「施設運営をボランティアと共にやってみたら?」と言われて、何をしたらいいか全くイメージがわかないNPOに転職したての人に役立つ本紹介 ~書籍:「参加の力」が創る共生社会~
私はIT企業で10年間システムエンジニアと人事系の職で働いた後に、NPOに転職しました。転職して6ヶ月くらい経ったころに「都市部の子育て世代のコミュニティをつくってください」と言われ新規事業の立ち上げの担当をしました。
コミュニティの立ち上げにも苦労したのですが、その時の話は前回のnoteをご覧ください。今回はその先のお話です。
施設を立ち上げて数か月経った時のことです。遊び場には多くの親子が訪れるようになり、習い事もたくさん開催されて日々にぎやかになってきました。ですが、それだと企業が運営している施設のなんら変わりがありません。都会の子育てコミュニティをつくるために、定期的にイベントをいろいろと実施していたのですが、自分達だけ空回りしているなと感じるようになりました。それを代表に相談したところ、
「施設運営をボランティアと共にやってみたら?」
と返ってきたのです。当時の私のボランティアの理解度は、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災の時にがれきの撤去などに大阪や京都など近隣府県からたくさん人が集まって無償で作業をしたことで、「ボランティア元年」といわれていることくらいでした。自分でもボランティアはしたことがなくてイメージが全くつかめませんでした。
頭の中は、「そもそも、平和このうえない子育て支援施設にボランティアさんって集まるんだっけ?」、「なぜ施設運営をボランティアと共にしたらなんで空回り感なくなるの?」と疑問だらけでした。
いったいどうしたらいいのだろうか・・・路頭に迷った私はいつもの本屋(東京駅前のオアゾ)に直行し、そこで見つけたのがこの本です。
好きな活動を隣に開くことから社会貢献は始まる
この本によると、ボランティアは「周りで起こる問題や困りごとを抱えている人を放っておけない」という強い気持ちや、「自分を活かせる場を得たい」という欲求、「一度、普段と違う世界をのぞいてみたい」という好奇心、ちょっと誘われてといった、意欲的でもないこともあります。ずっと続けるケースもあれば、一回で終わってしまうこともあります。途中に中断期間があってもいい、そんな自由な活動といっています。
当初考えていた、高尚な考えを持って強い志を持ってやり抜く人たちという印象を持っていたのですが、もっと自由で強い覚悟はもたなくてもOKということで、自分の中のハードルが少し下がったのを覚えています。
ボランティアは、人の内なる「自主・自律」の思いからの活動ですが、実際は、「何かしてみたいけど、何をしたらいいのだろうか?」や「自分を活かせることであればなんでもよいです」というスタンスの方が多いそうです。
そうした人には、まず”私は”何がしてみたいのか、”私は”何ができそうなのか、”私は”何に困っているのか、自分にこだわって考えてみるところから始めるとよくて、そこから隣の世界に開いていくことで、公共性を持つようになります。例えば、家族とのキャンプに近隣の子ども達も連れていけば「地域の子ども会」になったり、家族とのご飯の場に留守番をしている子どもたちを招けば「こども食堂」になります。
ボランティアは、個人の自由意志で参加するものですが熱量は様々で、軽い気持ちの人もいれば使命感を持っている人もいる、やりたいことが明確な人もいれば、ぼんやりやりたいことを持っている人もいる。
恐らく、都市部の子育てコミュニティのボランティアに関わってくれるのは、熱量は低いが中くらいで、やりたいことは明確ではないのかなという想定でしたので、そうした人たちに参加し続けてもらうにはどうしたらよいのだろうか?と思いました。
こうしたボランティアを含めた活動を継続して盛り上げていくには、以下の3つが必要とこの本では言っています。
1.対等な関係性
2.ルール作り
3.内発的動機づけ
1.対等な関係性
水害にあって家が床上浸水した被災者ががれきの撤去や家の整理にボランティアに関わってもらうことを例に挙げます。被災した人の多くは他の人に迷惑をかけずに自分達の力だけで片付けたいと思うようですが、頼れる親族がいなかったり、経済的に厳しい状態だった場合、それができず途方にくれてしまいます。仮にボランティアに手伝ってもらったとしても無償でやってもらって申し訳ないといった思いを持ってしまいます。こうなってしまうと、ボランティアの方が上の関係性になってしまい、よいボランティアの場にはならないそうです。
逆にうまくいくケースの例は、地域で唯一のコンビニが被災し、一日でも早く復旧させて同じく被災した地域住民に商品を届けたいと店主が思い、ボランティアを募った場合、「いちはやく被災地に活気を取り戻したい」という目標を店主とボランティアが共有してそれに向かってはたらきますので、関係性は対等な仲間・同士となり、活動も継続的になったり、人間的なつながりができるよいものとなります。
ここから、この地域によりよい子育てコミュニティを築いていきたい目的を発信・共有することが重要であることに気づきました。
