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小さくも大いなる眠り 3

 もちろんアメリカの「チャイナウィルス」という批難に中国は非常に腹を立てていた。以前からシーレーンを越えて日本の領海まで艦艇を航行させたり哨戒機を飛ばして示威的行動はしていたが、それは別に日本の同盟国であるアメリカを刺激しようという意図はなく、アメリカとはあくまでビジネスパートナーとして接してきた。ビジネスで何かしらの不履行があったならば中国も少なからず非を認め謝罪するかもしれないが、今回の批難はビジネスには影響があったとしてももともとは関係がない。しかもWHOのトップを中国側が買収しているので、一度謝罪してしまったら二国間だけではなく他の多くの国々からの批難も不可避であるために謝罪もできない。お互いに国内にある相手国の様々な資産や会社を凍結させ、経済戦争が始まりつつあった。中国にとって幸運だったのは今アメリカがコロナ禍だけでなく国内の暴動にも手を焼いているということだった。肉を断てないなら骨を腐らせればいいのだ。中国、あるいはロシアもこの混乱に乗じて様々な形で工作を仕掛け、本来であれば単なるデモであったはずのものを過激な暴動に変えた。ワクチンが完成し普及するには1年以上はかかるだろう。実際にアメリカではコロナ禍で失業者が激増したが、富裕層はそれまでと同じ暮らしをしていたため国内の賃金水準が上がりさえした。誰もが鬱屈し不満をもっていた。マッチは導火線に近付きつつあった。

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