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わさび冷麺

旅先でたまたま食べて美味かったものは、前もって調べていって食べたものよりも記憶に残るような気がする。

しばらく前に一人で東北に行ったときに、用があって新花巻という駅に立ち寄った。新幹線が止まるためだけの駅なので、駅を降りても都市らしきものは一切ない。

用事を済ませ、誰もいない道をトボトボ歩いていたら、古びた雰囲気の定食屋を見つけた。

店に入りメニューを見ると、「わさび冷麺」の文字。前日に盛岡の有名な店で冷麺を食べていたが、そんなものはなかった。店内の看板曰く花巻市の新名物を謳っているようだ。

せっかくなので頼んでみると、淡白な冷麺のスープの上にレモンの輪切りが浮かんでいて、その上に抹茶ソフトのように絞られた山盛りのわさびが乗っている。

正直、普通の冷麺を頼んでおけばよかったな、と思っていたが、いざスープにわさびを溶かして食べてみると、これがまあ美味い。

冷製のスープにキムチでは出せない清涼感がプラスされて、全く違う食べ物になっている。

帰りの新幹線でわさび冷麺について調べてみたが、その店の情報しか出てこない。全然名物じゃねえじゃん。美味かったけど。

というわけで、記憶にある限りでその店の味を再現してみようと思う。

このわさび、チューブだけどめっちゃ美味いです。200円くらい。

吉池で盛岡冷麺の生麺のセットと、ちょっと良いわさびを買った。
本当は本わさびを一本買ってきて家ですり下ろそうと思っていたが、1本1000円もしたのでやめた。

可愛い顔が印刷されたキムチの素?がついていたが今回これは使わない。

ゆで卵、キュウリ、ネギを入れて、酢とレモン汁を2周くらいかける。

社会への憎しみを込めて

そして、罰ゲームで使うくらいの量のわさびを入れる。スープがわさびで濁るくらい。

白髪ネギの切り方、初めて知った。

爽やかな香りが鼻に抜ける。美味い。唐辛子の香りがしない分、和のテイストが強くなる。

わさびのパンチでスープの味がわかりにくくなるが、店で食べたものの方が明らかにスープが美味かった気はする。再現度でいえば70%くらい。

朝鮮半島から輸入された冷麺が、このわさび冷麺で終ぞ完全に日本の味になったという感じだ。喫茶店のナポリタンがイタリア料理から枝分かれした別の料理になっているのに近い。日本人はこの手のアレンジ料理というか、ローカライズが得意なんだろうな。

この味のためだけにまた新花巻駅まで行きたくなった。田んぼしか無かったけど。

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