2.ルール作り
非営利活動では法人の職員とボランティアが協働するケースが多くあります。職員は法人と雇用契約を結び、労働者として勤務します。一方ボランティアは雇用契約は結ばず活動することになります。
職員としては就業規則や賃金規定などの様々な労働条件が定められており、勤務する上でのルールがありますが、ボランティアの場合はそれらにあてはまりませんので、「意欲的に活動できるためのルール」があると職員とボランティアが一緒に活動しやすくなるそうです。
(P172から抜粋)具体的には企画段階からの参加、必要な情報の共有、フラットな関係で議論し合える環境整備、研修の機会、職員・ボランティア間の適切な役割分担、交流の機会などを保障することが必要です。さらに、ボランティアには多様な参加のスタイルがあることをメンバー間で認め合うことや、それぞれの役割分担に固執しすぎず積極的に助け合うことなど、守りたいルールも皆で合意しておくことが大切です。
確かに、ボランティアの方とは雇用契約は結ばないので、この日に絶対来てくださいねとは言えない関係性です。それでも、来て欲しい日にきてもらうためには、モチベーションを高めてもらい、自分はここで役立っている思いを持ってもらう必要があります。その状態にもっていくためにコミュニケーションや心の持ち方などのルールをつくり、職員とボランティアがそれを共有することが必要であることがわかりました。
3.内発的動機づけ
ボランティアは内なる「自主・自律」の思いからの活動で、内発的動機づけされることで活動が活発になります。そのために以下3点が重要となります。(以下P153~157から抜粋)
1.自律性を高める:自身の行動を誰かに統制されず、自分自身で自律的に取組めていることを実感できることが重要です。例えば、自分で決めることができる、選択できる、企画段階から参加できることなどが挙げられます。
2.熟達できる状況をつくり出す:「できた」実感を得られることで「やる気」が高まる仕組みにする。
①達成感・有能感の向上・・・少しの前進であっても既に達成できている実績をきちんと認め合い、さらにメンバーの間でその成果を共有し合うことが必要です。
②未知との出会いで世界を広げる・・・未知の人々との出会いは、それ自体が面白いものです。市民活動を通じてメンバーが成長できる機会を、積極的に設けることも大切です。
③少し高めの目標設定で挑戦する・・・目標を(実現可能な範囲で)少し高めに設定し、到達した時の達成感を高めることも有効です。
3.社会と自分自身にとっての「意味づけ」を得る:人は周囲の人々から意味があると認められることによって、生きる意欲が湧いてきます。取り組む活動が他者、さらには社会にとって、どのように意味のある活動であるかを理解できる(自分の中で腑に落ちる)と、意欲が高まります。さらに、それが他ならぬ自分が関わることにも意味がある、自分らしさ、自分の強みを活かせていることで意味ある行動ができていると実感できると、さらに意欲が高まります。
時給を払って、決められた時間に、決められたことをする、アルバイトのような感覚ではなく、ここでボランティアをすることで、新しい人間関係を拡げてもらったり、少しでもいいから何かに挑戦してもらうなどの成長をし、自律的になってもらうことを仕組み化してはたらきかけることが必要なんだなと思いました。
さいごに
この本を読み進めていくと、私が当初持っていたボランティア像が変わっていきました。地域で子ども関連で何かしたいなと思っている人たちに関わってもらって、その人のやりたいことや興味あることについて何かしてもらう。うまくいくこともあれば、失敗することもある、楽しいこともあれば、ちょっといやな気持になることもある。そうした試行錯誤を安全にできる場としてこの場を使ってもらえればいいんだなと理解しました。
さらに考えていくと、自律的に活動してもらうことが重要なのはボランティアだけでなく、働いている職員だって当てはまることですし、施設で習い事を提供してくれる先生も同じことだと思えるようになりました。それに気づいてからは、皆さんのちょっとした挑戦をあとおしすることができるようになり、それと合わせて施設のにぎわいが増したなと感じるようになりました。
代表が言っていた「施設運営をボランティアと共にやってみたら?」の意図はここにあったようです。
このように、NPOに転職して困るであろう様々な場面を想定した情報提供をマガジンで提供しております。気になる方はフォローしてください!
「もし自分が34歳だったら応募したいNPO求人を集めたマガジン」として、現在44歳の私が10年若かったら申し込みたい求人を独断と偏見で選んだ記事を提供しております。NPOでの職選びをされている方は是非フォローしてみてください。
記事を読んでくださいましてありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。おかげさまで毎回楽しく制作しております。皆さんからの応援があるとさらに励みになりますので、サポートお願いいたします!!