見出し画像

メンタープログラムの可能性とは?世界の事例から学ぼう!

はじめまして。
immi labインターンのわかなです!

フィンランドに一年留学していた時から移民との共存社会について興味を持ち始め、代表のミホさんの講演会をきっかけに2024年1月からimmi labに関わっています。
私の専攻は化学工学で全く異なりますが、好奇心旺盛かつリサーチが好きなのでimmi labでも楽しく活動しています!

さて、今回の記事ではimmi labのメイン事業プロジェクトポンテで軸となっている「メンタープログラム」の価値を改めて言語化しています。
世界中のメンタープログラムの事例を12団体分析し、そのうち気になった2団体にはインタビューを実施しました。この記事を読み終える頃には、メンタープログラムという手法の可能性を感じてもらえれば嬉しいです😊



🤔そもそもメンタープログラムとは?

今回リサーチ対象とした「メンタープログラム」は、1対1で若者(ユース)と大人(メンター)がペアになり、何らかの目的のために中長期で時をともに過ごすプログラム全般です。「バディプログラム」と呼ばれることもあります。
発祥は1904年アメリカのニューヨーク。世界初の団体がBig Brothers Big Sistersです。

現在では、団体によってプログラムも多様化しています。ペアで時間さえ過ごせば何をしてもいいよという団体もあれば、ペアで解決すべき何かしらの課題を与えている団体もあります。期間も一年未満のものから10年以上のものまで様々です。

immi labが行うプロジェクトポンテのペア交流の様子(コラージュ)

❤️‍🔥今回のリサーチでの結論

ここからが本題です。
日本ではあまり知られていないものの、世界では比較的普及しているメンタープログラムの事例のうち、オンラインで英語または日本語の情報を発見できた12団体の特徴を分析しました。次の3点が私たちなりの結論です。


結論その①:国や地域によってメンタープログラムの実施目的と対象に特徴がある
発祥地のアメリカや隣国カナダでは、貧困問題や未だ続くアフリカ系の人々への人種差別を背景に、社会格差の是正を目的としたメンタープログラムが多く行われています。これらのプログラムでのペアは、とりあえず時間を共に過ごすことが目的なのが特徴です。

対してヨーロッパでは、移民難民への実務的な生活支援のメンタープログラムが多くみられました。これらのプログラムでは、ユースが就職などの目標を達成するための「支援」の色が強いようにみられました。
アフリカでは、植民地化されていた歴史を背景に、将来有望な人材の育成や自立に力を入れているのが特徴的でした。高等教育への進学やリーダーシップの育成を目的としたプログラムです。

アジアの事例は少なく、大きな特徴はみられませんでした。


結論その②:1スタッフあたりのペア数は100を超えない範囲で、大きく差がある。
メンタープログラムの運営には、若者とメンターをマッチングしたり、マッチング後の様子を見守るスタッフが必要です。1スタッフで何ペアまでなら見れるのかの数の限界を知りたかったのですが、ペアへの干渉度の深さにも大きく関係していました。

最大数はBig Brothers Big Sisters のカリフォルニア支部で、1スタッフあたり70ペアでした。それぞれのペアと最低月2回の電話でやりとりと月1回の訪問を行うとのことで、確認専門のスタッフがいるそうです。最小数は、南アフリカのInfinite Famillyで、1スタッフあたり15ペア以下にしているかわり、ペアで行うすべての会話にスタッフも同席しているそうです。


結論その③:期限付きのプログラムでも、半永久的なメリットが大きくわけて4つある。
困っている人を助ける他の支援と同じように見えるかもしれませんが、メンタープログラムを通して若者とメンターは人間同士の関係を築きます。たとえ、その関係が一時的であっても、効果はユースの内面に働きかけることで、半永久的に影響しており、特に以下のようなメリットが共通で見られました。

1. 社会的孤立からの予防になる
家庭でも学校でもないコミュニティに属することは、若者にとって新たな心の拠り所、居場所となります。また、必要な公的サポートを受けられるようメンターが手続き面を助けることでユースと公社会と繋がりが強くなります。

2. 未来を明るく捉えられるようになる/レジリエンスがつく
自暴自棄になりにくくなり未来を明るく捉えることができるようになります。失敗からの立ち直り方や自分の行動についてメンターと関わりアドバイスをもらうことが前向きさにつながります。

3. 自己肯定感が上がり、感情をコントロールする力がつく
メンターに無条件に存在を受け入れてもらえ、関わりあう中で、自己肯定感の向上や感情をコントロールする能力の向上が見られます。また鬱症状のあったユースにおいて症状が緩和されたというケースも多く見られました。

4. 教育水準と就職率が上がる
ユースが親戚中で大学進学者がいない、つまりロールモデルがいない中、メンターと関わり視野を広げ一人目の大学進学者となるケースも少なくありません。Big Brothers Big Sistersの報告書によるとプログラム参加者は平均に比べて大学進学率が50%、就職率は15%ほど高いと出ています。(引用元

特に、レジリエンスと自己肯定感の向上は好循環の原点のように思えます。自分に自信を持つことが新たな挑戦に繋がり、小さな成功体験を通して社会的に繋がるための行動を起こしていけるからです。


immi labが行うプロジェクトポンテのペア交流の様子


🌎世界中のメンタープログラム12事例まとめ

ここからは具体的に調べた12団体について紹介します!それぞれの団体について、メンタープログラムの支援対象別に分けて簡単に紹介していきます!

