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重視するのは「地域の特性」と「関係人口の在り方」 | 白糠の挑戦事例に関して<後編>

北海道白糠町での挑戦事例にまつわるストーリーの後編です。白糠での事業を展開するにあたってイミューが大事にしている想いや、これからふるさと納税に力を入れていく自治体にも応用できる戦略について聞きました。

▼前回記事

ー前回は白糠町で事業を通して得た様々なエピソードを教えてもらいましたが、地域との事業の中で大切にしている想いを教えてください!

1つ目は、結果に対して真剣に動くことです。自分たちの活動で何をするかではなく、その活動によって何が変わるのかに焦点を当てることが重要で、それこそが私たちの強みである主体性につながります。これは、地域という環境で部外者がものごとを進める上で欠かすことのできない考え方です。

例えば私たちが行なっているふるさと納税自治体支援は、Eコマースやマーケティングの知識といった専門性が必要な業務であり、その内容を自治体の方々に背景や知識まで含めて全てを理解してもらうことは不可能です。その上で私たちの提案に賛同して、実施していただけるのは、ひとえにそこに信頼関係があるからです。そのため私たちは提案そのものでお金をいただくのではなく、その先の寄付件数や関係人口の創出への貢献度といった結果に向かって粘り強くチャレンジしていく姿勢を持たなければなりません。

2つ目は、できるだけ上流の動きを考えて活動することです。地域で事業を営む方や、まちの成り立ちには歴史があり、単純化して考えることは非常に危険です。ふるさと納税を例にとっても、自治体、返礼品を提供する事業者、中間事業者、ポータルサイト、寄付者と関わる組織が多岐に渡ります。

そのため、できるだけ現地にいる方々と話すことで土地の空気を肌で感じ、まちの歴史的な成り立ちを学び、それぞれの事業者さんの強みや傾向、課題を理解する。さらに、こういった活動の中で部分最適化の考え方ではなく、それらの上流である街の方向性に関して提案をしていくことが必要。

3つ目は、上記の2つの考えを持った上でミスを恐れずチャレンジしまくることです。この話をする上で地方の特徴を1つ紹介すると、地方には「ミスをしにくい文化」みたいなものがあります。地方での仕事は建築家のそれに似ていて、自分が建てた家を見に来てくれた人から次の案件がもらえるように、レコードを積み上げてそれ自体が新しい仕事を産みだす環境になっているとよく感じます。

そのような環境で1度ミスをしてしまうと、周りから「あいつと付き合うと損をする」というバイアスがかかってしまい、次のチャレンジに支障をきたす可能性があるんです。1つのミスが後を引くためミスをしにくいですし、仮にミスが発生した場合に適切な対応が出来ないと、信頼を失う羽目になります。特に自治体の担当者はこういった環境の中でチャレンジしにくくなっている傾向が強いです。

だからこそ私たちみたいなよそ者が代わりにチャレンジしまくって、失敗してあげるような事が重要です。その上で、「ミスの原因がこうだったから、次はこう直します」みたいな改善を自治体担当者に代わって回すことのできる伴走チームこそが提供価値だと思っています。

産品開発におけるレシピ検討の風景

ーありがとうございます。少し話は変わりますが、自治体ごとに課題や長所は異なると認識しています。白糠町での事業を選定するにあたり、どのように町の分析を行ったのですか?

私たちが自治体の分析を行うときに重視することは、地域の特性と関係人口の在り方の2点です。

1つ目の地域の特性とは、その地域の歴史的な成り立ちと、これから向かいたいまちの方向性のことです。分析の際に特に参考になるのが、地域のトップである首長のお考えや発信されているメッセージです。その自治体の産業構造や向かいたい方向性に沿わない経済活動は、補助金などの町の支援も取り付けにくいですし、そこから外れた事業を展開しても地域から歓迎されません。

白糠町の例で言えば、「一次産業の再興と振興」「町民の健康づくり」「教育」を3本柱として、そこに「環境」の要素が最近追加されました。この一次産業の要素は、白糠が元々炭鉱の町から国によるエネルギー政策の転換と採掘不振が原因で林業・酪農・水産といった一次産業に基幹産業をシフトした歴史的・文化的な背景に紐づいています。つまり、白糠町では一次産業を強める産業活動が求められているということになります。

もう1つの関係人口についてですが、ふるさと納税のマーケティング支援をきっかけに関係人口とのコミュニケーションを行う私たちにとって、寄付者の方々を可視化することは、町の主要産業と結びつけることや町に来る人を増やすために欠かせない視点です。

