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【コラム】ハンバーガーチェーンの覇権争いと医療

ここで一つ、あるたとえ話を。

ハンバーガーチェーンA社が、『安い、早い、牛100%』を掲げ、原材料の調達から顧客へのサービスまであらゆるステップを最適化し、業界最安値で提供できる頑強なシステムを構築したとします。

いわゆる薄利多売のビジネスタイルですが、革新的で独創的な最適化の数々はなかなか模倣されず、他社の追従を許しませんでした。

ここに、とあるハンバーガーチェーンB社が現れました。A社と同じく『安い、早い、牛100%』をうたい、A社よりも50円安いハンバーガーを提供し始めます。すると、たちまち人気は広がり、A社に追いつくのではないかというほどの規模拡大を見せ始めました。

焦るA社。

なぜそんな安い価格で提供が可能なのだ?と産業スパイを送り込んだところ、農家からの搾取、劣悪な労働環境、牛以外の肉の混合など、様々な問題が浮き彫りになりました。

この事実を知ったA社は居てもたってもいられません。途方もない時間とお金をかけて、農家、従業員、顧客、皆にとって最適なシステムを作り上げてきたからです。

さて、もしこの時A社が、『B社は安いかもしれないが、人でなしだ。あんなろくでもないやり方でやるなんて、酷すぎる。絶対にB社の商品は買うべきではない』と言ったら、A社のシェアは回復するのでしょうか?

もしかするとB社から、『A社はうちばっかりが悪いことをしてるように言ってるが、A社も同じような事をしている。うちの社員には実際にA社で働いたときに、その激務で精神的に参ってしまったものもいる。自分たちのことを棚に上げて偉そうなことばかり言うな』と反撃されるのではないでしょうか。

そうなったら、もうお客さんはどっちを信じていいのかわかりません。ハンバーガー業界自体に不信を感じて、外食でハンバーガーを選ぶお客さん自体が減る可能性もあります。

A社がどれだけ倫理を守り正義を貫いても、このようなやり方では顧客を取り戻すことは出来ないような気がします。


そして、僕は医療にも同じことが言えるのではないかと思うのです。

エビデンスに必ずしも沿っていない治療法を目にしたとき、我々はどうすべきなのでしょうか。

答えはまだありませんが、正義を振りかざして叩く以外に方法はあるのではないかと思ってやみません。

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