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3年後の大口寄付はどうなっているのか:SIIF調査報告書「新しいフィランソロピーを発展させるエコシステムに関する調査 ~富裕層の意志ある資産を社会に生かす~」から

社会変革推進財団(SIIF)より調査報告書「新しいフィランソロピーを発展させるエコシステムに関する調査 ~富裕層の意志ある資産を社会に生かす~」が公開されました。(以下の写真をクリックすると報告書のPDFがダウンロードできます)

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NPOに大口寄付をするような人たちは今、社会貢献のためにお金をどのように使っていこうと考えているのかがわかるヒントになるなと思い読みましたのでnoteにまとめておきます。

新しいフィランソロピーとは

まず冒頭、グローバルで進んでいる「新しいフィランソロピー」という言葉がでてきます。以下にあるように、一般的な寄付と一般的な投資の中でいうと、一般的な寄付とインパクト投資とESG投資の一部を含んだものです。

新しいフィランソロピーを、多様な資金提供手法と活動を駆使して社会的インパクトの実現を目指すフィランソロピーと定義する。新しいフィランソロピーは、寄付・助成だけでなく経済的対価を伴うインパクト投資や融資などの手法を積極的に活用しようという点で、伝統的なフィランソロピーと決定的に異なっている。(P10から抜粋)

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P11から抜粋

富裕層の人たちはこの「新しいフィランソロピー」の考え方にこれからシフトしていくことがわかります。

日本に富裕層って多いの?

日本に富裕層と呼ばれる方々はどれくらいいるのでしょうか?日本の富裕層人口は338.7万人と米国の590.9万人に次いでなんと世界2位なのです。そして、SDGsなどの浸透からも社会貢献活動の関心がひろまっている中で、富裕層の資金がどのように社会貢献活動に活かされていくのかに期待できます。

富裕層を「主たる住居、収集品、消耗品、耐久消費財を除いて、1 億円以上の金融資産を持つか、または年間世帯収入が2,000 万円以上の世帯」と定義する。この定義は、海外の主要な富裕層調査やフィランソロピー調査の定義に準拠している。このうち、金融資産額が30 億円以上の世帯を「超富裕層」と呼ぶ。現在、全世界の富裕層が保有する金融資産総額は74 兆ドル、人口は約1,961 万人と推計されている。(P9から抜粋)

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P7から抜粋

富裕層の社会貢献活動に対するお金の使い方の進化

これまでも寄付をするなど富裕層の人たちは、社会貢献活動に対してお金を使ってきましたが、時代に伴って進化してきています。

近年、超富裕層の寄付活動に変化が見られる。従来、超富裕層の寄付は美術館・博物館や大学・研究機関への冠寄付、あるいは医療機関や慈善団体への寄付が中心だった。しかし、近年はインパクト志向が強まり、単に資金を出すだけでなく、「共創」をキーワードに支援先に積極的にコミットするようになった。支援先の社会的インパクト評価にも関心が高い。(P17より抜粋)

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P15から抜粋

これまでは、寄付したり、助成金を設立して助成することをしてきましたが、フィランソロピー3.0としてインパクト志向の資金提供がされるようになってきました。これは、社会問題の解決と利益を両立させたソーシャル・ベンチャーへの投資がされるようになってきました。

日本でも事例がでてきている富裕層のお金の使い方

でも、それは海外の話でしょ?と思う方もいると思いますが、報告書では事例が紹介されていましたのでその一部をご紹介します。コロナ禍においてみてね基金に応募したNPOは多いと思いますが、その基金の原資は富裕層の寄付です。

・池森ベンチャーサポート合同会社

ファンケルを創業された池森賢二さんが2019年に取締役社長を退任された後で設立された投資会社。IPOを狙って利益を追求するのではなく、若き起業家を支援するエンジェル投資家の立ち位置。池森さんが本能的に必要だと感じたことに取り組んでいる。

・株式会社ミクシィ取締役会長笠原健治さん「みてね基金」

笠原 健治が個人として寄付する資金10億円を原資に、子どもやその家族を取り巻く社会課題の解決に取り組んでいる団体様に対する活動資金の提供をしています。

社会貢献のお金もポートフォリオを組む

フィランソロピー1.0~3.0を紹介しましたが、富裕層は一つの領域に全部お金を使うことはせず、ポートフォリオを組んで運用をして、全体で「プラス」になるよう考えます。つまり、経済的リターンを重視した投資、社会的リターンと経済的リターンのバランスをとった投資、社会的リターンを重視した寄付といった方法を駆使してお金を使います。

