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ドラマから中国(2):「女人的村庄」と現代中国農村←蔵出し再掲

蔵出し再掲第2弾、今回は自身も思いのある中国農村問題に関するドラマです。もちろん、問題という問題をドラマにしたわけではないコメディですが、変わりつつある中国農村の様子を理解するのにとても勉強になったと覚えているドラマです。最後に2019年の今振り返って考えたことを加えましたところ、ご笑覧下さい。(以下は2010年1月6日エントリー当時のままの文章です。)

ドラマ「女人的村庄」

ドラマから見た中国第2弾、前回蝸居が都市を舞台にしたドラマだったのに対して、今回紹介する女人的村庄は農村が舞台です。

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現代中国の農村で多く見られる、青年男子が都市に出稼ぎに出てしまい、主に女性と子ども、高齢者のみが残っている農村(このあたりは日本の様子と似てきていますね)。そんな農村で残された女性が「女性にもできるんだ!」という気概の村の主任に引っ張られ、事業を展開していくというお話。まだまだ農村のことはわからないことも多いですが、それをちょっと理解させてくれる様々な場面が面白かったです。例えば、(こんなに立派な人がどれだけいるのかが疑問ですが)村民委員会主任が村の内外を駆け巡り投資を村の事業への投資を引っ張ってくる役割を担っていたり、出稼ぎ者と故郷の村との関係の間に立って調停役を行ったりと。また小さい村社会ならではの暖かさと苦労(すぐうわさが広がったり、すぐに仲間になったりけんかしたりと)などなども。また、中国語も大変田舎言葉が面白く、それぞれの女性のキャラも立っていて、とっても楽しめるコメディです。けど、今時こんな事業もできて人情味も厚い、各家庭のけんかや悩みの相談にも乗ってくれるような、立派な村主任はどれだけいるのでしょうか。

今回は養豚事業を持ってくるということになっていますが、ただ自分の今の仕事に翻って考えさせられるのは、農業の担い手が確かに実際に農村に留まっていないんだなあということ。今回のドラマではその事業の成功から農村に人が留まったり、戻ってきたりという風になっていますが、このように上手く農村で事業を成り立たせている事例は多くは無いでしょう。都市化を進めるのは今でも中国農村・農業政策の基幹のようですが、一方18億ムー(=約1.2億ヘクタール)の耕地は死守するとも言います。一人当たり1ヘクタールに満たない耕地を看るには人は余っているということなのでしょうが、やはり「都市で頑張ることが成功」という雰囲気は同じく蝸居でも何度も見られた光景です。

そんな中叫ばれるスローガンは「统筹城乡协调发展」(ドラマの中ではないですが)、都市と農村の調和のある統合的発展とでも訳しましょうか。この言葉は良く出てくるのですが、「良く意味がわからない」とも聞きます。これはまた別に改めてきちんと噛み砕いて書いてみたいと思います。

2019年の今また考えたこと

当時も十分変化の兆しがありましたが、現在はもうあまり「中国農村」が(少なくとも日本語メディアでは)語られなくなるほど、状況は変化しているようです。自分自身も最近中国農村の話題としてみたのは、note記事でも紹介した「幸福な監視国家・中国」にある、農村の情報化・監視社会化を進めようという「雪亮工程」。中国農村を取り巻くテーマもすっかり変わったものだと。

しかし変わっていないものもあります。上記記事にも紹介されている「18億ムーの耕地は死守する」という政策、「18亿亩红线」です。この政策は2019年になった今でも「死守する」方針が変わりません。その実現可能性を議論するメディア記事では、耕地を森林に戻す「退耕还林」制度が進んでいることにより農地は更に減ってきているとしつつも、2017年末ではまだ20億ムー以上をキープしています。

情報が伝わりにくくなっているだけで、まだそれだけ広大な面積が残る中国の農村地域。焦点が当たる都市部の「S級中国」だけでなく、農村の変化をきちんと映し出すような報道やドキュメンタリーも、まだまだどんどん出てきてほしいなあと思います。


11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。