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No.2|育児・教育|「天才だね!」と子どもを褒めてはいけない理由

天才!と褒めることの副作用

子どもが小さい時に、「天才なんじゃないの!」と褒めたことは誰でもあると思います。

小学生の会話の中には、「おまえ天才かよ!」とか「おれ、天才かも」と、日常的に天才があふれかえっています。最近では「神」があふれかえっていて、「おまえ、マジで神じゃん」とか「おれ、神だから」と自称する子もいます(笑)。

子どもは「天才」という言葉が大好きで、単に「すごいでしょ」という意味で使っている分にはいいのですが、大人が子どもを真剣に褒める時に「天才!」と褒め続けてしまうと、思わぬ副作用があります。

心理学博士の夫婦が常駐する我が家では、子どもたちが「おれ・・天才かも!」と発言すると、「天才ではない!」と速攻で明るく否定し、別の言葉で褒め直していました。

その時の褒め言葉は「プロセスについて褒める」という視点が大事です。つまり、「粘ってやった甲斐があったね!」や「どうやったらそんなに上手くできたの?」という褒め方です。

天才と言われ続けた子どもが、何かに失敗したり、困難にぶち当たった時にどう考えるのでしょうか・・「ぼくは天才じゃない」という答えが出てきます。では、プロセスについて褒められた子どもが、同じように失敗したり、困難な状況になったらどうか・・「もうちょっと粘ったらできたかも」「どうやったら解決できるんだろう」と考えます。

私は、自分の子どもだけではなく、小学校の教育現場で支援する時も同じような視点で褒めています。むしろ、失敗した時こそ「ここまで粘ってすごいじゃん!」「次はどうやった上手くいくか、一緒に考えない?」と褒めと励ましを積極的にしています。失敗しても褒められるという経験をして欲しいという想いがあるからです。

その理由の1つとしては、「やり抜く力(GRIT:グリット)」「成長的思考(growth mindset)」に関する研究の影響があります。

知能の高い子が陥りやすいダークサイド

知能がもともと高い子は「頭がいい」と誰からも褒められて、ある時期までは自尊心が高いまま育ちます。しかし、ある時を境に、このように褒められてきた子は物事に挑戦することをやめてしまい、自分ができそうなことだけを好んでするようになるようです。

やり抜く力が高い子の数十年を調査した研究では、「高等教育を受けている」「健康である」「安定した家庭がある」「給与が高い」などの結果が得られたのに対して、IQ(知能)の高い子の数十年後は、必ずしも上記のような結果が得られなかったというのです。

もちろん、知能が高くてグリットも高ければ最高ですが、知能が高い子は「頭がいい」と、成功の原因を能力に帰属している(させられてる)ことが多いので、このような結果になっていると考察されています。

この結果は衝撃的ですね。しかし、よくよく考えると、「やり抜く力」「諦めない力」「粘り強さ」という心構えは、知能で解決できること以上のものをもたらしてくれることもわかります。とにかく挑戦して、達成して粘るというのが成功の秘訣であることは、スティーブ・ジョブスをはじめとした偉人たちのストーリーを見てもわかります。

【今日のポイント】

子どもは能力ではなくプロセスを褒める

子どもたちの日常にあふれる「神(才能)」を「人間(努力)」にする褒め言葉をたくさん浴びせましょう。褒め方の具体的なポイントや事例をはじめ、グリットやマインドセットについては、また別の記事で紹介します。

心理学の知識を楽しくご紹介できるように、コツコツと記事を積み上げられるように継続的にしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。