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酔っ払いの不思議体験


霊やオカルトを信じない人…その代表に還暦間近のお酒好きな男性Mさんがいる。

Mさんは飲みに出ると必ず梯子酒。
皆んなが帰っても自分はピクリとも帰ろうとせず、最後は眠くなっても粘り酒で最終的に何処ででも寝る。

兵庫県民のMさんが飲んだ帰り電車なぞ乗ろうものなら、神戸三宮から東は滋賀の草津まで…西は終点播州赤穂まで寝過ごしてしまう。

繁華街から数駅の自宅まで帰るのに、府県をまたぎ200キロ近く移動して帰るおじさんだ。

今回は、そんな霊やオカルトを信じない酔っ払いに聞いた、霊だったのか?酔った幻覚だったのか?結局何だったのか解らなかった不思議なお話を…。

それはMさんが30代の頃のお話。

いつものように散々飲んだ締めに、馴染みのBARへ顔を出した夜のこと。

そのBARはカウンターが五、六席、狭いテーブル席が二つほどの小さなお店で、Mさんより少し年上のマスターが一人で切り盛りしていた。

Mさんがそこに通う理由はマスターとは気が合うし、何よりいつもお客さんがいないガラ空きの店…というところが気に入っていたから。

その夜もお客さんはMさんだけで、カウンター席のド真ん中に座り、マスターといつものようにバカ話を始めた。

それから間も無くのこと…。

ふとMさんは自分の左に人の気配がすることに気が付き、パッ!とそちらに目を向けると、スーツを着た男性が一人、Mさんの横を一つ開けた席に座っていた。

Mさんが不思議に思い
『アレ?いつの間に客来たん?』と小声でマスターに尋ねると…

マスター『は?何言うとん?誰もおらんわ…寝ぼけとるんちゃうか?』
と、呆れたお返事。

Mさん『は?おるやろ!』
と、再び左に目を向けるが誰もいない…。

マスター『Mちゃん飲み過ぎや!wwwww』
と、大笑い。

Mさんは納得いかなかったが、やっぱ飲み過ぎ?と思いながら、さっき迄のバカ話に意識を戻していった。

しかし…


またしばらくすると同じく左に人の気配がする。

気になったMさんはまたパッ!と見ると、さっきと同じ男性が同じ位置に座っている!

Mさんは『やっぱおるやんけ‼️』
と、ホレ見たことか!とマスターに言うと…


マスター『誰もおらんて❗️変なこと言わんといてや‼️俺一人の時、怖いやろが💢』
と、キレ気味のお返事。

『え?マスター、マジで見えてないの⁉︎⁉︎』
と、Mさんは漫画のように目をゴシゴシしてから、もう一度左に目を向けた。

しかし⋯
そこには誰もいなかった…。




これが霊もオカルトも信じないMさんの【初めての不思議体験】であった。


私はMさんからこの話を聞いた時『その霊のような人って、どんな風に見えたの?』と質問してみた。

Mさんの答えは
『霧の向こうにいる感じの見え方で顔は見えなかった。でも確かに気配はあんねん!』とのこと。

『寒気とかゾッとしたりした?』と続けて聞くと『そうゆう怖い感じは全くしなかってん!』とのこと。



私はこの話はMさんの幻覚では無いような気がする。

何故かというと、Mさんの際限ない飲みっぷりは知っているし、酔って記憶を無くして電車で寝過ごし、何処までも行くような人が、30代の頃の話を還暦前の今の今迄ちゃんと覚えているからだ。

しかもこの話を初めて聞いたのは5年以上前。
今回noteのネタ切れでこの話を思い出し、また一から話を聞いた時も、初めて聞いた時と同じように活き活きと語ってくれた。

私はそのお店に興味が湧いてきて行ってみたくなったが、マスターはお亡くなりになって、今はもうたたんで無いとのこと。

でもそこのビルは残っているだろうと思い…

にじこ『場所は何処だったんですか?』

Mさん
『覚えてないw』




この酔っ払いめが…。

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