ストレンジャー・ザン・パラダイス 18
ザジのマネーゲームを後ろから眺めている間に時間はだいぶ過ぎていた。
僕らはどうも富士山麓へ向かっているらしい。確か僕の記憶だとこの先は3つの県境が重なり合うような土地だ。
「このまま進んで大丈夫なんですか?見たところこの車にはカーナビもないみたいですけど?」
「心配ないさ。言っただろう?私には友人が多いんだ。向こうに着きさえすれば案内してくれる友人はそこそこいる」
キリストがカーステをいじり何かのCDを入れると、車内に僕の知らないカントリー・ミュージックが流れ始めた。
「お父さん何で運転の時はこれしか流さないの?」とザジはウンザリしたという声で聞いた。
「古き良きアメリカの音楽だよ?不満かい?」
「私たちこれから富士山の裾野に行こうとしてるのよ?もうちょっと雰囲気があるのがいい」
「でもお前のCDでこの車に積んであるのはグループサウンズとかばっかりじゃないか」
「いけない?」
「いけなくはないけどなぁ……」
傍から見れば普通の親子のようにしか見えない微笑ましいやり取りだが、カントリー・ミュージックが流れる日本のワゴン車が武器と弾薬を満載していると知っているととても奇妙な感じしかしなかった。
やがて移動式弾薬庫は高速道路を下りて一般道をしばらく走り、停止した。どう見ても個人経営の中華料理屋の駐車場だった。
「ここに私の友人がいるんだ」
勘弁してくれよ、寺の次は中華料理屋だなんてジャッキー・チェンかサモハン・キンポーでも出てくるのか?
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