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NPOの事業承継の考え方~NPO事業承継サミット2020から~

2020年10月5日(月)~2020年10月19日からオンラインで実施されたNPO事業継承サミット2020に参加しました。事業承継の様々な面を語る8つのセッションがありました。これらのセッションから、ここ数年で事業承継ができずに衰退・解散する団体、世代交代してさらに継続していく団体の明暗がはっきりしてくることがわかりましたのでnoteにまとめてみました。

事業承継はここ数年でさらに顕在化する問題になる

1998年12月に特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という)が施行されてから、現在5万団体以上あるNPO法人。創業20周年を迎えている団体も多くあります。2019年3月に内閣府が行った、特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査によると代表者が60 歳以上であるNPO法人が58.7%と多くを占めています。

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内閣府:特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査(概要)P1から抜粋

NPO法設立と同じくして団体を設立し40代・50代で代表になった一代目の代表が高齢化してきたことがわかります。代表者交代に向けた準備状況についての調査では60.2%が準備はあまり進んでいない状況であり、多くのNPOが抱える問題であることがわかります。

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内閣府:特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査(概要)P2から抜粋

準備がすすめられない理由を見てみると、「適切な候補者が見つからない」が1位です。

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内閣府:特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査(概要)P5から抜粋

75歳の後期高齢者になると、何かと健康上の問題を抱えることが多くなってきます。候補者がみつからないまま代表の健康問題で引退しそれがきっかけで活動が縮小してしまうことがおきてしまうことがここ数年で起きることは容易に想像できます。

いきなり事業承継はできない

団体を立ち上げて社会問題解決に向けて仲間たちと活動してきた多くの代表さんたちでも進めることが難しい事業継承。どうやら、活動を続けていたら、過去の自分と重なり合うような志の高い若者がでてきて、ドラマのような熱い語り合いやできごとを経て、自然と継承されていくといったことはおきないようです。

それでは、どのような準備が必要なのでしょうか。オープニングセッション「譲る側と受け継ぐ側の気持ち」で登壇されたNPOサポートセンター代表理事の松本 祐一さんは、事業承継はこれまでやってきたことをそのまま継続するのではなく「モデルチェンジ」が必要として、以下を説明されていました。

1.現状把握と未来のシナリオづくり
まず自組織のありのままを理解した上で、今起こっている変化を背景に、未来の社会のあり方を、団体にとって重要と思われる変化を起点に描く。
2.モデルチェンジを行う
モデルチェンジにはメンタルモデルチェンジとビジネスモデルチェンジの両面があり、ビジョン・ミッションの見直しに加えて、事業収入の安定と新規事業を軌道にのせることが必要になります。
 ・メンタルモデルチェンジ(存在意義の再構築)
  - Mission(社会的価値)のとらえなおし
  - 新しいVision(成果)の設定
  - Philosophy(経営方針)の見直し
 ・ビジネスモデルチェンジ(持続可能性の確保)
  - 既存事業の見直し
  - 新規事業の検討
  - 業務プロセス改革

代表の賞味期限中にビジネスモデルを変える

NPOにとっては、モデルチェンジの中のビジネスモデルチェンジが一番のカギになってきます。登壇されたNPOサポートセンターでは1993年山岸 秀雄さんが設立をして長年代表として引っ張ってきました。そこから松本さんに事業承継をしていくのですが、その過程で、自治体からの委託中心だった事業から、研修やバックオフィスサポートなどの自主事業の比率を大きくしていきました。引き受ける側の視点で考えると、収入基盤があることで「これなら受けても大丈夫かな」と思えます。沈みゆく泥船を譲り受けたい人はいません。

事業承継センター株式会社 取締役会長内藤 博さんのセッション「企業の事業承継から学ぶNPOの世代交代」では、代表は60歳~72歳が賞味期限で、この時期まで売上や収益が上がる可能性が高いが、それ以降の年齢になるとどうしても下がってしまうそうです。

経営者が高齢化すると売上と利益が下がる理由
 ・お客さんが年をとる
 ・リスクを取らなくなる(老害:未来への投資しなくなる)
 ・後継者がいないと、団体継続が危ぶまれて取引が敬遠される 等

確かに、NPOへの寄付者も代表の年齢層に近いところで推移する傾向があります。代表や理事が高齢化している団体が、「寄付者の世代交代ができない」ことを問題視することは多いですが、裏をかえせば、自団体の運営者の世代交代が進んでいないということなのです。

