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中国ドラマから考えた中国(1):「蝸居」と中国不動産(バブル?)←蔵出し再掲

このnoteでは主にベトナム・ハノイ在住ならではの視点で書こうとは思っておりますが、何を隠そう中国のことにも関心が高い筆者、中国語力を維持するためにも趣味である中国ドラマを今でも色々観ております。以前に書いていたブログからの移行の意味も込めまして、そこで割と気合を入れて書いていた「ドラマから中国」シリーズを再掲しつつ、当時と今の中国を比べてみるのもまた乙かな、と思っております。それでは、以下誤字脱字修正以外はエントリー当時のままで再掲し、最後に2019年の今振り返って考えたことを加えましたところ、ご笑覧下さい。(以下は2009年12月30日エントリーの文章です。)

「蝸居」と中国不動産(バブル?)←蔵出し再掲

ここのところ大変はまってみていたTVドラマシリーズ「蝸居」を見終わりました。35話にわたるお話でしたが、面白くてあっという間に見てしまいました。そして、このTVドラマは今年(2009年)の中国でも最も話題になったドラマと言って間違いないでしょう、特に今年後半はこの蝸居という言葉が何度も新聞・雑誌の紙面を飾りました。個人的にかなり「ヒットした」作品です。

タイトルの蝸はかたつむりの意、居は家という意味で、まあかたつむりの家と言うか殻と言うかを意味するのですが、これは現代中国都市社会で住宅購入に苦労し、それによる経済的負担を一身に背負う様子を比喩したものです。住宅を買うという決断の中で、生活費をどんどん切り詰めていく姿は、華々しく語られる中国の経済成長とは違った、日本人にとってはある種の「親近感」さえ感じさせられる姿です。かつては「ローンは組まない、日本人は何十年もローンを組んで心配でないのか?」と中国人に言われた頃は、恐らく90年代半ばだったんでしょうね。まだこれほど住宅購入やそれに伴う住宅ローンというものが普通でなかったです。とはいえ、ドラマの中でもまだ銀行というよりは「人から借りる」傾向が強かったですが。

ドラマの中でもしきりに住宅が騒動の焦点となり、それがゆえに翻弄される人生が、とてもリアル(に見える)な中国の都市住民の生活と共に描かれています。そして、中には官僚の汚職問題あり、地上げにより立ち退き問題ありと、都市で言われる社会問題満載のドラマで、フィクションではありつつも、何だかこういった問題に詳しくなったような気になりました。

このドラマ発では必ずしもありませんが、都市生活・住宅購入を巡っては色々な新語も。

「蟻族」:都会で4年生大学を卒業し、夢をかなえるために都会に残ったものの、良い仕事に就けず、低収入のまま家賃の安い地域にアリのように固まって住む若者
「房奴」:住宅を買うためにローンを組み、それを返済するために「奴隷」のように働く人のこと
「釘子戸」:立ち退きに最後まで徹底抗戦する家、人。やくざまがいの立ち退き要求に抵抗する場面では英雄的に扱われる場合もあれば、「プロ」の釘子戸もいて、そういう立ち退かされそうな人が雇う場合もあるとか。
「二奶」:愛人

確かに、まだ都会の白領(ホワイトカラー)でも月給数万円の中で、マンションは平米辺り10~20万円(もちろん色々ありますが)と北京でもどんどん上昇傾向。国も歯止めをかけようと、投機的活動を抑えるための政策を、12月上旬の中央経済工作会議以降出していますが、まだそれはおさまらない様子。27日に温家宝総理が新華社とのインタビューの中でやはり住宅価格の安定化について触れたことから、この価格高騰が収まるかどうかが注目されます。一方、12月27日法制晩報は日本のバブル崩壊と現在の中国の状況を比較、警鐘を鳴らしています。中国でもかつて海南島や北海でこのような住宅バブルが起きていて、未経験ではないのですが、やはりバブル絶頂の当事者というのは気付きにくいものなのでしょうか。それとも、それを知りつつ住宅価格を押し上げる(必要のある)ディベロッパーの勢いがまだ優勢ということでしょうか。特に今回のドラマではこれらディベロッパー(開発商)の動きがとてもよくわかって、そこらあたりがどういう風に地方政府に入り込んで、古い住居を立ち退かせて、どのように補償を行って、そして利益を得ているのか等等が、ちょっと大げさなところもあるのかもしれませんが非常にわかり易く描かれていました。

一般市民の間でも「どこかでバブルがはじけるのでは」と言うそこはかとない不安は広がっているようです。上海万博までと言う人もいれば、2012年という人もいてそこも予想の域を出ないのですが・・・。ドラマを通じてもなかなか学びが多いです。(再掲はここまで)

2019年の今また考えたこと

こうしてみると、不動産を巡る構造は当時と似ているものの、でもバブルは弾けるわけではなく、今も更なる都市化、土地・マンションの高騰が進んでいる北京、上海など中国大都市があることに、改めて驚きです。上記では10-20万円/㎡なんて書かれている北京のマンション価格は今では100万円近くという記事もあり、当時からですら隔世の感があります。この10年間の内に、中国がGDP規模で日本を追い越し、日本への爆買ブームがありと、色々な立ち位置の変化があった日中経済です。

その変化の一方、ドラマに出てくるメインの俳優が、意外といまでも多くのドラマで出ていて、その辺は変わらないなあとも。女性主人公・郭海藻を演じた李念は、結婚して一時期女優活動を止めていた時期もあったようですが、今年(2019年)ヒットした「都挺好」(これも観たのでいつか取り上げたい!)でも大活躍。彼女への愛のために汚職におぼれていく官僚、宋思明を演じた张嘉译はその後も無数のドラマに主演(何と1970年生まれと意外とまだ若い!)、郭海藻の元々の彼氏を演じた文章(俳優の名前です)もその後数多くの若者向けドラマで主演しています(こちらは童顔なので、またある意味年齢不詳の1984年生)。马伊琍と結婚した時にはビックリしました、最近のドラマではあまり見ないかな?

そんな蜗居、今もう一度観なおしてみると、なかなかに味わい深いものがあるかもしれません。

11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。