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ある焦燥の話

 ある日の昼に俺は学生食堂に行く。その時期はうれしいことにメニューに豚汁が出ていた。俺はおそらく「ここらへんが人類ができる限界ではないか?」というくらいにほぼ具しか入ってないような豚汁と可能な限り圧縮し、並盛に見えるように偽装した白米をトレイに載せて恐る恐るレジに並ぶ。その日はどうにか無事に通過できた。大盛だと見なされたら代金はほぼの倍額の400円近くになる。貧乏学生のつらいところだ。

 場合によっては食堂内の席が全て埋まっており、学生食堂のすぐ横のベンチにトレイを持って移動し、ある意味での「外食」をすることもあった。

だが俺は「外食」が大嫌いだった。


 俺が通っていたのは「市立大学」だった。簡単に言えば市内の生徒の方が俺たちのような遠隔地から進学してくるようなやつよりもかなり学費が安かった。住んでいる場所によっては自宅から通学することもそう難しくはなかった。どうしてだかは分からないが、「外食」をしているのは自宅から通学している生徒ばかりだった。

「外食」をするとなれば彼らがやかましいのだ。貧乏人のひがみでしかないが。

「お前昨日奨学金支給日だったでしょ?どうしたの?」

「いや昨日でもらった分全部パチで飲まれた」

「マジ?お前今月どうすんの?」

「とりあえず今月のパチとキャバクラは諦めるしかないわ」


 といった調子だ。飯を投げ付けて全員言葉をしゃべれなくなるまでブン ぐってやればよかったのかもしれないが、飯がもったいなくてそれすらもできなかった。

一番怖いのは帰った後の冷蔵庫だ。どうする?どうすればいい?

五木のうどんしか入ってねえ!?

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