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後発品ある薬の自己負担引き上げへ

今日は下記の記事を参照しながら後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品について少し考えたい。

医療財政削減を目的とした後発医薬品の使用推奨はずっと以前から進められてきた。薬を出す側にも目標数値が設定されてきたし、それは年々高い値になっている。実際の制度に関しても、後発医薬品を出している割合に応じて薬局の調剤基本料算定が変わるなど、政府としてはジェネリック医薬品の推進を進めてきた。今回は病院・薬局側だけではなく、患者側としても、後発医薬品の使用について実際の負担面で影響が出るという内容だ。記事によればその案は以下の通りらしい。

厚労省の見直し案では、3割負担の人が仮に100円の後発品を選べば、これまで通り患者負担は30円、残りの70円は公的医療保険でカバーする。一方で、200円の先発品を希望した場合は公的医療保険で給付する額を減らし、自己負担を60円から引き上げる形にする。具体的な上乗せ額については今後調整する。

まあこの案自体は妥当な気はするのだが、そもそもジェネリック医薬品を何も考えずに選んでいいのかというのが根本的な問題である。ジェネリック医薬品とは元の先発医薬品が特許切れの後に発売される特許切れの薬であり、元の薬に対して「有効成分が同一であり、治療学的に同一(効果や用量・用法など)である」ものだ。なので基本的には元の医薬品と同じ様に使えるとされている。しかし、実際問題としては薬によって先発品との差異が生じるケースはままある。いくつかのポイントに分けて説明しよう。

①主成分以外の添加剤など
ジェネリック医薬品は有効成分・主成分が同一であることが条件であるが、それ以外の添加物などは自由である。そのため、それに起因した差異が生じる可能性が十分にある。基本的には薬として重要な部分は同一になる様に試験しているのだが、後述する通りの問題がある。また、明らかに差が生じるケースとして口腔内崩壊(OD)錠の味付けなどがある。OD錠は口の中で溶けるため、水なしでも服用可能な剤型であるが、それゆえに不快にならないような味付けがされている。この味の部分は主成分とは無関係なため、ジェネリック医薬品では先発品と比べて明らかに味の違うものがある。そしてこれは主観だが、先発品に比べて非常に不味いジェネリック医薬品はある。水で飲み込む分には関係無いが、味が大事な場面では気を付けてみよう。

②同等性試験の問題点
さて、上記の通り副成分が異なる場合には元の医薬品と性質が同じかどうかを比較し証明しなければならない。現在は「生物学的同等性試験」と「溶出試験」が主として課されている。生物学的同等性試験は体内に投与した後の血中濃度とその時間経過が先発品と同等であることを示す。溶出試験は薬剤が溶け出してくる性質が同等であることを示す。これらの結果から「医薬品として同等」であることを以て承認されるのだが、ここに統計学の罠が存在する。つまり、これらの試験では「有意な差が無い」ことを示すことになるのだが、統計学的に「有意な差が無い」というのは「差が無い事を証明した」ことにはならない。あくまで「差があるとは証明できない」というだけなのだ。何が言いたいかというと、実際の添付文書に記載のデータを見ると、「有意な差が無いだけで、これ明らかに動態違いますよね?」と言いたくなる薬がそれなりにあるのだ。もし自分の薬が気になる人は添付文書を見てみてほしい。

③バラつきの問題
最後はジェネリック医薬品の製造品質のバラつきに関する問題だ。ジェネリック医薬品は色々な国の企業が製造しているが、どうしても薬価が安く安価に製造しなければならないため、その製造に関する問題は多い。論外な部分だと最近話題の不適切な検査や、異なる成分の混入などがあるが、これはさすがに論ずるまでもないので省略する。それほどでなくとも、実際に製剤のバラつき(溶出速度、不純物など)を調べてみると、企業によってはロット毎のバラつきが非常に大きい場合がある。これは特に特定の国で作られた薬について多い。ジェネリック医薬品の製造品質に関する課題を解決するためには、どうしても薬価や医療経済の問題を含めて考える必要があるのだろう。

以上を踏まえて、最後に私はどうしているのかという話をさせてもらうのだが、結論から言えば私は「別に問題無いと分かっているものはジェネリック医薬品も使うが、基本的には先発品を好む」というスタイルである。多くの薬を常用している訳ではないので人によって状況は異なると思うが、少なくとも私は自分で試したり調べたりして問題無いと確信しているジェネリック医薬品は気にせず使う。もっとも、味や試験結果の様に分かりやすく差があると思えるものもあれば、個人の体質に依存して効く効かないの差が出る薬もあるので、何がOKで何がダメというのは一概に答えられない問題でもある。まずはこの様な機会に少し知識を得てみてはどうだろうか。


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