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第3話:EUの品目別非特恵原産地規則《化学品分野(HS第28類~第40類)》

2. 化学品分野(第28類〜第40類)の品目別非特恵原産地規則

 (2021年3月、JASTPRO令和2年度 調査研究報告書『非特恵原産地規則~米国、EU及び我が国における主要製品分野に適用される非特恵原産地規則の概要と比較~』第3編第2章として公開。2022年1月19日、note に再掲。)

 欧州関税法典第60条は委員会委任規則(EU)第2015/2446号第32条、第33条及び附属書22-01により実施されます。附属書22-01には第33条で言及される「類別レジデュアル・ルール」も規定されています。これらが法的拘束力のある規則を構成します。

 一方、附属書22-01で言及されない品目に係る原産地規則は、WTO非特恵原産地規則の調和作業におけるEU提案が、法的な拘束力のない規則としてそのまま適用されます。法的な拘束力がないといっても、実際にその適用結果が覆るのはEUの裁判所によって欧州関税法典第60条(原産地の取得)の規定の趣旨に反する旨の判決が出て初めて可能となるので、輸出入者及び各国税関・欧州委員会にとっては「目安」として活用されます。

 留意すべき点としては、拘束力のある品目別規則がHS2012年版に準拠しているのに対して、拘束力のない品目別規則はHS2017年版に調整されていることです。

(1) 法的拘束力のある規則

 第28類から第40類までに分類される化学品等に関し、附属書22-01に規定される拘束力のある品目別規則は、第34.01項、第34.05項及び第35.02項のそれぞれの一部、並びに第34類及び第35類の類別レジデュアル・ルールのみとなります。したがって、化学品分野におけるルールの大半は、法的拘束力のないWTO調和非特恵原産地規則のEU案が適用されます。

第34類: せっけん、有機界面活性剤、洗剤、調製潤滑剤、人造ろう、調製ろう、磨き剤、ろうそくその他これに類する物品、モデリングペースト、歯科用ワックス及びプラスターをもととした歯科用の調製品

第34類のレジデュアル・ルール (拘束力のある規則)

 プライマリー・ルールの適用によって原産国が決定できない場合、当該物品の原産国は、使用された材料のうち重量において最大部分を占める材料の原産国とする。

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第35類: たんぱく系物質、変性でん粉、膠(こう)着剤及び酵素

第35類のレジデュアル・ルール

 プライマリー・ルールの適用によって原産国が決定できない場合、当該物品の原産国は、使用された材料のうち重量において最大部分を占める材料の原産国とする。

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