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RTE(Ready-to-Eat)食品とリステリア菌(Listeria monocytogenes)

調理せずに喫食可能なRTE(Ready-to-Eat)食品の米国の市場は、325億ドル(2.54兆円、1ドル=78.4円換算)と莫大なものである。(下記、参考記事より)
米国の人口が3.15億人(2012年)であるから、純粋に米国の人間だけがRTEを消費したとして、一人あたり約8000円のRTE食品を消費していることになる。これは世界的に見て、トップクラスである。

さて、RTE食品については、よくリステリア菌汚染の話題がでてくる。

リステリア菌は、高濃度に食塩を含む食品や低温で流通する食品でも増殖することから、肉加工食品や乳製品・野菜加工食品での集団食中毒事故のニュースを毎年のように聞く。当然、RTE食品の流通の割合が高い米国でのニュースが多い。

そのため各国の規制として、
米国
FDAが管轄するRTE食品で、リステリア菌を食品25g中陰性であることとしている。

EU
リステリア菌が増殖する食品かそうでないかで規格を設定している他に、乳幼児及び特殊医療目的のRTE食品での規格を別途設定している。

日本
昨年の厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会で、食品衛生法第6 条第3 号の適用としている「非加熱食肉製品及びナチュラルチーズ(ソフト及びセミソフトタイプ)」について法第11 条第1 項に基づく成分規格設定を検討する、としており規格化が整備される予定である。

リステリア菌による食中毒の症状はリステリア症と呼ばれ、初期は38~39℃の発熱、頭痛、悪寒、嘔吐など、インフルエンザの様な症状を示す。
そのため、感染後24時間程度し重症化してから受診することも多い。
特に妊婦が感染すると、胎児への影響が強く、早産や死産の原因となったり、新生児の場合には髄膜炎を起こす可能性が高いことから、早期の対応が必要である。

RTE食品の手軽さから利用率は高くなる傾向がある一方で、リステリア菌による食中毒の重篤性から、徹底した衛生管理をフードチェーン全体で整えなければならない。

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参考記事
米国の調理済み食品市場、2012年には325億ドルに達する見込み(2012-08-10財経新聞より抜粋、http://www.zaikei.co.jp/releases/58221/)

株式会社グローバル インフォメーションは、Packaged Factsが発行した報告書「Prepared Foods and Ready-to-Eat Foods at Retail, 2nd Edition (小売り市場における調理済み食品・RTE(Ready-to-Eat)食品:第2版)」の販売を開始しました。
スーパーおよびコンビニエンスストア、およびWalmartやTargetなどの巨大小売店にとって、調理済み食品は明るい材料となっています。
米国では、成人の消費者は大手小売店へ訪れる際、10回に2回は調理済み食品を購入しているとされております。
パッケージドファクツ社は、米国の調理済み食品市場は2011年から7.5%伸び、2012年には325億ドルに達すると予測しております。****************************************
参考:Ready-to-eat 食品(RTE 食品、調理済み食品)
一般に、生食用の食品のほか、リステリア属菌の殺菌処理をさらに行うことなく一般に飲食可能な形へと処理、加工、混合、加熱又はその他の方法で調理されたすべての食品。
~「食品中のリステリア・モノサイトゲネスの管理における食品衛生の一般原則の適用に関するガイドライン」Annex II CAC-GL61-2007より****************************************
参考:リステリア・モノサイトゲネス Listeria monocytogenes
性質:グラム陽性、短桿菌、鞭毛を持つ、芽胞の形成はしない、自然界に広く分布、低温増殖性がある、高い食塩濃度でも発育できる
~国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部 五十君先生資料より
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追記:2021.03.14
リステリア・モノサイトゲネス 想定される汚染源

参考文献として、「微生物・ウイルス評価書(案) 食品中のリステリア・モノサイトゲネス」(2013 年 4 月 食品安全委員会 微生物・ウイルス専門調査会)が挙げられる。
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc1_bi_virus_listeria_250402.pdf

特に、56~76ページにある「Ⅴ.暴露評価」に詳細が載っている。

以下、目次を抜粋。
1.食品の生産段階における汚染 ............................................. 56
(1)食品の生産段階における汚染実態 ................................... 56
(2)汚染の季節変動 ................................................... 56
2.食品の製造・加工・処理段階における汚染 ................................. 56
3.食品の流通(販売)段階における汚染 ..................................... 59
(1)流通食品(食肉・食肉加工品)の汚染状況 ........................... 59
(2)流通食品(乳・乳製品)の汚染状況 ................................. 61
(3)流通食品(魚介類・魚介類加工品)の汚染状況 ....................... 62
(4)流通食品(野菜・野菜加工品、果実)の汚染状況 ..................... 65
(5)流通食品(その他の食品)の汚染状況 ............................... 67
(6)国内流通食品の汚染実態 ........................................... 68
(7)流通食品から検出された LM の血清型 ................................ 70
(8)輸入食品の検査 ................................................... 71
(9)輸入食品の汚染状況(国内流通品) ................................. 71
(10)海外における食品の汚染実態 ..................................... 71
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(2012.08.11 facebook ノートから転載・改編)

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