今回調査したプログラムの分布図

🟠若者全般向け🟠
特定の所属など縛りがなく全ての若者向けのプログラムを提供している団体。

  • Big Brothers Big Sisters (アメリカ🇺🇸)

    • 対象:6〜18歳のこどもと若者。アメリカ全州と他22カ国の支部で展開。

    • 時間の過ごし方はペアに委ねられており、担当者が毎月モニタリングしている。メンターの採用や研修にも力を入れている。

  • LeadMinds Africa (ウガンダ🇺🇬)

    • ウガンダの高校約10校で展開。

    • リーダーシップや起業家などの短期プログラムも実施している。

  • Asian Environmental Youth Network (アジア全土)

    • 14歳以上の環境問題に興味のある若者が対象。

    • 短期プログラムを通したキャリアサポートを中心にしている。


🟣孤立リスクのある若者向け🟣
一人親家庭、児童養護施設出身者、きょうだい児、学校に行かない選択をする若者を対象としている団体。

  • StepStones for Youth (カナダ🇨🇦)

    • 15〜24歳の児童養護施設出身者が対象。

    • 居住支援や就労支援もおこなう。

  • Vitalismaatjes (オランダ🇳🇱)

    • 5〜18歳のリスクを抱えた子どもが対象。

    • メンターからのフィードバックフォームを通してモニタリングしている。

  • We are Buddies (日本🇯🇵)

    • 5-18歳の心理的孤立リスクのある子どもが対象。

    • 東京都、群馬県、千葉県の3県に拠点を置き活動している。


🟢特定の人種向け🟢
ハイリスクにある特定の人種を対象としている団体。

  • Africa Centre (カナダ🇨🇦)

    • 12〜30歳のアフリカルーツをもつ人が対象。

    • 黒人の地域参画や差別撤廃の活動もおこなう。

  • Infinite Family (南アフリカ🇿🇦)

    • 南アフリカの10代の若者を対象としたビデオメンタリング。メンターは世界各国から募集。

    • 地域にコンピューターラボを作り、そこにくる若者がプログラムに参加。独自の基準の成績表出力などインパクトの可視化に注力。

  • The Collaboration for Research Excellence in Africa (アフリカ全土)

    • 世界中のアフリカルーツを持つ学生や若手研究者が対象。

    • オンラインメンターは同じ分野の先輩でキャリア設計のサポートなどをおこなう。


🔴難民や移民向け🔴
難民や移民を含む外国ルーツの人々を対象にしている団体。

  • Bee4change (ドイツ🇩🇪)

    • ハンブルグを拠点に難民家族や個人が対象。

    • ドイツ社会に難民が馴染めるよう居住や就職支援をおこなう。

  • Hope for the Young (イギリス🇬🇧)

    • ロンドンを拠点に16-25歳の難民の若者が対象。

    • 6ヶ月の短期プログラムを通して、公的支援とつなげ、英語力向上の支援をおこなう。

  • 公益社団法人トレイディングケア (日本🇯🇵)

    • 愛知県で暮らす技能実習生が対象。

    • もともとは企業と実習生のマッチングサポートから始まり、1対1より1対地域で支えられる形を目指している。


🔍12事例相対比較とプロジェクトポンテの位置付け

これら12団体のプログラムを二軸で分析し、比較した結果が以下の図です。

1つ目の軸:プログラム期間
短期】 一年未満又はプログラムの参加期間が決まっている
(中間) 一年以上は続ける約束がなされている
【長期】 年齢上限に達するまで半永久的である

2つ目の軸:交流目的
【自由型】 団体側がペアに交流活動の内容を完全に委ねている
(中間)  ペアですることが推奨されるアクティビティがある
【課題型】 ペアで到達しなければならない課題や目標がある


immi labがおこなっているプロジェクトポンテは、プログラム期間でいうと「長期」、交流目的でいうと「中間」にあたると考えています。

若者がプロジェクトポンテに参加するきっかけとなるのは、たとえば「大学に進学したい」や「もっと稼ぎたい」などの具体的な課題です。
ですが、実際に参加してみたユースに続けている理由を聞くと、「自信がついた」「視野が広がった」などが上がります。
移民の若者のこれからを考えると、たとえ一つの課題が解決できても、次々に違う壁があらわれます。それらを乗り越える力「レジリエンス」をつけてほしいと考え、「きっかけは課題解決型、継続方法は自由型」という形を目指しています。

immi labが運営するプロジェクトポンテで1月末に開催されたイベントの様子
学生もメンターもスタッフもみんな混じって交流しました!


👩🏻‍🏫団体運営側のリアルな声を取材しました!

