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チャンピオンロード参戦記 ~たいしたことないけど新人にとっては・・・

7の前には6や5があり、4はまたちょっと別ですが、すぐ後ろには当たり前ですが8や9があります。それらが特別かというと決して特別ではないので、7もやっぱり特別ではありません。

でもデビュー直後の新人にとって、チャンピオンロード(オータムチャンピオンシップシリーズ)7位という結果は、なんでもないものではありません。

ところで基本的に私は勝ちきれない奴です。
協会に入会してデビュー戦の雀竜位戦F級予選は32122。
リーグ戦の第1節は3212。
白中ぽんされていて發切った日

ラスがないのはいいですが、数字の並びを見ただけで、勝ちきれない感が漂ってます。
実際に耐える局が多く、なんとか2着に踏みとどまる展開や、オーラスの競り負けも多い印象でした。最後の2が違うだけで2日とも同じ数字の並びで、スロースターターぶりも気になります。

(1dayの大会でスロースターターでは大会が終わってしまう)

200pとか300pを叩くには大トップがないと厳しいが、取れるイメージが皆無。
必死であがいて頑張ってまた3212とかで、勝ちきれない奴になるか。
いっそイチかバチか、強引に攻めに攻めてみようか。優勝しなくちゃ意味がないんだから玉砕覚悟もいいんじゃないか(上手くいくイメージゼロ。玉砕イメージくっきり)

そんなことを考えながら前日の夜、寝ました。
夢うつつの中で、
(落ち着いて考えれば大トップ取らなくても1111なら少なくとも+200。1113だと+150くらいか。それならあり得なくもないんじゃないか)

半分夢の中の無責任さで、なんだか1311で行けるような気分になってきました。プロテスト前にフリーに行った最後の時が1311で、

「今日は勝った。1311。大会ならもしかすると優勝しちゃうレベルだよ」

と家に帰って息子相手に自慢しました。そのイメージもあり、1311の夢を見ながら当日を迎えました。

夢を信じていたわけではなく、大会中に思い出すこともありませんでしたが、4回戦終わって本当に1311。+174.8でなんとこの時点3位です。

でき過ぎです。かなりツイてました。1回戦のトイトイ・役2・ドラ2のハネマンツモを皮切りに、よくいい手が入りました。ダブリー一発ツモもありました。

3回戦ではダブ南・ドラ1の3900出上がりでは届かないが、1000・2000ツモなら逆転で、どうしようかと思っていたら、2枚目の南に反応できず、見逃してしまいました。

(あ~、このミスで終わるか)
とその時思いましたが、数巡後に苦しいところを立て続けに引き、南雀頭でリーチをしたら7索を一発ツモで逆転、ということもありました。もう運だけです。

(このままツキだけで大金星)

5回戦までのインターバルで、ポイントを見ながらそう思ってました。
そしてこの時の私には
(このあと113で優勝!)
というイメージがはっきり見えていました。

(決勝戦、条件計算大丈夫かな

文系雀士としてはむしろそっちが気になったりしました。

5回戦は大先輩方と同卓させていただきました。この半荘はなんというかとても気持ちよく打たせていただきました。説明が難しいしよくわかってもいないのですが、緊張感やリズムやその他諸々の相互作用なのだと思います。
トップまで2000点強で、オーラス・オーラス1本場とも逆転のテンパイを入れましたが、アガリ切れず。最後テンパイ・ノーテンで逆転かと思ったのですが、しっかりテンパイ取られていて、2着止まりでした。

5回戦終了時点で5位。トップまで約100ポイント。

もう次はトップしかない、と思っていました。

「条件確認大丈夫ですか?」

と言われた時も、
(トップしかない)
(100ポイント)
と思って決勝のボーダーは頭にありませんでした。

この6回戦でラスを引き、私のチャンローは終わりました。
やや点差が離れた追う展開で南1局の親が流れ、あとで思えば明らかに焦っていました。

南2局ドラ4筒。画像見づらいですが、5筒は1枚赤です。

タンヤオドラ3ですが、まだリャンシャンテン。下家の親は明らかな萬子の一色。終盤に入っていて、もう萬子はかなり切りにくい状況。

(でも2種じゃなくて1種2牌なら、ひょっとしていけるんじゃないか)

そこに上家から8索が出て、

(いくしかない!)

チーして打二萬。下家がこれをチー。

次順、上家からベストの6筒が切られて、チーして2枚目の打二萬。

これが赤入りチンイツに刺さって18000。

(そりゃ無茶だよな)とすぐ思いました。

雀力不足はもちろんなのですが、精神面が打牌に影響したこの焦りは、
「未熟」
と思い知らされました。恐ろしいのは打っている時には焦っている自覚がないこと。
でも明らかに焦っています。

この半荘はラスで決勝ボーダーから大きく後退し、結果は7位。

冷静に考えれば大満足です。完全にでき過ぎです。

プロになるのに実力テストはありません。本当に自分がプロを名乗っていいのか、不安に思う気持ちがありました。今でもあります。恐怖を感じるような不安です。
デビューから数戦、もし大敗が続くようであれば、他人は何も言わなくても、自分が自分に何かを囁いてしまう怖さを感じていました。
雀竜位F級予選とリーグ戦第1節をともかくプラスでまとめ、このチャンローで7位。
特別ではないけど、不安の中にいる新人にとっては、

「ひとまずここにいていいよ」
と言ってもらったような気持ちです。

「今のところは、だけど」
と付け加えられた声も聞こえたような気がしますが。

というわけで満足というか安堵というかそういう気持ちがあるわけですが、でも、

「悔しいなぁ」

帰宅して何度も呟いてしまいました。
まばゆい大金星が確かに目の前に見えるところまで行ったのです。
でもすぐ目の前に見えるそこまでは、意外なほど遠くまだまだ掴めそうにないものでした。

そこで思い出しました。

(そういえば、私はそういう奴だった)
いいところまでいって、でも結局勝ちきれない奴だったのです。


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