フェミと揶揄されてもどうでもよくなった

 不満を述べればこの時代はそういうのにうるさくなっただとか苦笑いされて、声を上げずにいれば問題提起をしてこなかった女性側の問題だとされる。なんなのだ。私だって別に男女間の対立を生みたい気は毛頭ないし、周りの人を不快にさせたくない。だけれども、では、黙っていれば分かってくれるのか?

 留学中、就活中も然りだが、様々な人と出会うライフステージで毎度毎度自分が女性であるということが原因で不愉快な思いをさせられた。前者では特に日本人女性が性的に客体化されやすいこと、後者では女性の割合が半分を超えたことのない社員座談会が該当する。こうしたストレスは一番身近な人間である恋人に吐き出してきたが、彼はこの場合特権側の性別なので非難されているように感じざるをえないようだ。私が求めていたのは、彼も私の人生の一部として、私とともに怒ってくれることであったが、彼の感じ方は生まれ持った属性に帰属するらしい。他人に共感を強要することはできないし、私も私をケアしてくれる存在に甘えてはいけない。そこでこうやって独り言を書き連ねることに決めた。

 私は目下就職活動中であるが、一つの候補として国際交流基金を志望していた。日本国内外の日本語教育に携わっているため、大学の履修課程の中で知った機関であるが、そのほかにも日本文化を広める事業を行っている。
 話はさかのぼるが、私は基金に応募する以前に、日本語教師という高校時代に憧れた職業を諦めている。理由は主に以下の2つである。

1. 常勤のポストに就くまでに時間がかかり、その後の働き方も不安定。
2. 日本人女性が性的に客体化されやすい現状において、日本人女性というアイデンティティを武器に外国人と関わることへの抵抗。

 1についてはこれ以上説明の必要もないが、2は理解しがたい方もいるだろう。これは、日本が誇るモラルのかけらもない性産業が関わる、短期的解決策のない問題である。端的に言うと日本の芸能界やアニメ漫画などのメディアは、性的なモラルが他の先進国に比べると著しく低い。未成年のアイドルの水着写真集が売れるし、レイプや未成年との性交をテーマにしたAVが当然のように存在するし、少年向けアニメでもやたらと胸を強調する衣装が多い。そうした悪しき習慣が輸出された結果、割を見るのは日本人女性だった。日本人女性は従順で、性的に魅力的で、といった一種の幻想を抱く(慣用句的にこの言葉を選んだが、実際は偏見である。)海外の男性は少なくない。そしてAVの消費者ではない多くの女性はその現状に気付けない。実際にAVに憧れて来日した男性に、中学生がレイプされるという事件があったとか。
 こうした現状があるために日本語教師という選択を諦めるのは、私が精神的に弱いからだろうか?違う、自分の属性をある種食い物として見ている人間を避けるのは当然の選択だ。

 例えば車や家電には、製造物責任法というものが適用される。ある製品の欠陥によって消費者が被害を受けたら、企業はしかるべき補償をし、再発防止に努めなければならない。ではこうした有象無象の慣習から生み出された偏見によって私たちが被害を被った場合、誰が補償してくれるのだろう?性犯罪者の犯行動機として、「AVで見て試してみたくなった」というセリフがあるらしい。性産業はそれでも表現の自由を盾に逃げ切るのだろうか?

 国際交流基金ならばこうした問題提起をできるプロジェクトにも携われるだろうかと多少期待しており、一次面接での質問で現状としてこの問題にアプローチしているか、またこうした考えを持つ人はいるかと尋ねてみたが、望み薄だった。むしろこうした特定の考えに基づいた発信は、多面的な文化の受容を阻害することになり難しい、という回答だった。文化事業がもたらす価値というのは簡単には図れるものではなく、相互理解のきっかけを生み出すこともこうした偏見の解消につながるとは言えるが……日和見主義である。

 月曜になったら選考辞退のメールを入れようと思う。私も奨学金を返しながら飯を食わなければならないし、給与も高くなく目的意識も強く持てない場所では働いていけない。入社さえすれば自分で企画できるという考えは甘いだろう。さようなら、私の煙たいフェミニズム的理想。
 他の就職先候補はいくつかあるが、既に最終面接合格を言い渡されたその会社の役員名簿には、女の名前が一つもない。ガラスの天井というやつか。

 私の拙文で、どれだけこの現状の気持ち悪さが伝わったかは分からないし、この胸糞わるい文章をどれほどの人が最後まで読んでくれただろうか。もし好きだったらURLコピペしてどうぞ拡散してほしい。一緒に怒ってくれる人がいると思うと少しだけ救われるので。

 

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