見出し画像

「ビビデバ/星街すいせい」MVをファン視点で深掘って解説する

テーマは「逆転」「反転」

 最初に「ビビデバ」MVを見たとき、a-haのTake On Meをすぐに思い出した。MV史に残る傑作だ。超有名MVなので、もちろんビビデバの監督もご存じだろう。

 Take On MeのMVは男性が女性を2Dの世界に連れ出し、最後には男性が現実世界に具現化するストーリー。ビビデバと同じく2Dと3Dを繰り返し行き来する。ここでファン視点だと星街すいせい氏の代表作「Stellar Stellar」の一節が浮かぶ。

そうさ 僕がなりたかったのは
待ってるシンデレラじゃないさ
迎えに行く王子様だ

作詞:星街すいせい

 ファンの方ならご存じのように、ビビデバの楽曲は明確にこの「Stellar Stellar」のイメージを踏襲している。それは当然MVにも継承されている。女性であるすいせい氏がシンデレラじゃない自分は王子様だと宣言するのは「反転」「逆転」のメタファーとして捉えられる。「Take On Me」では男性が女性を救い出そうとしていた。「Stellar Stellar」では女性側が救い出す側だ。シンデレラではガラスの靴を履くことにより女性は幸せになる。ビビデバではガラスの靴を投げ出すことによって自由を取り戻し軽快に踊りだす。

Take on me  ヒロインを男性が救う
Stellar Stellar  ヒロインを女性が救う

シンデレラ ガラスの靴を履くことで幸福になる
ビビデバ  ガラスの靴を脱ぐことで幸福になる

 お判りいただけただろうか?ビビデバのMVで2Dと3Dを繰り返し反転するのは星街すいせい氏の世界観、思想を反映させている。ただ単に、映像的な面白さだけでなく、このような深い意味を読み取ることが可能なのだ。この点においてビビデバは「Take On Me」超えたと言える。これが意図的かどうかわからないが、優れた創作物というのはえてして偶然が重なりあうものなのだ。そしてもう一つの偶然を紹介したい。

星街すいせいの活動履歴との符号

 偶然と言ってしまったが、実は自然の流れといったほうが正解なのを謝りたい。すいせい氏のこれまでの活動を振り返れば、ここにも「反転」、「逆転」がある。
 彼女は元々個人のVtuberとして活動していたが、マルチな才能があったためモデルのデザインやMVの制作もこなしており、多忙を極め個人としての活動に限界を感じていた。事務所所属を決め、彼女はホロライブを運営するカバー社のオーディションを受ける。だが、カバー社は彼女の要望を渋った。それは現在の活動名とビジュアルの継続を強く希望していたためだ。一度は落ちたが、最終的に彼女の強い押しに折れたカバー社は星街すいせい氏の加入を決め、イノナカミュージックの所属となった。これは会社としては極めて異例で、今現在も唯一の事例だ。

 念願の事務所所属になったが、不遇の環境に置かれた。新曲を希望するにも遅々と進まず、認知度を上げようといろいろ提案するが断れ続け、活動の範囲が狭まれてしまっていた。このまま手足が縛られた状態はごめんだと、イノナカからホロライブに転籍を決断する。その後は、とんとん拍子にスターへの道を歩み現在に至る。

 このように苦難を「逆転」してきた星街すいせい氏の軌跡は自然と楽曲の作詞に反映されるのは至極当然なことだった。そしてそれは次の楽曲に引き継がれ、MVにも影響を与える。

まとめ

 つまりこのビビデバという傑作は彼女の一貫した活動方針、思想がそのスタート地点になった。そこから世界観、星街すいせい像が構築されていき、楽曲のクリエイター達にもそのイメージを共有され、ビビデバというMVの制作に繋がったと私は結論する。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?