ウォーレン爺

ストレンジャー・ザン・パラダイス 17

そこから移動式弾薬庫は渋滞に捕まり、車はロバに乗った方がずっと早いだろうというくらい前に進まなくなった。キリストは「参ったなぁ。さすがにこの車を置いていくのは色々とマズいし」とぼやいている。ザジはスマートフォンをいじっていた。

「ゲームでもしてるのか?」と僕はザジに聞いた。

「まぁね」とザジは素っ気なく返す。後ろから画面を覗き込むとロウソクチャートが延々と並んでいた。

「株やら為替やらをやってるのか?」

「そう。誰かさんが全然稼がないもんだから、ちのローンだって半ば私が返してるようなものよ」

「いやぁ申し訳ない」とキリストは頭を掻いた

「今は資本金はどれくらいでやってるんだ?」

「だいたい500万くらい。前にトルコリラ暴落でけっこう持って行かれたけど、まだそれくらいはあったと思う」

「どこでこんなの覚えたんだ」

「私の師匠は父さんじゃない、ウォーレン・バフェットよ」とザジは画面から視線を外さずに答えた。すごい娘だ。

「座寺は本当にすごいんだ。私なんか怒られてばかりだよ」とキリストは苦笑した。

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