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「チュェン」とは何か?ベトナム語、その発音とスペリングの壁の高さよ…

今回は以前にツイートしたネタに関連して、最近のベトナム語学習で気が付いた衝撃現象にインスパイアされつつ、ベトナム語の発音の謎について皆様にご紹介できればと思います。

それは「野球」から始まった…

全ては、ベトナム語の文章練習をして自身のある間違いに気が付いた時に始まりました。それはそれで、10年以上ベトナム語に触れている自分にとって、かなりのショックでした…。

そうなんです。ベトナム語はイントネーションが6声あり、母音の発音も難解。似た発音の言葉も多く、それが僅かに違うと意味も変わる。中国語にも近い特徴がありますが、それにもまして「発音に厳しい」言語。野球の話題なんて、これまでベトナム人とも何度もして、恐らくこの発音を微妙に間違えてきていたのでしょうが、まあ「日本で超人気だけどベトナムではほぼやれていない、でもドラえもんでジャイアンたちがやっているから知っているスポーツ」という文脈で皆「あぁっ、bóng chàyのこと言ってるのね」とわかってくれていたんですねえ。

そして「野球」から「バレーボール」へ

ここからが本題。そうかあと思ってその他のスポーツ名を眺めていると、何と!

同じく似たような発音を誤認して覚えていたのです。ただ、野球に比べてこちらは情状酌量の余地があります(自己弁護)。というのも、このchuyểnとchuyềnはかなり似た意味を持つ単語だからです。なので、自分自身も野球のような「?」という気持ちも持たず、「当然bóng chuyểnでしょ」と間違えて覚えていたのです。

更に襲いかかる「truyền」の挑戦

この二つの区別は大変だなあ、なんて考えていたらツイッターでのリプで「truyềnという言葉も意味が近いですよ」と。むむぅ、更に手ごわい強敵が現れました。ベトナム語でググってみると、確かに難解。簡単にまとめると以下のような感じで、chuyểnとchuyềnの違いよりもchuyềnとtruyềnがごっちゃになりスペルミスを起こすことはベトナム語ネイティブでもよくあるよう。発音が酷似のこの2つの言葉は、意味の違いは更に微妙であることがわかってきました。ザックリ違いを書いてみると(ベトナム語の後に起源の漢字ではどう表すか充ててみました);

chuyển(轉/转);移る、移すという意味。

(例)chuyển biến(移り変わる)、chuyển tiền(振り込み)chuyển đổi(変換する)

chuyền(傳);「ある場所から違う場所に移す」という基本的な意味は以下truyềnとほぼ同義だが、より目に見える、具体的なものに使うことが多い。

(例)bóng chuyền(バレーボール)băng chuyền(ベルトコンベア), 

truyền(傳);上記chuyềnとほぼ同義だが、より抽象的な概念に関して「継ぐ、伝える」という意味に使う

(例)truyền máu(血を受け継ぐ) truyền dịch(転換) truyền bệnh(伝染)gia truyền(家伝)truyền thống(伝統)、bệnh truyền nhiễm(感染症)

少し理解が深まりました。ただこうやってまとめてみても「chuyển tiềnはお金が動くんだからchuyềnでも良いのでは?」など、ややモヤモヤすることも。事程左様に、なかなかやっかいなのであります。

chuyển、chuyền、truyền、チュェン…

ベトナム語の表記は発音は完全に表していて、英語のように「こういうスペリングだけど、これはアーでこれはエーと読みます」と言ったことはありません。その辺は真っ直ぐでわかりやすいのですが、ともかくその発音が難しい。

ですが逆に言えば、きちんと発音していればきちんと書けるはず、ということにもなります。自分の中でのベトナム語学習上の悩みの一つは、簡単な単語と思われるものも、書いた時に意外とスペリングを間違えるというもの。逆に言えば、これは発音が正確ではない証拠でもあるのです。

思い込んでいた間違いに気づいてから、今回はそういう学びを得たということにして前に進もうと思いますが、いやはやなかなかに壁の高い言語です、ベトナム語は。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。