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【#19】異能者たちの最終決戦【告白】

紗耶香は疑っていた。青田の話は確かに心当たりあるものの、証拠はなかった。私達がラブホを出入りするのを見てこしらえた作り話である可能性は十分にあると考えていた。このようなことをする動機は判然としないが、麻里をコントロールしようとする人間は幾度と無く見てきたし、その度彼女なりに守ろうとしてきた過去があった。今回はそれの手の込んだバージョンかもしれない。弱気になっていた紗耶香は元来の強い意思を取り戻しつつあった。自然と麻里と重ねた手に力が入る。そして彼女は麻里の目を覗き込んだ。怯えの色が見えた。
まだそんなに悲観する状況じゃないと伝えたかった。

「麻里。いい?あの人は証拠は持ってないし、話が出来すぎてる。バーに同じ暗証番号のスマホが落ちてたなんて信用できる?」

麻里は押し黙っている。
紗耶香は続ける。

「あの人こそ私達を騙そうとしてるんじゃない?ねえ麻里、そう思わない?」

「そう思わない」

「えっ?」

紗耶香は耳を疑った。
麻里は紗耶香に顔を向け潤んだ瞳を見せた。繋いだ手も微かに震えていた。

「ごめんね紗耶香。私分かるんだ」

か細い声。涙が頬をつたう。

「いつか言おうと思ってたんだけど、私わかるの。嘘をついてる人が…」

紗耶香は麻里は本当のことを言っているんだと思った。まだ私に話していない大事な事を明かそうと勇気を振り絞ろうとしている。彼女の震える手を両手で包んであげた。それから余計な返答せず、麻里の気持ちが整って話し出すのを待った。
麻里は紗耶香にクスッとはにかんだ照れ笑いをすると、紗耶香の片手を自分の服の中に突っこんだ。

(エッ!)

紗耶香は驚いた。

麻里はキャミソールの上に首元が広く開いた薄紫のシアーニットを着ていて、上から容易に手が入った。麻里の手に導かれた紗耶香の手は直接乳房に触れることになった。

「証明するからこのままでいて」

紗耶香は困惑した。さらに次の質問はもっと困惑させた。

「本当か嘘か紗耶香にしか分からないことを言ってみて、当てるから」

と麻里は言い、恥ずかしそうに紗耶香を見つめた。
紗耶香はその顔を見てフラッシュバックした。麻里との最初の夜を。あの時もこんな迷いと恥じらいが混ざった表情で自分を見つめ覆い被さり訳の分からないことを要求していた。そう、あの時は麻里の迫力と自分の感情の洪水に流されるままだった。今はそれがなんとなく分かりつつあった。こうしたい理由を。手の平から伝わる体温、鼓動、汗の湿り気を通して。


紗耶香は目をつぶった。そして言った。

「私はこんなド変態なことをする麻里のことが大嫌いでーす!」

麻里の乳首はムクッと起き上がり固くなった。紗耶香はその感触をその手で感じ取った。
手を抜き取ると、紗耶香は彼女の唇に軽くキスをした。紗耶香は微笑み言った。


「ありがとう言ってくれて。麻里の素敵な所を知れてすごく嬉しいよ」

麻里は顔をゆがませ抱きついて、子供の様に泣いた。


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