白糠町の場合は、一次産業による豊富な地域資源だけでなく、自治体の寄付者さんへの向き合い方も素晴らしく、それが高い連続寄付率にも表れていました。また、サーモンやいくらといったカテゴリでふるさと納税を代表する存在となっており、単価として食品カテゴリに多い3万円以下のものが大変多く選ばれています。

ー自治体から見た町の見方と、そこにいるお客さんという2つの見方から分析を行うのですね。

はい。例えば観光業が主産業の自治体では、首長が「旅行の収益」と「豊かな自然」の2つを発信していて、その関係人口は旅行系の10万円近い返礼品を選ぶ方々が多いため、旅行者をターゲットにした高単価のビジネスを展開する必要があります。

本当はもっと詳細な分析と現地での活動を経て事業は決定しますが、白糠町での事業を決める際も、概ねこの2点を分析してから戦略を策定し、地元食材のブランド化を目的としたマーケテイング活動や事業展開を行ってきました。

◇ ◇ ◇

ー白糠町の事例を知って、自分の自治体のふるさと納税対策でも応用したいと感じる担当者の方も多いのではないかと思います。そのような方々にお伝えできるような、再現性のある考え方や戦略を教えてください!

白糠町はもちろん、多くの自治体にお話しする内容なのですが、例えば「ふるさと納税 肉」といったキーワードで検索を行うと8万点を超える商品がヒットします。これだけ多くの商品があると、生活者は自力で自分に合ったお肉を見つけることは困難なため、一度美味しい商品に出会ったらそれをリピートする傾向にあるんです。

また、イミューで取り扱う「ふるさとリピートマップ」という分析ツールを用いた調査では、2年連続で同じ返礼品に寄付をした方に対して、約60%の方が翌年も寄付をしていることが分かっています。同様に1年目→2年目では30%、1年目に寄付をした後に1年空けて3年目に寄付を方で10%の方が寄付を継続していて、それだけふるさと納税ではリピーターの方に対してのコミュニケーションが重要です。さらに、複数年継続して寄付している関係人口の方々は、自治体への認知度が高いことも分かりました。

ー確かに、毎年同じ返礼品を楽しみにしていたら、その産地である自治体にも興味が湧きますね。

そうなんです。なのでイミューではまず既にいる寄付者の方々に対して、いただいた寄付の使い道といった情報をダイレクトメッセージなどでお伝えすることで、リピート率の向上を実施します。また本来ふるさと納税の制度は、人口に比例して都市部に集中してしまう資本の再分配と適切な活用を目的としているので、寄付の最大化に捉われない運営という意味でも非常に大きな価値があります。

ー最後に、今後どのような自治体のサポートをしていきたいか、読者の方へのコメントをお願いします。

まず1つ目が、もうすぐキーマンが変わるタイミングの自治体です。先にもお伝えした通り、ノウハウの蓄積が不可欠なふるさと納税業務において、私たちのような外部の企業はコンサルティングだけでなく、クラウドサービスのようにノウハウを貯めることが可能です。

提案に対してではなく、まちの変化や活動の結果に対してお金をいただくイミューの仕事は、お付き合いいただく自治体にも多大な工数を頂戴してしまいます。それでも私たちは、これまで地域のためにふるさと納税関連業務に携わってきたキーマンの方と変わらない熱量で、パートナーとして信頼いただける取り組みを行っていきます。

もう1つが、世界に発信するこだわりや想いを持った自治体です。イミュ―の哲学に関する記事でもご説明しましたが、今の会社は事例を創っていくフェーズにあります。他の自治体にも応用できるような事例を創っていくためには、私たちが磨く前に自治体そのものが輝いている必要があると考えています。

なので、もしこれから世界に向けて発信していきたいコンテクストを持っていて、そこに向けて情熱を燃やす自治体は、産業分布に関係なく大歓迎です。ぜひご一緒に、地域の魅力を世界に届けるために走らせてください。

一方で、深く狭く地域に入り込んで業務に取り組むことを重視しているため、現在お取組みしている10自治体様(2024年5月現在)から広げることができません。途中でご紹介した、ふるさとリピートマップのレポーティングは新規のお取り組みを募集中ですので、そちらからお取引を検討いただけますと幸いです。


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株式会社イミューでは「地域に根を張り、日本を興す」というコンセプトのもと、地域資源のブランド化による産業創出を行っています。事業に関するご相談や取材、一緒に働きたいと思った方はHPからお気軽にお問い合わせください!

▼株式会社イミューHP


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