富裕層の資金運用をしている香港のRSグループでは、寄付・インパクト投資・サステナブル投資・責任投資により構成される投資ポートフォリオを組むことで、社会的価値と経済的価値の両立である「ブレンディド・バリュー」の実現を目指しています。(下図はP23-24から抜粋)

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富裕層からの資金のカギは仲介者

こうしたポートフォリオを組んで運用するのは、とても手間がかかりますので、富裕層のいち個人ができるものではありません。プライベートバンクであったり、ファミリー・オフィスと呼ばれる富裕層の資産を管理する機関おこないます。

富裕層の資産がNPOに行きわたるまでには「寄付・投資ビークル」「アドバイザリー・サービス」「支援ネットワーク」の3つのサービスが必要となります。これらをエコシステム(生態系)よび、海外ではこれらが整備されています。

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寄付・投資ビークル

これは、資金を仲介する金融的な仕組みを指します。財団の設立であったり、既存の公益財団に冠基金をつくる、公益信託を利用するなどです。

アドバイザリー・サービス

富裕層の社会貢献の考えを聞き取り、資産状況を理解した上で、世の中の様々な仕組みをくみあわせて、最適なものを提案する役割です。

新しいフィランソロピーは、対象分野、寄付・助成やインパクト投資といった資金提供の形態、利用ビークルなどの多様なオプションを効果的に組み合わせることで、社会的インパクトを最大化しようとする。そのために、フィランソロピー・アドバイザーやフィランソロピー・コンサルティングファームが、フィランソロピー戦略の策定から、ビークルの選択、プログラムの立ち上げ、社会的インパクトのモニタリング・評価・報告などをフィランソロピストに対し支援する。(P35から抜粋)

支援ネットワーク

グローバルでは、社会貢献活動をしている富裕層が集まるコミュニティがあります。そこで社会問題に対する最新情報やベストプラクティスなどを得て、自分達の活動に活かしていきます。例えば、ワークショップや現地訪問をしたり、「食糧システムの変革」「次世代」「精神文化」「難民と移民」「インパクト投資」などテーマに分かれて分科会をしたりなど学びあったり、ピアサポートをしたり、共同で出資するなどしています。

仲介者不足が日本に拡がらない最重要課題

海外では、「寄付・投資ビークル」「アドバイザリー・サービス」「支援ネットワーク」の3つがきちんと提供されていることで、富裕層は自分達の資産を社会貢献に活かすことができます。しかし、日本ではこれらの仲介者の人材が少ないことから、せっかく社会貢献意欲があったとしても情報がなかったり、信頼できる相談者、任せられる実務者がいないことで拡がっていません。

日本での課題が下図にまとめられています。

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P54から抜粋

さいごに:で、NPOは何したらいいの?

調査報告書からわかることは、日本で富裕層からの資金がNPOにわたりにくい原因は、「富裕層」「資産管理サービス」「専門支援サービス」「資金の受け皿」「中間支援団体」といったプレーヤー同士がつながっていないことがひとつ挙げられます。NPOのことをよく知る財団が、富裕層をよく知る資金管理サービスの機関と連携し、仕組みをよく理解した弁護士・会計士・税理士・司法書士などが適時実務を行うことができたら、資金はもっと流れていくでしょう。日本では、税制度や法制度などが阻害要因になっていることもありますが、それも一つ一つ改善してきています。ここ1年、2年では変化はあまりないかもしれませんが、3年~10年の時間で大きく変化し、富裕層が寄付先を探す際には、直接自分で探すのではなく、仲介者を介して探してもらったり、信頼できるコミュニティの中から選ぶといった流れになるはずです。そうなったときに、仲介者と関係性をもっていられるのか、信頼できるコミュニティに入っていられるのかが資金を得る上で重要になってきます。従来の直接寄付や助成金を得ることも重要ですが、さらにそこから拡げていくことが重要です。

拡げるためのヒントは編集後記に記載されている、「フィランソロピー・アドバイザー」と「フィランソロピー・サークル」の2つにいかに絡んでいけるかかなと個人的に思いました。

是非、今回の調査報告書全体を読んだ上で、編集後記を見てみてください。

調査報告書ダウンロードはこちらから。

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今給黎 辰郎(いまきゅうれいたつお)
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