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SXSW2022出展•スマートテキスタイルプロジェクトについてZOZO NEXTとのインタビューを公開!

今春、世界最大級のテクノロジーと音楽・映画の祭典「SXSW 2022」CREATIVE INDUSTRIES EXPO内最大ブースとして会場を盛り上げた株式会社ZOZO NEXT。イメージソースでは、同社と東京大学、細尾で3者共同研究をおこなうスマートテキスタイルのひとつを、SXSW出展までプロジェクトメンバーとしてお手伝いさせていただきました。その詳細についてZOZO NEXTから、SXSWで全ブースのディレクションをされた田島康太郎さん、研究者として開発に取り組む中丸啓さんをお迎えし、イメージソースメンバーと語っていただきました。

<インタビューメンバー>
田島康太郎|Koutarou Tajima
株式会社ZOZO NEXT MATRIX本部 本部長
中丸啓|Satoshi Nakamaru
株式会社ZOZO NEXT Research Scientist
佐々木伽耶人|Kayato Sasaki
ディレクター(イメージソース)
高野幹|Motoki Takano
デベロッパー(イメージソース)
吉井正宣|Masanori Yoshii
テクニカルディレクター(イメージソース)

▶IMGSRC WORKS|ZOZO NEXT SXSW2022

美を追求したファッションテックプロジェクト

田島:僕らZOZO NEXTは、伝統工芸と先端テクノロジーを組み合わせたスマートテキスタイルについて、メディアアート分野の第一人者である東京大学の筧康明研究室と、京都にある西陣織の老舗•細尾との3者共同研究を2020年2月からスタートしました。その第一弾の成果として “Ambient Weaving ── 環境と織物” と題した展示を2021年4月~9月に京都で開催、そこで発表されたプロトタイプのうちのひとつである『Woven Glow』というテキスタイルをイメージソースさんにプロジェクトメンバーとして参加いただきながらアップデートし、SXSW2022における展示作品のひとつとして発表しました。『Woven Glow』は、細い紐状の有機ELを織り込んだ発光するテキスタイル。布や意匠、そしてファッションの見せ方についてどう変えられるか技術の力でチャレンジするアウトプットとして、その他2つのスマートテキスタイル作品と共に展示、来場されたみなさんにご覧いただきました。テクノロジーでファッション領域の課題解決を目指し研究開発している弊社において、トピックのひとつがこのスマートテキスタイルの普及。素材や機能のみならず、ファッションが根源的にもつ “美” を上位概念として、それに機能を付加した、革新的なテキスタイル開発に挑んでいます。ZOZOグループは “世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。” という理念のもと、経営戦略に “MORE FASHION×FASHION TECH” を掲げており、美しさを身に纏う楽しさ、豊かさを生み出すファッションに、テクノロジーを用いて社会に寄与できればと考えています。

▶ZOZO NEXT|SXSW2022

SXSWで『Woven Glow』がアップデート

中丸:『Woven Glow』が京都展示からアップデートされた点は大きく22つありまして、発光する色が赤単色だったのをRGBの3色で発光できるようにしたこと、そして長さを3倍以上にしたことです。アップデート前は幅1.5mでしたが、今回は4.8m。1.2mの基盤を4枚繋げることで、幅5m近い大規模なテキスタイルを作成しました。有機EL素材が進化し織り込める数が増えたこともあり、結果として372本と前回の4倍以上の数を制御したことになり、イメージソースさんには、その大規模な制御が可能な基盤制作からインストールまで、表現方法を含んだ提案と実装についてご協力いただきました。

田島:今回のアップデートでは、応用や生産といったビジネスに繋がるよう、スケールを大きく見せることが最重要課題でした。ご覧になられた方が驚くようなスケール感と、多色展開で発光しアニメーションが映し出される西陣織りの表情から、このテキスタイルの可能性を感じていただけるよう、プロジェクトに取り組んでまいりました。SXSWに訪れるクリエイターやブランド、企業に響くような見せ方をするため、インスタレーションに関して実績のあるイメージソースさんと今回ご一緒させていただきました。

プロジェクトに貢献できたイメージソースの特徴

中丸:制作を依頼した経緯としては、R&D活動の展覧会「IMG SRC PROTOTYPES」がきっかけです。今回SXSWの実制作をご担当いただいた高野さんが液晶の透過度を制御する『KAXEL』というプロダクトを発表していて、多チャンネルにもうまく対応できていたことや、制御するものが複雑であっても細いグリッド構成の中で配線を見せない美しいプロダクトとして完成させていたことから、きっと我々の取り組む新しいハードウェアの開発に関しても、そのご経験を生かしていただけるのかなと思いました。またSXSW出展プロジェクトの前に “Ambient Weaving ── 環境と織物” のバーチャル展示会サイト制作も御社にご担当いただいたのですが、その際に、言われたことをそのまま請け負うのではなく、コンセプトをよりよくみせるために予想を上回った提案をしていただくなど、その仕事ぶりや姿勢にも共感するものがありまして。今回も私たちがやろうとしている価値観や世界観を理解したうえでプロジェクトに参加いただけるだろうという確信をもてたのも大きなポイントでした。

