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自分の価値、他者の価値、自己肯定感

みなさまこんにちは!

対人コミュニケーションについて研究・教育をしている大学教員の今井達也です。そろそろ新学期ということでバタバタしてます。

私の業績や教育活動が分かるホームページはこちら

この記事は:

- 自己肯定感の仕組みなどに興味がある人

- 人間関係と自己肯定感の関係に興味がある人

- コミュニケーション学、対人関係、心理学などになんとなく興味を持っている人

などに読んでもらうことによって、新たな気付きが得られるかも知れません。なお、内容にはエビデンスによる裏付けがあるものと、私見が混ざっています。書き分けていますので、ご注意ください。

なお、時間的制限により、一気に書き上げることができず、自分のメモのように少しずつ編集を加えていくことになると思いますので、ご理解ください。

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『そんなにバタバタしてるなら、なぜ論文じゃなくnote書いてるんじゃい?』と自分で突っ込みながら書いているのですが笑、自分が研究や教育をしている上で大切なことを少しまとめたいと思い、書いてみることにしました。

まず前提として、人間関係において、『価値』というコンセプトはとても大きな意味を持ちます。その価値について簡単に分けると以下のようになります:

1. 他者に対する価値(他者との関係に見出す価値)

2. 自分に対する価値(Self-esteem / 自己肯定感など)

上記2つは違うコンセプトではありますが、相互に関連しあっています。そのことについても触れる予定です。


まず1について書いてみます。

1. 他者に対する価値(他者との関係に見出す価値)

私達はどんな相手とも、同じように人間関係を深めようとは思いませんよね?

例えば、同じ会社の人間と、たまに行くスタバの店員さん、では、どう考えても前者の人間関係の方が大切にし、維持し、深めていきたいと思うでしょう。それはなぜか?

これは私のnoteで度々登場するSocial Exchange Theory(社会的交換理論)で説明することができます。詳しくは過去の記事を:

上記記事からの抜粋ですが:

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人と繋がりたい・離れたい、それを決めるのは私達の頭の中の「その人への価値」、と言いました(英語ではRelational Valueとも言えます)。その価値は以下の方程式で決まります:

その人と一緒にいることによるメリット ー その人と一緒にいることによるデメリット

です。

つまり、自分にとってどんなに価値をもたらしてくれる人でも、その人が自分に多くのネガティブなものも一緒にくれるのであれば、その人とは離れたいと思うわけです。

以下の例を見てみましょう:

- とても優しい彼・彼女だが、暴力を振るう

- 一緒にいると楽しい友達だが、自分の話ばかりするので疲れる

- 別に一緒にいても楽しくはない友達だが、なぜか心が落ち着く

- とても信頼できる彼・彼女だが、仕事が不安定でお金がない

こうやって書いてみると、ピンとくるのではないでしょうか。意識的、無意識的かどうかによらず、私達は結構人間関係を損得勘定で考えていると思いませんか?

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上記までが抜粋ですが、まとめるならば、

私達は、ある特定の他者に対してメリットを感じればその関係性を深めていきたいと思うし、ある特定の他者に対してデメリットを感じれば、その関係性を断ち切りたいと思う。

ということになります。このことに関して、いくつか研究を重ねてきました:

Imai, T. (2016). Influences of mental illness stigma in a computer-mediated communication context: Investigating mediating roles of predicted outcome value and negative affect. Japanese Journal of Communication Studies, 45, 5-25.

Imai, T. (2022). Is “thank you” effective even in Japan where “sorry” may be preferred? Toward extending the Find-Remind-and-Bind Theory. Asian Journal of Social Psychology.

上記2つの研究で分かったことは(詳細は割愛しますが)、やはり、相手(や、その相手との関係性)に高い価値を見出しているほど、私達は関係性を深めたいと思い、行動しているんですね。

上記までが:

1. 他者に対する価値(他者との関係に見出す価値)

となります。では次の2を見ていきましょう。

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2. 自分に対する価値(Self-esteem / 自己肯定感など)

他者に対する価値、と私達が自分に感じる価値、は別ですよね。ちょっと自己肯定感の尺度を見てみましょう:

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引用元:Rosenberg 自尊感情尺度の信頼性および妥当性の検討

見れば分かる通り、自己肯定感とは、『自分で感じる自分の価値』だということが分かります。

この『自分で感じる自分への価値』をどうやって上げていくか、をずっと考えてきました。

もちろん、テストで合格したり、昇進したりすれば、自己肯定感は上がるのかも知れません。しかし、忘れてはならないのが、『他者からの肯定的評価』が自己肯定感に大きく影響することが過去の研究で分かっています。

このことについて触れた私の過去の記事はこちらです:

