は９時過ぎを指していた。明るいうちから飲み続けていたのにあたりはもうすっかり暗い。少し頭も痛む。若干後悔しながら水を飲もうと冷蔵庫を開けようとした時だった、ノックの音がした。