運営面からの見解を詳しく知りたかったため、2団体と実際にお話させていただきました。米国のBig Brothers Big Sistersのカルフォルニア支部と、南アフリカのInfinite Familyにご協力いただきました。


Big Brothers Big Sisters of Orange County & the Island Empire

カリフォルニア支部のプログラムディレクターにお話を伺いました。
インタビューを通して心に残った言葉はcommunication(対話)。

「メンタープログラムを通してユースを支援できているのはメンターのおかげであることを心に留めなければならない。
メンター自身が、選考を含むプログラムの過程で孤独に感じないために、プラットフォームに工夫を加え、メンターとのコミュニケーションを大切にしている。」

Big Brothers Big Sisters of Orange County & the Island Empireプログラムマネージャーの言葉

最近では1-1のペアが複数集まるようなイベントを開催し、メンター同士が体験を共有できる場所にもなっていて手応えを感じているとのことでした。

大規模なプログラムのため、マッチングに何か秘密があるのではと思ったのですが、地道に性格などを参考に手作業で行っているそうです。最重視するのは興味や好きなことですが、生育環境や経験なども着目すべき点だとおっしゃいました。例えば、一人親家庭のユースには一人親家庭で育ったメンターをマッチングさせることが多いそうです。

意外だったのが、近年ボランティア減少に苦労しているという点でした。知名度がかなり高い団体なのですが、特にコロナ禍以降はボランティア文化の衰退を感じているそうです。SNSやメディアなど広報にも尽力してきたそうですが、社会的な激しい個人主義化が背景にあり難しいと頭を悩ませているようでした。

Big Brother Big Sisters のペアの様子(https://www.latimes.com/socal/daily-pilot/entertainment/story/2021-01-21/big-brothers-big-sisters-of-orange-county-seek-mentors


Infinite Family

団体設立当初からのスタッフと、以前はメンティーとして参加し今は運営スタッフになられた方のお二人にインタビューをしました!

”英語を学ぶことができる、毎週必ずメンターと交流できる、ということを期待してプログラムに参加していた。でもあの時学んだのは実質的なスキルだけではなく、コミュニケーションや責任感など生きていくのに大切なことだったと大人になった今思うし、本当に感謝している。"

Infinite Familyの現スタッフ(元メンティー)の言葉

過去のメンティーが今は団体運営側として私たちのインタビューに答えてくださっている様子が、メンタープログラムの効果そのものだなあと感じさせられました。
多くの子どもたちにとってプログラムに参加するきっかけは、プログラムに参加している友達、彼女のような卒業生への憧れだそうです。

また、一度辞めてしまったり連絡が途絶えてしまったりした子が数ヶ月後、数年後に、やっぱりプログラムに参加したい、メンターを紹介してほしい、と連絡をとってくるケースも少なくないそうで、粘り強くアプローチをし続けていくことが大切だとおっしゃっていました。
メンタープログラムを通して南アフリカの10代の子たちが自立する力をつけることを目的に、確立されたシステムが構築されながらも、人間的な面を一切欠かしていない、というのがインタビューを通して感じた団体の印象でした。課題はやはりメンター不足とのことでした。


大変貴重で興味深いお話を聞くことができたので、Infinite Familyのインタビューについては別記事で投稿予定です。よければご一読ください。

Infinite Family のペア交流の様子(https://www.infinitefamily.org/video-mentoring/ )


💭今回調べてみての振り返り

私は半年ほど前まで、「誰かを支援する方法」というと、募金や物資の支援、子ども食堂やフリースクールなどの直接的な支援しか知りませんでした。しかし、そのような目に見えやすい支援ではどこか不十分な気がしていて、もっと包括的で根本的な自己の部分にアプローチできる支援はないのかなーと思っていたので、immi labを通してメンタープログラムを知った時は大変腑に落ちたのを覚えています。

私自身、自己肯定感は非常に低く、成績がよくない劣等感で悩んだことがあり、特にコロナ禍でさらにひどくなった気がします。その日一番忘れてはいけないものを忘れるというような小さなミスであるだけで自分はダメ人間だと思ってしまい、結局周りのように上手くできないんだと負のループに陥ることもあります。自力で改善する限界を感じるので、中高生の間に自分もメンタープログラムに参加したかったなと思います。

今回、世界中のメンタープログラムを調べてみて、一方通行の支援プログラムとは違った「人との繋がり」を創出するメンタープログラムに本質を感じました。同時に、どの団体もメンター不足と運営コストの課題を抱えていることが見えました。今後 immi labがこの課題とどう向き合い、「移民の声が消されない社会を」作っていくのか、見守ってくださると嬉しいです。是非フォローや応援よろしくお願いします!

immi labには私のような高校生(元)インターンも含め、いろんな人が関わっています。気になった方は気軽にご連絡ください!

団体連絡先: info@immilab.org 
Instagram: https://www.instagram.com/immilab_jp/



📚参考資料🔗

#メンタープログラム #移民ルーツ #レジリエンス #事例まとめ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?