そして、NPOは社会の変化と共に、受益者のニーズの変化に合わせて事業を変化させていく必要がありますが、高齢化するとどうしても新規事業を行う試行錯誤や、NPOにおける投資ともいえる助成金申請を新規事業立ち上げのために行うことは避けがちになってしまうようです。

また、自治体や企業などからの委託をうけることもNPOは多くありますが、後継者がいない団体は、活動の継続性を危ぶまれて評価点がどうしても下がってしまうそうです。やはり活動が組織的に継続することが見込めることが人とお金を呼び込むために必要なことです。

新しい事業をつくるなんて無理と思ったら

事業承継に向けて新しい事業をつくりましょうと言っても、イメージがわかなかったり、そもそも無理みたいな状況もあろうかと思います。そうした時に考えられるのは合併などです。セッション「NPO法人の解散、清算、事業承継等をめぐる現状と課題」にて事業承継では以下の選択肢があると整理されていました。

事業承継の選択肢
1.単純継続:現状維持
2.改善継続:事業改変、縮小均衡、世代交代
3.リスタート:目的等変更、法人格変更
4.合併:新設合併、吸収合併
5.分離・独立:事業単位での法人新設など
6.譲渡・協働:事業等の切り出し、共同事業化

また、「NPOの事業承継・事業再編の現状」のセッションでは、新設合併・吸収合併以外に統合の度合いがソフトな以下の方法もあるようで、海外では様々な方法で実践されているとの紹介もありました。

・バックオフィス(会計・総務など)のシェア
・特定業務のアウトソーシング
・業務提携
・グループ化

NPOを解散するには何がポイントになるのか?

最悪の事態を考えておきたいのは人の常です。NPOの解散は3つのパターンがあります。ここでは1の自主解散についてみていきます。

1.自主解散:社員総会決議
2.破産:債務超過
3.強制解散:認証取消の場合は法人格はく奪

解散に必要なヒト・モノ・コト・カネ・ジカンを登壇者の特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 代表理事関口 宏聡さんが説明してくださいました。以下手続きだけで最低3~4か月、概ね半年~1年かかるそうです。

ヒト:清算人1人以上 通常は解散時の理事長等だが、別メンバーも可能
モノ・コト:清算人の「個人実印・印鑑証明書」。解散総会1回、法務局での登記2回、所轄庁への報告2回、その他税務・労務・金融機関・契約整理
カネ:官報への解散広告費用(約3万9千円)
ジカン:解散総会準備→解散総会招集・開催(約1週間)→解散・清算人登記(約1週間)→解散届提出→解散公告申込・掲載(約2週間)→解散公告期間・講座解約等(2ヶ月→残余財産等処理・清算結了登記(約1週間)→結了届提出

NPO法は解散も自主自由なので、自分達の意思で解散することも自由。活動停止・休眠状態の増加はNPOの制度の信頼性に悪影響なので避ける。追い込まれての解散は破産や内部トラブルの原因になるので、ある程度組織体力があるうちに、検討・実行を検討する。解散の手続きが必要なのでその段取りを計画しておくことがポイントになります。

ちなみに3つめの事業報告書を3年未提出になると所轄庁が強制的に法人を解散させます。これには団体側には費用がかからないので、安易にこの方法を選ぶ団体がいますが、認証取り消しになると、取消時の役員が全員「欠格役員」になり、以降2年間役員になることができなかったり、過料事件通知がされ不名誉な事実が一定期間公表されます。これが思わぬところで将来の仕事ややりたいことに悪影響を及ぼす可能性があります。

世代交代をするためにどうしたらいいのか

事業承継の全体像を見たところで、では世代交代をするにはどうしたらよいかみていきましょう。世代交代をして事業承継をしている団体は多くありますが、大きく創業者からの2代目への承継、2代目から3代目の承継の2つのパターンが主になります。

創業者から2代目の承継の場合

創業者はカリスマ性があり、多岐にわたる事業や業務を1人でこなしているだけでなく人望も厚く、地域の中心人物なことが多いです。そうしたカリスマ代表から引き継ぐことはプレッシャーや周りの期待が大きすぎて受けるのを断ることが多いようです。やりかたとしては、代表候補が旗振り役として新規事業を立ち上げて収入源の柱に育てることで自信を持ってもらったり、組織を事業毎に分割するなどして代表を複数たてることで担う責任を分散するなど事例がありました。いずれにせよ代表候補として時間をかけて関わっていくことが重要なようです。NPOサポートセンターの代表交代までには約8年程かかったそうです。やはり10年単位のとりくみが必要なことがわかります。

