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世界を席巻するベトナムのお米!ーベトナム産米生産・輸出事情

今回のテーマは突然ですがベトナムのお米の話題。お米の国ベトナム、っていうのは皆さんご存知のところかと思います。ただ昨年から今年初にかけて、ベトナムメディアでも景気の良い経済・貿易の話題として、ベトナムのお米が取り上げられることが数多くありました。それらをまとめて、実は世界を席巻しているベトナムのお米についても考えてみたいと思います。

世界第三位のコメ輸出国、ベトナム!

2023年のベトナム米輸出は絶好調でした。というのも、ウクライナ戦争に端を発した世界的な食糧需給が逼迫する中、インドが自国産米の輸出に課税するなど輸出を制限したことにより、ベトナム産コメへの需要が非常に高まったからです。そのおかげでベトナム産米の価格は国際市場で急騰。

世界一のコメ輸出国となっているインド産が減少する中、増えているのがタイ米とベトナム米。2023年のベトナム米生産量は4300万トン強(世界第5位)と2022年より2%増、そして輸出量は800万トンを超え、インド、タイに続いて三位となる見通しだと報じられています。

こういった状況から、ベトナム米にとって最大の輸出先であるフィリピン大統領も、訪越時に直々に感謝の意を述べるほど。それほどまでにベトナムのコメはその外交にも影響を与えるような、国にとっての戦略的物資となっているのです。

好景気に潤う農家、振り回される仲買人

こういった状況の中、輸出用コメを生産するメコンデルタの農家は好景気に沸きます。これまであまり陽の当たることのなかった農家が儲かることは、とてもいいことですね。でもその反面、米価急騰は生産者、中間業者、卸売りなどの関係に色々な緊張関係も生んでいるよう。

ベトナム・メコンデルタでのコメ生産においては、最初に仲買人や中間業者が籾や資材(肥料、農薬)等を現物で提供したり、或いは前払いで作付け前に現金を渡して、収穫後にコメを確実に集荷することを目指します。ただこれだけ日々米価が変動すると、農家側が「やっぱり元々の約束の価格じゃ売らない」と売り渋ったり、他に流してしまったりなど、問題も出てくるそう。

ただ農家側が一概に悪者というわけではなく「仲買人には安く買い叩かれたことも多くあった」という農家側が、儲けられる今年は儲けておきたいという心理になっている面もあるようです。

三期作から四期作へ!?

そもそも肥沃なメコンデルタでは、年に三回もお米が取れるという三期作。もちろん量が取れれば何でもいいというわけではありませんが、この恵まれた気候と環境はうらやましいばかり。この地域の収量はベトナム経済、そしてメコンデルタ経済を強く支えて来ています。

そんな中、眼下の米価急騰を受けてか更なる生産量拡大により、自国内消費と輸出を支えようということか、ベトナム国内でもっとも著名な農学者Võ Tòng Xuân教授からは「ドンタップ省など一部メコンデルタ上流域では4期作も可能だろう」との発言も。これにはかつて試してうまくいかなかったなど異論もあるようですが、それにしても野心的。

気候変動とコメ:持続可能なコメ生産の行方は?

しかし、メコンデルタ地域も、世界の例に漏れず気候変動の影響を強く受ける地域。河岸浸食、海水浸食による塩害などで、コメのみならず、これまでの農業・水産業の生産レベルが維持できるかが懸念されています。お米の大生産地であるメコンデルタは、気候変動への対応策という文脈からも注目されているんですね。

そんな中でベトナム政府は「2030年までの南部メコンデルタ地方におけるグリーン成長に伴う温室効果ガス低排出と高品質米生産に特化した耕作地100万haの持続可能な開拓計画」を公布し、これからは生産量だけではなく、その過程で出る温室効果ガスも抑えていこうという取り組みも始まっています。

より長いスパーンでもメコンデルタが世界にコメ輸出を続けていかれるかどうかは、これからのコメ生産のあり方と、世界の気候変動対応にもかかってきそうです。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。