文化人類学書籍紹介

観光人類学の書籍紹介とコメント

石森修造(編)
1996『観光の20世紀』ドメス出版。

●注意書き

 この記事は、上記の書籍の内容をかいつまんで、なるべく私の言葉で置き換えてレジメ的、もしくはレポート的に記したものです。言ってしまえば、書籍紹介です。
 そのまま引用した部分には、ページ数を振ってありますので、上記書籍を実際に手に取り、ご確認くださいますよう、お願いします。
また、私の読解能力の至らなさにより、誤解、誤読の可能性もあると思いますので、観光人類学の資料をお探しの方は、やはり、上記書籍を実際にご覧ください。
 これはあくまで書籍紹介なので、抜けている章もありますので、ご注意ください。

では、簡単にではありますが、書籍紹介させて頂きます。

●本文

<観光と少数民族>
国際的に観光が盛んだった時代には、観光は悪者として見られていた。
何故なら、観光客の目当ては多くの場合、少数民族に向いていたからだ。
少数民族は、観光客から見れば未知なる者であり、見世物としてその土地土地で重宝された。この事から、観光は少数民族を見世物としていると批判をされたのだ。
その一方で、観光客の目はこれまでの少数民族の文化やイメージを大きなインパクトを与え、世界の少数民族に新しい可能性を与えると言った部分もあった。

<「観光客」はどこから生まれたか>
著者は国際的な観光は、20世紀の現象だという。
何故なら、観光には時間的、経済的余暇と、交通網の整備が欠かせなかったからだ。ちなみに日本の国内観光であっても、大衆文化が達成された江戸時代の元禄以降だったと、筆者は述べている。この余暇と交通網の整備は、言うまでもなく、産業革命によってもたらされた。また、ヨーロッパの暇と交通網と同じように観光を推し進めたのは、写真だった。この写真が異国情緒あふれるものへの誘いに、大きな役割をもたらした。
 この観光の背景には、植民地の拡大があった。植民地を拡大する中で、少数民族が「発見」され、まさに「ディスプレイ」されたのだ。

<観光の功罪>
「1980年代、観光のグローバル化に伴い、少数民族は観光の場を活用して、伝統文化の復興を図ったり、経済的自立を図ったりする動きが生じた」(P.21)

<第四次観光革命(2010年代?)>
「観光は「伝統の創造」や新しい民族文化の創出などの局面で、重要な鍵を担うようになるだろうし、「観る者」と「観られる者」という二元的な対立構造がより多元的に変換される可能性もある」(p.24)

●コメント
 この書籍が出版されたのは1996年であり、時間が経過しているが、内容は示唆的だ。
 つまりこの時点で、少数民族は一方的に「観られる」立場にはなく、むしろ「観られる」ことによって、自分たちを変化させていくしなやかさを持っていることが分かる。また、文化人類学は、植民地支配と関係が深い学問であり、観光もまた植民地支配と深く関わっていることが明記されている点も興味深い。
 現在の観光は「観る」、「観られる」という枠組みは変容し、その枠組み自体を超えていく人々の活動や、観光の形が見られると同時に、オーバーツーリズムなどの問題も顕著である。そのため、観光人類学の役割は今後さらに重要となっていくと考えられる。

以上が書籍紹介です。
もし、「この点については間違っているよ!」とか、「ここはもっとこう読むべき!」とか、建設的なご意見、ご視点、ご感想などがありましたら、コメント欄にお願いします。


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