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【勝手に創刊!】「中越関係」2022年(テト旧正月)新年号♬

テト正月が明けまして、また2022年が(改めて)始まりました。そこで今年は、Twitterやnote発信の新たな工夫として、継続的に追いかけている中国とベトナムという、私個人としてとても興味深い二つの国の関係についての出来事を、定期的にまとめつつ振り返りたいと思っています。名付けて(たぶん)月刊「中越関係」、まあそのままですが(苦笑)。今回はその新年号です。

視点はベトナムからが多くなると思いますが、ベトナムメディア、世論で話題となったベトナムと中国との関係に焦点を当てて、それを定点観測することで、ゆくゆくは単なる観測を超えた文章を書いていく励みにしたいと思っております。

(ちなみにベトナムから見ているわけだから「越中」ではないか?と言われる方もいるかもしれませんが、ここでは多くの方にとっての読み易さを重視し「中越」関係と呼びたいと思います。)

1.国境地域の通関滞る、公共衛生か、国際政治か?

ここ数カ月の中越関係、特にベトナム視点で最も大きな話題は、ベトナム北部、中国南部(広西壮族自治区、雲南省)の国境、特に通関が非常に滞り、ベトナムの農産品が輸出できない状況になってしまっていることです。「コロナ対策のため」とありますが、それが行き過ぎではないかとベトナム側の批判は非常に高まっています。

売れない果物を抱えて路頭に迷う仲買業者、支払が受けられずテト正月に地元に帰ることもできないトラックドライバー。ベトナム国内では行き場を無くした農産品、特に果物を「救出“giải cứu”」しようと、ハノイなど都市の多くの場所で果物が安く売られていました。

ただ確かにこの光景は今回に限らず、コロナ流行後毎年起きている現象。さらに言えば、国境貿易管理が緩んだり厳しくなったりというので翻弄される農家、仲買人、運送業者はコロナ以前にもあったことです。ベトナム人は専ら「これはベトナムがアメリカに近づいているから、中国側が嫌がらしているんだ!」と噂しています。

そんな中、ベトナム経済の在り方として「中国市場への過度な依存は止めよう!」という声も、同じく毎年あがるのですがなかなか変わらない。先日もテレビ番組でベトナム経済学者が嘆いていたのがとても印象的です。以下のように国内市場を重視するよう求める声もありますが、構造的問題にまでメスが入るのは、なかなか簡単では無いようです。

2.チン首相、中越戦争ゆかりの地を訪れる

毎年2月は1979年に中越戦争が起きた月なので、毎年一定程度のメディア報道が、中国に遠慮する感じも仄めかしつつ出てくるベトナムメディア。これに関しては別途まとめてお伝えしようと思いますが、今月はその兆しとも思えるニュースを一つ紹介。

比較的親中と言われるチョン総書記に比べると、より「親米・親日」とも評されるファンミンチン首相のこの動き。現役首相のこういった中越戦争モニュメントへの弔問は私の知る限りでは珍しいかなあと。同じく、中国とやや距離を置いていたと評価される、一代前のグェンタンズン首相を思わせる姿勢は、少し興味深いなあと感じられます。

この出来事自体のメディア取り上げ方はかなりロープロファイル。より大きく取り上げられた(し、経済的なインパクトはより大)なのは、クアンニン省各種インフラ事業の完成、特に上記ニュースにもあるクアンニン省の高速道路網整備、そして同省中心ハロン市、経済区Vân Đồnと中国国境のMóng Cái市(中国側は広西壮族自治区・東興)のアクセスを改善する道路完成は2022年中を目指しており、地域経済へのインパクトがありそうです。

近づく中越経済インフラの傍らにも、歴史は忘れないという中越戦争犠牲者への弔問、意味深長とも感じますが真相や如何に?

3.国境地域に「南の万里の長城」建設か?

そして、上記1にも関係しますが、こんな記事が米紙ウォールストリートジャーナル紙から。中国側としては、雲南省・瑞麗がミャンマーとの国境で長くロックダウン状態にあったことからもわかる通り、確かにコロナに絡んだ国境警備は厳密。それに加え、もちろんコロナウイルスも入ってきては困るでしょうが、各種の密輸品が山岳地域を超えて入ってきている状況も制御したいという狙いはある模様です。

中越国境間では、その境を超えた労働力移動が常にある一方、人身売買も未だ続いているのが現実。元々民族的には近い関係にあった人たちの往来が不自由になるのは不便をもたらすのかもしれませんが、人身売買のような国境を超えた犯罪を防ぐ意味合いもあるかとは思います。

中国の国境管理厳重化はベトナムのみを念頭に置いたものではないようですが、対中経済に依存が深いベトナムにとっては、マクロ的にもミクロ的(国境地域経済)にも影響が大きそうです。

【スポーツ欄】男子サッカーはベトナム勝利!女子サッカーは中国躍進!

それではスポーツです♬(ニュース番組風)

こういった政治経済関係とは別に、この新春(ベトナムにとっては)明るい話題として欠かせないのはベトナム男子サッカー代表がワールドカップアジア最終予選で歴史的初勝利!しかもテト正月の2/1だったということで、昨年は苦しんだベトナムサッカーに「今年は行ける!」と明るい話題を振りまきました。チン首相も試合を観戦、得点シーンではもろ手を挙げて大喜び、試合後はピッチに降りて監督・選手を称賛していました。

(正月で特にニュースの無い)ベトナムオンラインメディアもサッカーの話題でいっぱい。中国に対しては厳しい世論、それに乗っかるベトナムメディアもここぞとばかりに報道します。負けた中国代表は新年早々の敗戦に悔しい思いをしているでしょう。

日本代表もサウジアラビアに勝ち、日越勝利揃い踏みとなった男子サッカーの新年。ですが、女子サッカーでは2月3日、中国代表がなでしこジャパンをアジアカップ準決勝で下し、男女で明暗を分けた形。2月は北京五輪もある中、どんな中越関係ニュースが出るでしょうか、次号以降にまたお伝えしていきたいです。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。