2代目から3代目の承継の場合

代表交代が2回目ということで、組織にも周りにもある意味、耐性がある状況です。任期を定めていて定期的に交代するといった仕組み化をしているところもありますし、組織のメンバーで選挙をするといった例もあります。組織の状況はその時の組織の成長段階等で必要な人材は変わってきます。その成長段階に合わせたスキルや能力、人脈を持っている人に、周りの人の納得感を持ってもらいながら就いていくことが重要なようです。

特定非営利活動法人ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京) 代表理事 藤村 隆さんが登壇された「代表交代、合意形成、新しい挑戦——三代目が語る現場経営のリアル」では、3代目を決める選挙に立候補し、団体のビジョンについて語り当選したが、当選後、投票をした人たちから、そのビジョンを実践する人として見られたため、一種のお客様感覚が団体内に生まれてしまい、代表を選挙で決めることが本当によいことなのかわからなくなったとおっしゃっていました。

新しく就任した代表は、どうしても自分のカラーを出したり、周囲からの代表としての期待に応えたくなるけれども、1年くらいは先代代表がいなくなったという影響が組織内におこるので、どんな反応になるのかなと代表が組織メンバーの様子を確認する時間を持ち、そこでわかったことを新たにやっていくくらいでよいというお話も印象的でした。

事業承継は何を承継するのか

これまで先代が代表をすることで築いてきた何を承継するのでしょうか?セッションでは以下3つが整理されていました。

1.財産:現預金、土地、建物、設備など
2.権利:業務執行権などの地位
3.目に見えない価値:無形の価値、人材、外とのつながりなど

ポイントは3の目に見えない価値です。NPOで多くの財産を持っているところは少ないですし、権利といっても株式会社のように株数によって議決権を持っているわけでもありません。NPOにとって価値の多くは目に見えない価値です。

目に見えない価値というと、自治体や他団体との連携、寄付者やボランティアなど応援する多くの人の思い、これまでの実績や採択されてきた助成金・補助金・表彰などで積み重なった信頼、他団体にないビジネスモデル、SNSなどの発信力、人脈、社内スタッフの求心力、理事の協力等、挙げればきりがありません。

団体の代表は、組織外の人や団体、機関に対して説明やアドボカシーをして活動の認知度をあげたり、社会問題に関心を持ってもらうことをしており、外に意識が開いています。そのため、組織内部で働いている人から代表は何をしている人なのだろう?と思われることが多く、そこから引き継ぐとなるとわからないことが多く不安になってしまいます。

そのため、1年間は代表のかばん持ちをするや、理事に対して後継者として時間をかけて認知してもらう、理事交代のセレモニーをしっかりとやる、総会や理事会、全体会議などで前もって代表交代について時間をかけて伝えておく等など、組み合わせていくことで目に見えない価値を承継することを計画的に行っていく必要があります。

さいごに

代表が交代することは大きな影響があります。組織内外の不安が大きかったり、これまで支援してくれた人が離れていったりマイナスのことも多くあると思いますが、どんなカリスマ代表も年齢を重ねます。世代が変われないことの方が大きなリスクとなります。今後数年で世代交代ができるかできないかの問題は急速に顕在化していきます。

世代交代を成功させている団体が何年もかけて取り組んでいることをみると、問題が顕在化してからあわてて交代を考えても手遅れです。また、企業の世界では事業承継の計画書がなかったり、後継者がいないことがわかると取引ができなくなったり、重要な案件に関われなくなる時代になっています。NPOにおいても代表が60歳になったら承継について計画をするなど決めておく対応が必要になろうかと思います。

今回のセッションでは、先代の代表の思いや、引き継ぐ新代表の思いがたくさん語られていました。団体の代表を継ぐことは困難なことや覚悟が必要ですが、まさにこのタイミングで人生と人生が交差する運命的なものなのだなと感じました。

事業継承については個人的に関心があるので、これからもチェックしていきたいと思っています。

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今給黎 辰郎(いまきゅうれいたつお)