見出し画像

【#18】異能者たちの最終決戦【名案】

東都がカラオケ店のロビーのソファで携帯をいじりながら時間を潰していると、青田がやってきた。

「話終わったんですね?」

「ああ。二人だけで話し合いたいって」

東都の横に座る青田。

「もう俺帰っていいですか?俺の役目はもうないでしょ?」

「東都君にはひとつ頼みたいことがあるんだ」

「はあ」

青田は東都の二の腕を掴んだ。

「筋トレしてる?」

「してますけど何か」

「やっぱり。引き締まった質のいい筋肉だ」

東都は青田の手を振りほどき、不審な目で見る。
青田は立ち上がり、東都を手招きし人目のない廊下に連れ出す。

「なんなんですか頼みって?」

「頼みというのはだ。君に長澤さんのボディガード兼恋人役になって欲しい」

「そ、そんな!無理に決まってるでしょ」

「もちろん。長澤さんのOKをもらうことが前提だよ」

「いや。そういう事じゃなくて。俺には不釣り合いでしょ!ボディガードもプロを雇って下さいよ」

「そうかい。僕にはうってつけだと思うんだけどね。君の顔は悪くないし、運動神経もある」

「だから。そうじゃなくて」

「恋人役というのはね、時間稼ぎなんだよ。今後キングストンは色んな形で長澤さんに接触を試みると思うんだよ。その時、近くに君みたいな男がいるとそれがやりづらくなる。それに君が彼氏になると彼らの持っている情報が出しづらくなるんだ。時間稼ぎにはどうしても必要なんだ」

「時間稼ぎって…、その間に青田さんはなにかやるんですか?」

「よく芸能界にあるやり方なんだが、こっちも向こう側のスキャンダルを握り、取引をする。お互いなかったことにしましょうってね」

「で、そのスキャンダルってのはまだ無いんでしょ?」

「…」

青田は押し黙った。

「ない。ないが絶対掴んでみせる」

強がる青田に東都は呆れる。

「俺にはちょっと荷が重すぎます。青田さんが守ってやってください」

「いや、俺には仕事しながらキングストンのスキャンダルを」

「青田さんの会社を使えばいいじゃないですか」

「?ははは、長澤さんは一般人だよ?」

「だからあなたの事務所に入れさせればいいじゃないですか?そうすれば自社のタレントを守るという名目が出来るでしょ?」

青田に電流が走った。そして思考を素早く走らせた。そこに穴は無かった。

「ちょ、ちょっと待てよ…」

なおも考えをめぐらす青田。
反対に平静な東都は言う。

「別に芸能人として活動させる必要はないし、飼い殺ししてればいいじゃないですか…」

「確かに。ははは。なるほどこれはいいぞ。東都君、君頭がいいね!」

東都は苦笑いした。
この人に長澤を任せていいか不安になった。

前話 #17 次話 #19

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?