著名な心理学者、Dr.Learyは、自己肯定感についてこう説明する。「自己肯定感とは、自分という存在が他者に肯定的に評価されていると感じられているかどうかを示す装置である」https://en.wikipedia.org/wiki/Sociometer

つまり

『自分は他者から高い価値を感じてもらっているんだ』と思えれば、自己肯定感は上がるわけですね。

(注意点としては、繰り返しますが、自己肯定感=他者からの評価、ではなく、他者からの評価や受容が、自己肯定感に大きな影響を持つ、というところをご理解ください。)

さて、ここで、先程説明した1と統合させてみます。


1. 他者に対する価値(他者との関係に見出す価値)

2. 自分に対する価値(Self-esteem / 自己肯定感など)


上記2点を合わせて、提言してみるのであればこうなります:

自分が他者から見て価値が高い存在になれば、他者は自分ともっと関係性を深めようと思うし、なおかつ自分で思う自分の価値(=自己肯定感)も上がる

逆に言えば

自分が他者から見て価値が低ければ、他者は自分との関係性を希薄にしようとして、それがまた自分で思う自分の価値(=自己肯定感)を下げる

ということです。

じゃあ、『他者から見て価値の高い人間』とはどんな人でしょうか。そんな人に私達はなれるのでしょうか。

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要素としてはたくさんありますが、ちょっと整理して書かないとなりません。(やばい、ここまでで十分長い笑)

- 自分でコントロールできない自分の側面

- 自分でコントロールできる自分の側面

です。

前者は、容姿や性格、その他自分で変化させることができない要素などが入ると思います。例えば、明るくて、精神的に安定している人は、他者から魅力的に感じてもらえるでしょう。参考文献↓

Wortman, J., & Wood, D. (2011). The personality traits of liked people. Journal of Research in Personality, 45(6), 519–528.

でも例えば、特に明るくもなく、精神的な浮き沈みがある私が『もっと明るく!元気に!』と言われれば、しんどいです。性格なんて変えられませんよ。

容姿も人気な容姿になれば良い?そんなことが簡単にできないことは誰しも知っています。

残念ながら、容姿端麗、心身ともに元気いっぱい、明るい性格、なら、人間は勝手に寄ってくるし、自己肯定感も上がるでしょう。それはなぜか。あまり深く書きませんが、

ルッキズム(『社会的に価値基準を設けられた美しさ』を重視する社会)や差別や偏見(人種、国籍、健康の問題などへの)の問題がそこにはあります。上記のような条件を持った人が、高い評価を得られる『社会のせい』だと言えます。そんな社会は私達が作っているんです。

さて、ここではあまり深追いせずに、もう一つの要素を見ましょう。

- 自分でコントロールできる自分の側面

つまり、自分で自分の『他者から見た』価値を上げるようなコントロールできる要素、があるはずだと思っています。それが、私が研究するコミュニケーションではないでしょうか。

例えば先に私が紹介した私の論文:

Imai, T. (2022). Is “thank you” effective even in Japan where “sorry” may be preferred? Toward extending the Find-Remind-and-Bind Theory. Asian Journal of Social Psychology.

で分かったことは

『他者に感謝できる人は、他者からの評価が上がり、他者から関係を深めたいと思ってもらえる』ことが分かりました。

『感謝を伝える』ことは、比較的多くの人ができることではないでしょうか(しかし、言語的な障害などがあれば難しいと思います。)

私は長期的に、いや自分の人生をかけて

『自ら働きかけることで、他者からの評価を上げ、それがまわりまわって、自分で感じる自分への価値(=自己肯定感)を上げるコミュニケーション』について検討していきたいと思っています。

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さて、まとめると、コミュニケーション学における『人の価値』は大きく分けると以下の2つです:

1. 他者に対する価値(他者との関係に見出す価値)

2. 自分に対する価値(Self-esteem / 自己肯定感など)

この2つの性質を鑑みて、提言できることがあります↓

自分が他者から見て価値が高い存在になれば、他者は自分ともっと関係性を深めようと思うし、なおかつ自己肯定感も上がる

じゃあ、どうやって、他者から見た自分の価値を上げるの?2つの要素を考えてみました。

- 自分でコントロールできない自分の側面

- 自分でコントロールできる自分の側面

前者は、社会構造の問題が大きく、社会全体で『ある特定の人に対する高い・低い価値観』を修正する必要があります。

後者は、多くの人が工夫し努力することができること、例えばコミュニケーションで、他者からの評価と、自己評価を向上させていきたい、という話につながってきます。


はあ、疲れた笑 さて、数百人の学生が待ってるので、頑張って授業準備します!お付き合いいただきありがとうございました!

みなさまも、適当に、なんとか頑張っていきましょう!

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