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ストレンジャー・ザン・パラダイス 21

それから店主は表に張り紙をして客が入ってこないようにして、僕らは暗くなるまでの短くはないが長くもないという中途半端な時間を、店主のふるまってくれた料理をつつくのとUNOで潰した。他に誰もいない薄暗い中華料理屋のテーブルで、いい歳をした男3人と少女がUNOをしているという光景はさぞかしシュールだっただろう。UNOは僕らがボケーっと昼から瓶ビールを直接胃袋に流し込んで、何箱かのガラムを灰に変換している間に、ザジが移動式弾薬庫のゴチャゴチャとした荷物の中から発掘してきたものだ。

「いつの間にこんなもの積んでたんだ?」とキリスト。

「もしもの時のため、そして今がそのもしもの時。それに一度やってみたかったの」とザジ。

「こいつらはどうか知らないけど、少なくとも俺はルールなんか知らないぞ?」と店主。

「任せて、ルールは完璧に覚えてる。ゲームには最低2人必要、今は4人いるしちょうどいいゲームができる。詳しくはやりながら説明する」

「待てよ?2人からできるなら暇な時間にでも私とできたんじゃないのか?」とキリストが疑問を呈した。

「私は父さんほど暇じゃないの。それに私が初めてやるUNOが父さんと2人でだなんて、即身仏になった方がマシよ」とザジは珍しく顔を歪め吐き捨てるように言った。

そして今、キリストはあれからゲームに必要な言葉以外を発しないまま無表情でUNOをしていた。僕らはみんながルールを理解し始めると数字カード以外が場に出される度にけっこう一喜一憂するようになっていったが、キリストは相変わらずだった。一方声こそ低いままだったが、「ウノ!」と嬉しそうに宣言するザジは初めて見た目にふさわしいような普通の女の子に見えた。このようにして僕らは夜を待った。

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