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英国のインド、中国支配とアマゾン商法の類似点...ウェブを制する者は世界を制する

以下の小文は2017年に書いたものであるが、2020年の今日、アマゾンの猛威は止まる所を知らない。2019年度の売上は2805億ドル、コロナ禍の2020年4~6月決算で前年同期の40%増という驚異的な伸びを示している。

個人的にはアマゾンという通販会社のお世話になることが多い。価格も安いしサービスも良い。書籍を注文することが多いが、注文の翌日には配達される。これではわざわざ本屋に行こうという気にならない。

しかし、身の回りを見ると、本屋、おもちゃ屋、電器屋、家具屋などいろんな小売店が姿を消している。小売店が姿を消すということは、卸し商も消えているのであろう。全国規模でみると大変な数の零細な小売店や卸し商が廃業に追い込まれているに違いない。多くの人がまともな職業を奪われて社会の底辺に追いやられているのではないか?このような事態が短期間に起こることは重要な社会問題といえよう。社会の不安定化と人心の荒廃を招来するであろう。

アマゾンに象徴される情報技術をベースとする新種のビジネスモデルの急速な躍進は価格破壊ばかりか、伝統的な社会の破壊を招来しているように思えてならない。

かって英国は産業革命で生まれた織機の発明で可能となった低価格の綿製品をインドに大量に輸出した。インドの大衆は狂喜して、英国製の綿製品を受け入れた。英国製の綿製品は当初はインド国民に大きな福音であったであろう。しかし、気が付いたら生産性の低いインドの綿製品は絶滅してしまった。その結果、インドは亡国の道を辿ることとなった。これは英国が意図的に行ったことで、実に残酷といわざるを得ない。

木綿はインド原産と言われ、インド産の綿布は英国にも輸出されていた。インド経済の重要な柱であったが、あっという間に崩壊してしまったのである。そのため大多数の綿布職人が職を失ってしまったのである。
かって中国は英国に紅茶を輸出して大きな利益を上げていた。英国は対中国貿易の赤字を埋めるために、手中にあったインド産の綿布を中国に売り込んだが、思うようには行かなかった。そこで英国は中国(清国)では、綿製品の代わりにインド産のアヘンを売り込んだ。

清朝末期の疲弊した政治の下で苦しんでいた中国民衆は容易にアヘンを受け入れてしまった。アヘンを吸引することで、過酷な現実から逃避した。しかし、アヘンは何も解決してくれない。アヘンは中毒者を破滅に追いやったばかりでなく、社会もぼろぼろにしてしまった。これも英国が意図的に仕掛けたことで、策がまんまと成功したのである。

英国のインドや中国における役割と同じことが、アマゾンの意図と拘わりなく世界的規模で起こっているのではなかろうか?アマゾンが当時の英国と同じような意図を持っているかどうかは分からない。しかし、彼らのビジネスモデルの大成功を通して、彼らは世界規模の流通支配を目論見だしている段階に達していよう。

そうすれば、必然的に世界規模の社会、文化、伝統の破壊が起きるであろう。しかも短期間にである。実に恐ろしいことと言わざるを得ない。どうしたらよいであろうか?

我々の消費行動を変えることであろう。安いからといって飛びつかない。自分の消費行動と社会とのつながりをよく考えて、社会の破壊につながるような消費行動は絶対に取らないことである。簡単ではないと思うが、やらなければ悲惨な事態が起こる可能性は極めて高い。

しかし、そもそもアマゾン商法に見られるようなことの根本原因はほかにある。アマゾン商法という個別のものが生み出したものではない。その根源は資本主義の中にある。世の中に完全というものはない。資本主義に問題があるのは当然のことである。要は資本主義に内在する過度の利益追求がもたらす社会の崩壊を如何に防ぐかということであり、資本主義の変革を実現することである。

当面の急務は資本主義のもたらした経済格差の解消である。資本主義の根幹である私有財産のあり方の変革を求めることであるから、簡単にはいかないであろうが、これがなければ資本主義自体も崩壊せざるを得ない。

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