田島:実際、そこまでやったら大変なのでは?とこちらが心配してしまう程(笑)、様々な提案と試作をしてくださったおかげで、プロジェクトとしてよりよい選択と結果が叶えられたと思っています。また、何らかの制約があったとしても安心できる調整力のあるプロダクションだなとも感じていました。コミュニケーションもはじめの段階から温度感を捉えていて。

中丸:対応も手厚く、コミュニケーションを密に取ってくださいましたよね。検証や実制作だけでなく、スケジュールもドロップしないように気を配っていただいたなと。

佐々木:スケジュールはタイトでしたが、R&Dの取り組みやアジャイル開発的事例に日頃から携わることが多いため、その経験を活かせたのかなと思います。また、プロジェクト始動時点でお話をいただけたので、はじめの段階で試作や検証、実装のタイミングやデッドラインを含めた進行の提案ができましたし、初期段階にはよりスピーディーなコミュニケーションとアウトプットを心掛け、毎週の定例で懸念事項を解消し更新し続けていきました。

高野:初動として、企画段階から作業の細分化と工数の予測、リスクの洗い出しができたのは良かったですね。参加したメンバーのみなさんも私たちも未知の部分が多かったプロジェクトでしたので、実際に手を動かして結果を細かく提示することは意識しておこないました。

田島:進行上いくつかあった難しいポイントを乗り越えてくれましたね。パーツがタイムリーに入手できない可能性があったり、会場の施工プランも直前でないとわからなかったり、仕様がFIXできない都合上作業がスタートできなかったり、現場で他のプログラムとの接合部をカバーする必要があったりと…。不確実性をうまく吸収してマネージメントしていただいたように思います。

高野:海外の展示ということで、インストールにはより注意を払いました。設営や撤収に与えられた時間がタイトでしたので、機材の構成をユニット化したり、組み立て手順を単純化するなど、現地での工数を最小限に抑えられるようにしました。もちろん現地で安定稼働するように設計、制作することは前提として、輸送の遅延や、輸送中や展示中に破損してしまった際にも迅速に対応できるよう、パーツ交換が容易に可能な設計や、現地で手に入りづらいパーツは予め多めに準備しておくなど、様々なリスクを想定しながらトラブルに対応できるよう動きました。

SXSW出展で得られたもの

高野:制作物の細かい見た目にもこだわり、現地で嬉しいお言葉もいただけました。

中丸:結構異彩を放つブースでしたよね。イノベーションの祭典で、ある種美術館のアートのような佇まいで。プロダクトの説明も最小限で、美しいものとひと目見てわかる。日本の和の美しさとテクノロジーの掛け合わせは海外の方に大変好評でしたね。具体的には舞台衣装や建築などに取り入れてはどうかといったお声もいただき、このテキスタイルがひとつのメディアとして捉えられているように感じました。質感を高く仕上げてきたからこそ得られた、フィードバックやビジネスコンタクトだったのではないでしょうか。作品の世界観を保つため、ビスひとつや基盤の色、そういった細かいところまでケアしてデザインいただいた結果だと思います。

田島:展示会終了後も、 幅広い領域の方々からお声掛けをいただくなど、ポジティブな動きが見られています。このプロジェクトが見せていくべき世界観をグローバルな場で表現できてよかったです。

吉井:インスタレーション制作において如何に体験価値を高めるかというのは、イメージソースに期待されていることであり、これまでもこれからもコミットしていきたいことと思っています。

制作プロダクションに期待されること

佐々木:デザインやエンジニアリングの視点を企業が取り入れようとしている潮流もありますが、プロダクションとの関係性について、考えをお聞かせいただけますでしょうか。

田島:共作というか、一緒につくっていくというスタンスですね。今回も単純に業務を依頼するのではなく、イメージソースさんがお持ちの経験や知識を一緒に混ぜてプロジェクトをつくっていきましょうという思いがはじめからありました。様々なプロダクションさんとの関係性を今後もつくっていきたいと思っていますが、まずはビジョンに共感してもらうこと、これがスタート。弊社に限らず、企業のプロジェクトは端的に業務を切り分けておこなえるものではなく益々複雑化しているので、同じ想いで、対等な関係でやっていくことは大切で、世の中的にも加速していくことなのではと思います。個人的な見解としては、デザインプロダクションは活躍の幅が広がっていくのかなと。

中丸:制作会社さんって常にモノを作りつづけているので、スキルレベルが高く、同時に一人ひとりが考えて創っていくクリエイティブカルチャーがある。活躍の場はインスタレーション制作やWeb制作といったプロダクトに留まらず、将来的にはモノや技術の社会との繋がりを中長期的にプランニング・プロモーションできるポテンシャルがあるので、そういった役割のロールが広がっていく気がしています。

田島:それと個人の技術的な素養だけでなく、その人の経験に現れる個性や考えも大切だと思います。

吉井:弊社としても、今回のプロジェクトのように、提案できる余地があるなかで一緒につくっていくというのが理想ですし、素直にやっていて楽しいです。そういった案件にパートナーとして選ばれるよう、このような機会で実績を残し、社会のなかで信頼関係を築いていくことは、やりたいことであり、力を入れていくべきと取り組んでいます。今後も実験的なプロジェクトや初期段階からご一緒できるように切磋琢磨していきたいと思っています。


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